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被保護編 339年
339年8月6-1
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とうとうオーサーが、レイと周辺国とソファリスを歴訪する。
前々から行きたがっていたがレイが許さず、オーサーは引退したら一人で行こうと思っていたはずだ。
オーサーはヘラート村への同情を確立したい。同情という名目からのランリスへの非難をまとめ、ソファリスへの牽制にする。
ツァイリスからの製紙技術者の回収も、直接行く事で穏便に済ませるつもりだろう。
レイも、行く事には同意した。もちろん自分が同行する条件で。
ザイリス、ベリス、ツァイリス、ソファリス、ランリスを回る。
問題は、オーサーの地位だ。
「私の妃に」
「事務官とかでいいんじゃない。適当なのを作って権限の範囲を決めれば、すでに実態はあるから議会でも認めてくれるでしょ」
「それでは駄目だ」
「なぜ」
「求婚されたら断れない」
「・・・私が? 求婚される?」
「そうだ。貴族ではなく王族に求婚されれば、今のあなたでは断るのが難しい。だから私の妃である必要がある」
「レイサスの妃を探すためでもあるのに、私がなれるわけがない」
「私は他の女とは結婚しないといっている」
「しなくてはいけないと言っている。大体今から結婚なんて間に合わない」
「では婚約者だ」
睨み合う二人には溜息が出る。
「オーサーもいい加減責任を負ったらどうですか」
オーサーが私を見た。この二人はいったいどれくらい今の不毛な会話を繰り返しているのか。
「あなたには地位も身分もない。実に身軽な立場で動いていますが、それはつまり、何か起こっても責任を取れないという事です。あなたは責任が嫌いですが、もうそれが許される立場ではないでしょう」
オーサーはわかっている。それを突けばいいものを。
「・・・けれどだからといって婚約者は行きすぎだと思う」
「あなたはレイと関係がありますね」
オーサーの顔が強張る。本当に、こういう話題は嫌がる。
「その責任は?」
卑怯な言い方ではある。レイが押し倒しただろうに、襲われた人間の責任か。
「・・・」
「周囲には恋人と認知されています。婚約者が相応しいですね」
「・・・コウジュ様がいる」
「公主を選んでもそれほど利益はありませんよ。ヘラート村を見ても、ソファリスと関係を作ることがいいかどうかわかりません。あなたの方が、余計な係累が無く国民の支持もある。利益が大きい」
「・・・」
オーサーがヌゼラス候やエランを見る。逃げ道を探している。
「・・・わかった。よろしくお願いします」
レイに頭を下げた。
レイは彼女を抱き締める。嬉しいだろう。ようやく承諾させた。
そのまま抱えて連れて行こうとするが、オーサーが止めた。
前々から行きたがっていたがレイが許さず、オーサーは引退したら一人で行こうと思っていたはずだ。
オーサーはヘラート村への同情を確立したい。同情という名目からのランリスへの非難をまとめ、ソファリスへの牽制にする。
ツァイリスからの製紙技術者の回収も、直接行く事で穏便に済ませるつもりだろう。
レイも、行く事には同意した。もちろん自分が同行する条件で。
ザイリス、ベリス、ツァイリス、ソファリス、ランリスを回る。
問題は、オーサーの地位だ。
「私の妃に」
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「それでは駄目だ」
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「そうだ。貴族ではなく王族に求婚されれば、今のあなたでは断るのが難しい。だから私の妃である必要がある」
「レイサスの妃を探すためでもあるのに、私がなれるわけがない」
「私は他の女とは結婚しないといっている」
「しなくてはいけないと言っている。大体今から結婚なんて間に合わない」
「では婚約者だ」
睨み合う二人には溜息が出る。
「オーサーもいい加減責任を負ったらどうですか」
オーサーが私を見た。この二人はいったいどれくらい今の不毛な会話を繰り返しているのか。
「あなたには地位も身分もない。実に身軽な立場で動いていますが、それはつまり、何か起こっても責任を取れないという事です。あなたは責任が嫌いですが、もうそれが許される立場ではないでしょう」
オーサーはわかっている。それを突けばいいものを。
「・・・けれどだからといって婚約者は行きすぎだと思う」
「あなたはレイと関係がありますね」
オーサーの顔が強張る。本当に、こういう話題は嫌がる。
「その責任は?」
卑怯な言い方ではある。レイが押し倒しただろうに、襲われた人間の責任か。
「・・・」
「周囲には恋人と認知されています。婚約者が相応しいですね」
「・・・コウジュ様がいる」
「公主を選んでもそれほど利益はありませんよ。ヘラート村を見ても、ソファリスと関係を作ることがいいかどうかわかりません。あなたの方が、余計な係累が無く国民の支持もある。利益が大きい」
「・・・」
オーサーがヌゼラス候やエランを見る。逃げ道を探している。
「・・・わかった。よろしくお願いします」
レイに頭を下げた。
レイは彼女を抱き締める。嬉しいだろう。ようやく承諾させた。
そのまま抱えて連れて行こうとするが、オーサーが止めた。
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