終生飼育は原則ですから

乃浦

文字の大きさ
上 下
294 / 365
被保護編 339年

339年8月6-1

しおりを挟む
 とうとうオーサーが、レイと周辺国とソファリスを歴訪する。
 前々から行きたがっていたがレイが許さず、オーサーは引退したら一人で行こうと思っていたはずだ。

 オーサーはヘラート村への同情を確立したい。同情という名目からのランリスへの非難をまとめ、ソファリスへの牽制にする。
 ツァイリスからの製紙技術者の回収も、直接行く事で穏便に済ませるつもりだろう。

 レイも、行く事には同意した。もちろん自分が同行する条件で。
 ザイリス、ベリス、ツァイリス、ソファリス、ランリスを回る。
 問題は、オーサーの地位だ。

「私の妃に」
「事務官とかでいいんじゃない。適当なのを作って権限の範囲を決めれば、すでに実態はあるから議会でも認めてくれるでしょ」
「それでは駄目だ」
「なぜ」
「求婚されたら断れない」
「・・・私が? 求婚される?」
「そうだ。貴族ではなく王族に求婚されれば、今のあなたでは断るのが難しい。だから私の妃である必要がある」
「レイサスの妃を探すためでもあるのに、私がなれるわけがない」
「私は他の女とは結婚しないといっている」
「しなくてはいけないと言っている。大体今から結婚なんて間に合わない」
「では婚約者だ」

 睨み合う二人には溜息が出る。
「オーサーもいい加減責任を負ったらどうですか」
 オーサーが私を見た。この二人はいったいどれくらい今の不毛な会話を繰り返しているのか。

「あなたには地位も身分もない。実に身軽な立場で動いていますが、それはつまり、何か起こっても責任を取れないという事です。あなたは責任が嫌いですが、もうそれが許される立場ではないでしょう」
 オーサーはわかっている。それを突けばいいものを。

「・・・けれどだからといって婚約者は行きすぎだと思う」
「あなたはレイと関係がありますね」
 オーサーの顔が強張る。本当に、こういう話題は嫌がる。
「その責任は?」
 卑怯な言い方ではある。レイが押し倒しただろうに、襲われた人間の責任か。

「・・・」
「周囲には恋人と認知されています。婚約者が相応しいですね」
「・・・コウジュ様がいる」
「公主を選んでもそれほど利益はありませんよ。ヘラート村を見ても、ソファリスと関係を作ることがいいかどうかわかりません。あなたの方が、余計な係累が無く国民の支持もある。利益が大きい」
「・・・」
 オーサーがヌゼラス候やエランを見る。逃げ道を探している。

「・・・わかった。よろしくお願いします」
 レイに頭を下げた。
 レイは彼女を抱き締める。嬉しいだろう。ようやく承諾させた。
 そのまま抱えて連れて行こうとするが、オーサーが止めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います

きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

旦那様は私に隠れて他の人と子供を育てていました

榎夜
恋愛
旦那様が怪しいんです。 私と旦那様は結婚して4年目になります。 可愛い2人の子供にも恵まれて、幸せな日々送っていました。 でも旦那様は.........

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

処理中です...