終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 339年

339年5月2-1

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 なんなんだあの女は。
 褒めたのに褒めていないとコウジュには怒られ、あの女の従者にさせられた。

 女か?
 いつも男の服を着て、行くところは軍と学校と商人と農場だ。
 普通の女なら小走りになる速さで歩くから、ついていくのも大変だ。

 最初は本当に後をついていくだけだった。
 だんだん慣れて、あの女が何をしているか見る余裕ができた。
 オーサーはただ聞いてそれを誰かに伝えているだけだ。

 ただ正しい相手から聞いて正しい相手に正しく伝えている。
 特に何かを作っているわけではなく、指示して作らせているわけでもなく、作りやすい環境を整えているだけだ。

 コウジュはそれはソウシュウ陛下に似ているという。
 イユリスではオーサーと相談した王太子が場を作り、オーサーがそこに集う人間を繋いでいる。
 ソウシュウ陛下は命令して人をかき集め作らせているように見えるが、コウジュは、同じ要で少しやり方が違うだけだ。叔兄とオーサーは分かり合えると言う。

 二人は違うと思う。ソウシュウ陛下は恐ろしい。何か不始末や不手際があれば捨てられる。もともとオレは眼中にない。
 オーサーはよく見ている。優しくはないが見ている。そして聞けば教えてくれるし、やったことがよければ気づく。もっとよければ褒めるのだろう。褒められたことはない。

 時々、人とずいぶん愛想よく話してそれが帰った後、真顔で一言罵っていることがある。きつい。
 愛想がよく丁寧に応対する相手ほど嫌っているから関わらないようにとファリオン王子が言った。

 反対にぞんざいな話し方をする相手の方が親しい。そして見放している相手とはそもそも話さない。
 それでいくと、王太子のことを見放している。
 王子に、しかも王太子にあれだけ愛されているのに、なんなんだあの女は。

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