終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 339年

339年3月1-2

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 春のパーティは結構な地獄だった。
 フレディア様がしきりと結婚しろと遠回しに言ってくるのを回避し、レイサスが必要以上に寄るのを避け、周囲の人の視線を気づかない体でやり過ごす。疲れた。特にレイサスが。

 パーティにはツァイリスの国王の従兄弟という人も来ていた。この国に人が集まるようになってきた。
 それはうれしいけど、私の肩書に困る。
 側近でいいんだけど、余計な情報も他の人から付け加えられるだろう。
 こうなる前に会っておいた方が良かったのか、気まずいから今会えてよかったのか。

 ツァイリスの製紙工場は、生産自体は順調。
 紙が売れるから、イユリスとの契約を見直したいらしい。

 はっ、言っとくけどね、土地を借りているだけみたいなもんなんだからね。
 それをザイリスも含めて豊かになればいいと、かなり甘い条件にしたんだからね。
「工場がうまく操業できていることを、ファリクス陛下、レイサス殿下、みなさまお喜びです」
 ずうずうしい発言は聞き流さないからね。
「安心いただいてよろしいですよ。さらに生産を拡大できると思います」
 それはイユリスのおかげだけどね。

「こちらから派遣している技術者は、皆さんお元気でしょうか」
「ああ。すっかり慣れて、ツァイリス人のようですよ」
「それは喜んでいいのかどうか・・・家族を残して派遣した者もおります。一度帰還させて意向を確かめた方がいいかもしれませんね」
 技術者を引き上げたら、今はまだ工場が回らないでしょうね。

「あ、いやそれでしたら、家族をツァイリスに送っていただくのはどうですか? 家族も職場を見たいでしょう」
「こちらでは学校に通っている子供もいますし・・・子どもの成育環境に気を遣う親は多いものです」
 そこに対抗できると思っているのか、ねえ?
「そういったことを話し合うためにも、一度戻ってもらった方がいいかと思うのですが。ミリス様がおっしゃるように骨を埋めたいほど馴染んでいるのならいっそう」

 私はこういうとき、ものすごくいい笑顔を作っているつもりだけど、傍から見たら人を食いそうな顔に見えるんだろうな。
 これで契約のことはうだうだ言わなくなるだろう。しばらくは。ツァイリスが製紙技術を習得する前に、もっと工場を建てないといけない。

 パーティが終わった途端、この重い私を抱き上げて早歩きする体力がレイサスにあるのにはぞっとしたね。
 私は疲れきっているのに、どうしてレイサスはあんなに元気なのか。人の目を気にしていないからか。鍛え方? レイサスより私の方が運動場に通っているんだけど。

 寝たいのに寝かせてくれなかった。ドレスを脱がせるのが夢だったって、脱がせてくれないのは困る。今回のは作ってもらったドレスで、自作よりお金がかかっているのに、汚したり破いたりする可能性は排除したいんだって。

 もう、もうもうもう、本当にやめたい。ドレスを見ると思い出す。余計な思い出を作らされた。いや自分で作り出したのか。どうしようもないな。
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