終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年3月1-1

　レイサスは土曜日は私をひとりにしてくれる。王太子宮から出ない限りひとりでいられる。
　それは本当にありがたい。できればもっとひとりにしてくれるといいんだけどね。
　翌日が休みであればいいだろうと思うのか、金曜に約束を反故にするのはやめてほしい。
　結局土曜日も昼くらいまで寝ていることが多い。

　生理になると二つの理由で安心する。
　妊娠していないなというのと、一週間レイサスから開放されるのと。
　本当に、私は愛人でいい。誰か恋人を作ってほしい。

　レイサスの表情を見ていると幸せだと思う。私でこんなに喜べるなら、もっと喜ばせたいとも思う。

　けれどレイサスには、身分、容姿、正確、年齢、すべてにおいて私よりも相応しい人がいる。つまり私はすべて相応しくない。
　それなのに恋人ですって顔で隣にいられるほど顔の皮は厚くない。
　しかしレイサスのこの表情を、他の人でかと思うとやっぱり嫌な気分になるのは、私も女だからなのか。

　は！　何か移してないよね。
　性行為は体液の交換により感染症その他を移すためにあるって言う人がいるくらい、リスクの高い行動だ。そういう感染症によって人間は進化したって。
　私は幸か不幸か未経験だったから大丈夫だと思うけど、大丈夫なんだろうか。

　梅毒が未だない世界は平和だったに違いないって何かで読んだな。梅毒の感染拡大は、ヨーロッパでは社会制度が変わるほどの影響があった。
　私が何かを広げたらどうしよう。レイサスが他の人を抱いたら広がるかもしれない？　結婚しろって気軽に言えない。やっぱり私がいいって言うべきじゃなかったんだ。

　いや大丈夫だって。きっと移してない。だけどそれにしては性格変わるほど執着してる。
　トキソプラズマに感染すると猫好きになるらしいけど、まさか・・・、いやないない。
　もう、なんでこんなことで悩まなくちゃいけないのか。
　それは自分のせいです。