終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年2月1

　いいと言ったのは間違いだった。
　私はもっと簡単に考えていたんだよね。何回かすれば、特筆すべき点はないと飽きる。
　そうすれば私もいい経験だったと今までの生活に戻れて、しかもレイサスとの関係は穏やかなものになるか、もしくは冷える。

　冷えなかった。あの人は気が長かった。そして趣味がおかしい。
　そして何より盲点が、なんでみんな知ってるの？

　一晩シルヴィオ邸で何かあっても、それが外に漏れるなんてありえない。あっちゃいけない。情報管理がどうかしてる。
　ただ一晩じゃなかったからなぁ・・・三日間、フィゾの世話も朝駆けもできなかった。どうかしてる。
　生理で出勤しないことはあったけど、レイサスも休んでたからね・・・皆さんそれしか思いつかないのか？　いや事実なんだけど。

　何よりレイサスがおかしい。なんで朝から晩までくっついている必要があるのか。
　私にとって対人の適正距離は八十センチ、狭くても五十センチ。ゼロセンチは距離ではない。質量だ。
　投げ飛ばしたくなるね。腰に回す手を取って袖釣り込み腰とか。投げても離さないで私も倒れそうだ。それはまずい。

　シルヴィオに急いで避妊薬を用意してもらったけど、あまり必要だとは思っていなかった。事後でも気休めに飲もうと急いでもらったけど、その前に終わるだろうと。
　あれから一ヵ月、生理が来たときは安心した。一回ではまずないと思うけど、一回じゃなかった。というか、わからない。あの人はおかしい。

　もっとおかしいのは自分だと、重々自覚はしている。嫌なら嫌と言えばいいし、いいなら自分から縋ればいい。なんなんだ、この嫌だけど嫌じゃない嫌らしい人間は。
　結局いいなら最初から歓迎すればいい。
　けど、そうするといつ眠れるか怖い。

　回数がおかしい。すごく疲れる。そしてものすごく寝不足になる。
　料理は頭をとても使うけど、これは全身をとても使う。寝てるだけの私が筋肉痛になりそうなのに、動いているレイサスは、しかもほぼ動き続けるレイサスは、なんであんなに元気なんだ。
　年？　性別？　男って体力があるな。無駄に体力がある。

　もっと若かったら違ったのかな。
　レイサスもだけど、相応しいときに学ぶべきことを学ばないと後が辛い。
　レイサスはきっと初恋もまだだった。育ちが育ちだから。かわいそうに。
　早く卒業してほしい。私が慣れる前に早く。こんなことは知らなくてもよかった。ひとりで生きていくはずだったのに。

　男ってあったかいんだね。まだ二月なのにどうして寒くないのか不思議だけど、常に熱い。羨ましい。私は常に寒い。
　熱源としてはいいけど、ずいぶんカロリーと時間を使う効率の悪い熱源だ。

　だけど眠い素振りはできない。露骨過ぎる。
　いつものように振舞っているつもりだけど、レイサスが台無しにする。
　レイサスと私の体には腹が立つ。