193 / 365
被保護編 338年
338年8月2-4
しおりを挟む
オーサーの質問が出尽くす頃には、当初の会話を見失い、乳母の存在が女性の社会参加を促進するのか妨害するのかといった話になっているのはなぜなんだ。
「乳母がいれば貴族女性は貴族の仕事、いわゆる社交に戻れるわけですが、それは夫のいる女性ですよね」
「そうね・・・夫が妊娠中に亡くなった女性は、乳母をつけたとしても社交には出ないものね」
「そして夫のいない女性は子を産まない。表立っては。乳母は平民から供給される貴族女性の保障の一つ、いえ結婚の特典か。しかし平民の、働く女性に乳母は雇えない。育児休暇はどうしても必要ですね」
「そうね。それはオーサーが先例を作ればいいんじゃないかしら」
会話の流れに困っていた王妃の顔が輝いた。
「オーサーが育児休暇を取れば、他の者も続くわ」
「妊娠する振りはできても、出産する振りはできませんから。誰か他の方を応援しますね」
あっさり流す。ああ本当に他人事なんだな。
王妃もそう感じたらしい。一瞬、呆れたというか疲れたようだが、すぐに気を取り直して言った。
「本当に出産すればよろしいのよ。そのために、あなたも言ったように、一刻も早い結婚を、婚約の報告を待っています」
「可能な限り急いで、レイサス様の婚約者候補を決めたいと思います。私どもが皆で選んだ方でしたら、まさかフレディア様が認めてくださらないことはないと思っています」
「どうかしら。ヌゼラス候以外にあなたたちは誰も結婚されていないでしょう。わたくしの経験から、認められないかもしれないわ」
二人が鍔迫り合いをしている横で、兄上が重い声で言った。
「婚約者を決めるのは私で、例え誰が反対しようと関係無い」
本人が反対しても、関係無いで通せるんだろうか。
「乳母がいれば貴族女性は貴族の仕事、いわゆる社交に戻れるわけですが、それは夫のいる女性ですよね」
「そうね・・・夫が妊娠中に亡くなった女性は、乳母をつけたとしても社交には出ないものね」
「そして夫のいない女性は子を産まない。表立っては。乳母は平民から供給される貴族女性の保障の一つ、いえ結婚の特典か。しかし平民の、働く女性に乳母は雇えない。育児休暇はどうしても必要ですね」
「そうね。それはオーサーが先例を作ればいいんじゃないかしら」
会話の流れに困っていた王妃の顔が輝いた。
「オーサーが育児休暇を取れば、他の者も続くわ」
「妊娠する振りはできても、出産する振りはできませんから。誰か他の方を応援しますね」
あっさり流す。ああ本当に他人事なんだな。
王妃もそう感じたらしい。一瞬、呆れたというか疲れたようだが、すぐに気を取り直して言った。
「本当に出産すればよろしいのよ。そのために、あなたも言ったように、一刻も早い結婚を、婚約の報告を待っています」
「可能な限り急いで、レイサス様の婚約者候補を決めたいと思います。私どもが皆で選んだ方でしたら、まさかフレディア様が認めてくださらないことはないと思っています」
「どうかしら。ヌゼラス候以外にあなたたちは誰も結婚されていないでしょう。わたくしの経験から、認められないかもしれないわ」
二人が鍔迫り合いをしている横で、兄上が重い声で言った。
「婚約者を決めるのは私で、例え誰が反対しようと関係無い」
本人が反対しても、関係無いで通せるんだろうか。
7
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います
きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
神崎 ルナ
恋愛
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
旦那様は私に隠れて他の人と子供を育てていました
榎夜
恋愛
旦那様が怪しいんです。
私と旦那様は結婚して4年目になります。
可愛い2人の子供にも恵まれて、幸せな日々送っていました。
でも旦那様は.........
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる