終生飼育は原則ですから

被保護編 338年

338年4月2-1

　会いたかった。お前たちに会えなくて辛かったよ。
　鉱山に行っている間、あの子たちはどうしているかなと思ってた。猫中毒だ。猫にさわりたくてね。
　鉱山でも猫はいたけど、痩せている猫が多かった。野良猫の生は苛酷だ。TNRをしたいけど、抗生物質がないこの世界だと殺すようなものかもしれない。そして猫がいないとねずみが増える。

　うちの二匹は不妊手術をしました。
　辛い。手術から帰った晩は心配で眠れなかった。
　幸い毎日の消毒がよかったのか、猫だから自分でなめたおかげなのか、化膿せずにふさがった。もうすぐ抜糸です。

　鉱山はやっぱり苛酷な労働環境だった。
　ソサイゾが福利厚生を考えているわけないと思った。
　環境の浄化も金がかかるし、この世で間違いないのは税金だけって言葉があったな。税金もだけど、何かすると必ずお金がかかる。

　けれど、利益を得ようとしなければ今より石炭の値段は下がる。ソサイゾは特に暴利だった。
　石炭が安くなれば蒸気機関が発達する。
　蒸気機関が発達したら産業革命かな。

　人類の歴史は予想できる。進化主義的考えかもしれない。
　けれどアインシュタインがいなくても誰かが相対性理論を見つけ、原爆を作った。遅くはなったかもしれないけどそうなったという説を私は真実だと思う。
　蒸気機関を考えている人はいるし、公害は起こり、戦争も必ず起こるだろう。
　負のイベントをできるだけ避け、起こるなら規模を小さくするのが、私の役目だと思う。

　ソサイゾ領は合議制の先駆地区にしてみたらいいと思う。今は各地区の話を聞いて商会連合が合議制で決めている。そこから変えて、各地区の代表者が直接会議に参加するように。
　名前を変えた方がいいと思うんだよね。ソサイゾの血縁を置くとしても統治者としてではないから、領地の名前を変えた方が勘違いされなくていい。連合が決めればいいか。