終生飼育は原則ですから

被保護編 338年

338年4月1-3

　先々を語るともやは託宣を受けた祀主か、託宣を授ける神のようだ。黒い髪と瞳を持ち闇の中で未来を語る神。私の神。
「というのが、日本しか知らない私の案ですが、他の国からはどう受け取られると思う？」
「奇異な目で見られるだろう。警戒もされる。貴族が国を動かしているからな」
「そうだよね。だからこれには時間がかかる。教育を受けた子が大人になるのが約十年後。庶民院を作るのはそれくらいの時期だと思う」
　十年。ともやと結婚をしているはずだ。

「選挙権をどこまで与えるかで変わるけど、そこから少しずつ、他国に受け入れられるように平民に権限を譲渡していくことを考えると、三十年はかけないと。五十年以上かけたほうがいいかもしれない。そのために」
　ともやが私をまっすぐに見た。私の顔は影になっているだろうが、私を見ている。
「レイサスの後継者が必要です。子供を作ってもらわないと間に合わない」

　わかっている。だが勘違いしてもいいか？　子供なら喜んで作る。あなたと。
「早く結婚して。最終候補者は少ないでしょ。よっぽど持参金がなければ、ツァイリスとソファリスの姫ぐらいしか候補にならない。あとはクリス」
　そしてあなただ。このまま組み敷けばわかるのか。
　あなたの子が欲しい。いやあなたが欲しい。後継者はファリオンの子でいい。
「ソファリスの動きを待ってるの？」
「・・・そうだ」

　彼女を抱き締めた。今日はもう眠ってくれ。そうしないと口を塞ぐ。そしてあなたが求めていた子を作る。自分が相手だとは全く考えていないあなたと。