終生飼育は原則ですから

被保護編 338年

338年3月5-1

　いやぁ、うちの姫さんはすごい人だ。
　まずあの王子様を振り続けるってところがすごいね。
　あの色男の、金も地位も能力もある、女に苦労したことがなさそうな王子様にベタ惚れされているのに、全部流して未練もないっていうのがいい。
　あの完璧な王子様は少しは苦労してみればいいんだ。

　それから仕事ができる。
　あっち行って話をまとめ、こっち行って問題点を改善し、また呼び出されて口を利いてって、姫さんがいないとこの国動かないんじゃねえか。

　疲れてるだろうに軍に行って兵士の訓練の相手して、戦術？　そんなもんまで添削するのか。
　そればかりか大学に行って、話し出したら止まらない学者バカの話を最後まで聞いてさらに質問してって、姫さんはある意味バカだな。

　家事もできる。
　王妃から貰ったっていうドレスを解いて縫いだしたのは、まあ女ならやるか。
　クリスにあげるんだと作っているショールの刺繍は売り物みたいだった。
　ロゾイゾの邸にいたときは料理までし始めたのにはびっくりした。俺も見たことのない料理だ。

　指の練習だと時々ヴァイオリンは弾くしピアノは弾くし、何者なんだ？
　殺さなくて本当によかった。もったいねえ。

　何より弱いものに優しい。
　馬は自分でできるだけ世話をするし、猫には激甘だ。
　それはともかく弱い立場の人間に優しい。俺もその一人だったんだろうな。

　姫より本当は王様と呼びたいね。何でもできて優しくて、どんなときでも諦めない。理想の王様だ。
　だけど王様より弱いから守る必要がある。守らせてほしいもんだ。