終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 338年

338年2月1-3

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 王妃は少し緊張していた。
「レイサス、来てくださってありがとう」
 手ずから茶を入れて勧める。侍女も少ないな。一人だけだ。

「今日は聞いてほしいことがあって。こんなことを言える資格はないのはわかっていますが、聞いてください」
「何ですか?」

「オーサーのことです。オーサーをいつまで今のようにしておくつもりなのですか?」
「どういう事ですか?」
「恋人ではないのですね? けれど少なくとも、女性だと周知するべきだと思うわ」
 眉を顰めずにはいられなかった。どんなにそうなってほしいと思っているか。

「彼女は、私が必要ないのです」
「あなたには必要でしょう」
「それは間違いなく」
「ならばそう言ったのですか?」
「・・・言ったことはあります。だが彼女は仕事の為に必要だからと解釈しました。これ以上私の気持ちを伝えても、彼女の迷惑になります。彼女は一人が好きで、一人で生きられる人です。ここが嫌になれば出て行ってしまう」

「言わないと後悔します。愛していることはお伝えなさい。あとどうするかはオーサー次第でしょう。言って、振られたらもう追わないのがいいでしょう」
「彼女は必要です。いなければ生きる意味が無くなる。逃がす事はできない」
「あなたは・・・」
 王妃は茶を飲んだ。

「今までは母親・・・あなたの親族として言いました。ここからは王族として言います。わたくしも彼女を逃がしてはいけないと思います」
 ファリオンの為だけに動いていた昔とは顔つきが違う。

「あの調整能力は貴重です。そして施策立案。医療料金は彼女の提案だと聞きました」
「はい。さらにその先も彼女は考えています」
「製紙工場もだと」
「彼女が発案し、技術者を説得しました。他国の工場で働いてほしいと」
「平民からも支持が高いそうですね」
「彼女は馬で街を移動するし、気軽に店に入るので。民も物価が下がった事や暮らしが上向いているのは彼女のお蔭だと思っています」

「・・・お父様がオーサーを殺そうとしたのは、ある意味正しかった。敵にしてはいけない人です。周囲から固めなさい。女性だと認めさせ、あなたの所有、ではなくても支配下にあると認めさせる。彼女にはわたくしの若いときのドレスを贈ります。春のパーティに着てほしいと伝えます。そうすれば断るのは難しいでしょう」
 強力な味方か。
 まさか王妃と目的を同じくし、助力を受けるとは思わなかった。全てはともやだ。

「ご協力に感謝します」
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