終生飼育は原則ですから

乃浦

文字の大きさ
上 下
139 / 365
被保護編 338年

338年1月16-2

しおりを挟む
「王妃は」
「死刑だ」
 そう言うと思った。
「罪状は?」
「教唆及び主犯だ」
 それは苦しいでしょう。証拠はない。何より、一国の王妃を処刑するなんて影響が大きすぎる。
「王妃は何も知らなかった。だから処刑はできない」
「あの場にいて知らなかったではすまない」
「それを証言できる人間はいない」
「ファリオンがいる」
 子に親を告発させる。息子に告発される母。復讐としては完璧だけどね。

「証言としては弱い。利害関係があるから。王妃がいなくなれば厚遇すると圧力を掛けられたら、第二王子は逆らえない」
「・・・あなたをこんなに傷めつけた事実がある」
「私をやったのはソサイゾで、王妃は知らなかった。ちょっと私を見ないで冷静に考えて。十年、二十年後に証拠もないのに王族が処刑されたという前例が残るということを。悪しき例を、絶対に作ってはいけない」
「・・・」

「私を心配してくれたことはありがたいし、怒ってくれていることもありがたいけど、これは誰が悪いというわけではないと思う」
「ソサイゾが犯人だと言っただろう」
「そう。だけどソサイゾの立場なら私が本当に目障りだった。殺したいし、どうせ殺すなら邪魔な奴も一緒に消せれば一石二鳥。無駄がない」
 レイサスが何か言いたそうだけど、ちょっと待て。そしてそんなに近づかないでほしい。

「王妃はファリオンを取り戻したかっただけ。最近呼んでも来なくなったし、ソサイゾはなぜか力になってくれない。たまたまあの場所に来ただけ」
 マクシミリアンさんたちを見た。皆さんもレイサスを止めたいはずだ。

「この状況は好機だ。ソサイゾを排除できる。王妃も後見を失いおとなしくなる。石炭は手に入るし、直轄でなくても間接的に領地が手に入る」
 レイサスの瞳は光によって色が変わって見える。今はグレーだ。
「王妃とその父を処刑し領地を取り上げたと言われれば、後年それに倣う人間は現れる。欲しいもののためなら殺せばいいという例を作ってはいけない」

 レイサスが少し目を細め、イスから立って私の前にひざまずき、手を取った。
「あなたの言う通りに。あなたはいつも正しい」
 手に口付けるのはやめて。手を引いたけど痛いし、動きがゆっくりだからレイサスが付いてくる。意味ない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...