終生飼育は原則ですから

被保護編 337年

337年10月4-2

　皆で執務室を出て、ファリオン以外の四人でシルヴィオ邸に戻った。
　ああ帰りたくない。レイサスが怖い。絶対なんか言ってくるよ。

　案の定、シルヴィオ邸に入ったら腕をつかまれて談話室に引っ張って行かれ、ドアを閉めたら怒鳴られた。いや怒鳴っていない。普通の音量だけど硬い声音だった。
　そして壁ドンだった。いやあやめて。少女マンガの三大シーンの二つ目までも消化してしまった。
　ちなみに三大シーンとは私調べで、添い寝、壁ドン、キス寸止めです。

「なぜファリオンと一緒なのだ」
　話せば長いことながら、パーティの時に会って、ファリオンを利用して軍に行って、そうしたら暇そうなファリオンをさらに利用できるかなと思って。
　別に不利になることはしていない。ソサイゾから虎の子を引き離そうとしているだけだよ。

「・・・・・・なぜ言わない」
　言うと面倒そうだったからなぁ。
　企画書じゃないんだから、どうなるかわからないことを可能性全部上げて説明するなんてめんどくさい。
　だめならだめで、デメリットは特にないと思うんだけど。

「危険なんだ。ファリオンが囮で、ソサイゾに拘束されるかもしれない」
　パーティの時？　あの時は護衛もいたし、人も多いから声を上げれば逃げられる。
「軍で・・・いや」
　軍はソサイゾの息のかかった兵もいるだろうけど、それ以外もいるから安全でしょ。
　とにかく、危険はない。

「他に何が危険だと？」
「王妃だ」
　王妃。ファリオンを取り込もうとすると動くかもね。
　王妃からの呼び出しは拒否できない。行った先でソサイゾに拘束されたら。

　だけど呼び出しは形式を残すから言い逃れできないし、王妃のところに行って帰らないなら王妃宮に乗り込む事もできる。王妃宮の訪問記録からソサイゾに行き着けるんじゃないかな。
　訪問記録を残していなかったら。そのときはどうするかな。それにしても王妃からの呼び出しが来てからだね。

　レイサスは王妃に過敏すぎるんじゃないかな。生い立ちを考えれば仕方ないけど。
　私にとってはソサイゾ・王妃・ファリオンでソサイゾが主因だけど、レイサスには王妃・ファリオン・ソサイゾなのかもしれない。
　ここは冷静になってもらいたいね。

「他には何がご心配ですか？」
　仕事が終わったんだから本を読みたいし、おなかも減った。
　近い近い顔近い。
「ファリオンに気を付けて」
　ファリオンはレイサスのことが好きなのに、やっぱりレイサスは好きじゃないのか。かわいそうに。

　はいはい言っておく。ファリオンのことはそのうちレイサスも知るだろう。
　そして軍に通うことは夕食時にみんながいるときに言おう。レイサスは過保護なんだって。