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被保護編 337年
337年4月5
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これから着る服をただで手に入れる当てがついた。よし。被服費は限りなく節約できる。
髪は伸ばす方がまあ楽。洗うのと乾かすのが面倒だけど、頻繁に切らなくていいからいいか。
自分で適当に切っているからいつでも切れるけど、この世界の風呂場で切ったら始末が大変そうだ。
染めなくていいって言ってくれてよかった。染めたら染め続けないといけないからねぇ。めんどくさい。しかも私は眉の色も濃いから眉まで染めないといけないし。
で、さしあたって私は何を着ればいいのか。この服で全く問題ないと思うんだけど、レイサスがこの世界の尺度だから仕方ない。
シルヴィオさんが持ってきてくれて、私が直すまでこのままでいいよねと確認を取ろうとすると、激しいノックの音がした。
マクシミリアンさんがドアを開けると、おお、美女。いや美少女? どちらでもいいしどちらも兼ね備えた女性が駆け込み、レイサスに駆け寄り、ひざまずいてレイサスの手を取って泣きながら額に押し当てた。
素晴らしい。何て絵になるんだろう。
やっぱりレイサスはこういう格好が一番似合う。カジュアルだとどうしても違和感がね。
完璧な貴公子にひざまずく金髪碧眼の美女。
イユリスは金髪の人が多い。北欧みたい。みんな背も高いし。
象牙のように白い額。アクアマリンの瞳から流れる涙。桜桃の唇を戴いた手に当てる。
中世の吟遊詩人なら謳うね。泣いても美しいなんて、本物の美女だ。私の泣き顔は人には見せられない。
婚約者? 恋人? こんな人を残してきたなんて辛かっただろうに。ただ私にはいるって教えてほしかった。さびしい。
「クリスティアナ、私は戻った。もうどこかに行く事はない。手を放してくれ」
冷たいなー。抱きしめて前半のセリフを言えばいいのに。
「ともや、紹介する。マクシミリアンの娘、クリスティアナ・ヌゼラスだ」
とりあえず立ちあがって、頭に掛っている毛布は下ろした。
「大佐屋ともやです。オーサーとお呼びください」
「クリスティアナ・ヌゼラスです」
素晴らしい。これがカーテシーというやつでしょ。美しい。
レイサスが私の隣に立ち、私の腰に手を当てる。
「私の恩人だ」
恩人。まあ確かに。だけどその恩はこれから返してもらうし、関係ない人に恩人って言われても反応に困ると思うよ。
自分の恩人なら丁重に扱われるはずって、疑いなく考えているんだろうな、この王子様め。
「今は反対の立場になりましたが。お邸にお邪魔してすみません」
「いえ。ではオーサー様のお陰でレイサス様がお戻りになったのですね」
まあ広く捉えれば。だけど狭義だと皆さんのおかげです。
「私は何もできませんでした」
「いえ、ありがとうございます」
またお辞儀をしてくれる。礼儀正しい人だなぁ。
困る。私はどうすればいいのか。日本式お辞儀でもしておく?
「ともや、食事は取ったのか?」
近いんだよね。
こうしてみると、日本ではそれなりに日本に合わせようとしていたのか。前よりももっと距離が近い。アラサーの女のスッピンに近寄らないでほしいもんだ。
イスに座っていたときはもう遠ざかれなかったけれど、今は立っているから斜め後ろに移動する。
「まだです」
「すぐに用意を」
マクシミリアンさんが部屋を出ていった。
食堂で食べるのか、ここに運んでくれるのか。そしてみんなで食べるの?
「ひとりで食べてもいいですか?」
さすがに疲れた。着替えるのも面倒だし。
「・・・私も外した方がいいだろうか?」
「できれば。そしてできれば、何か本を貸して下さい。食べた後はまた寝かせてください。それまでの間読んでいたい」
「シルヴィオ、適当な本を持ってきてくれ」
カートに乗せた食事と、シルヴィオさんの持ってきてくれた数冊の本と入れ替えに、皆さん出て行ってくれました。
ひとりだ。ひとりはいい。
髪は伸ばす方がまあ楽。洗うのと乾かすのが面倒だけど、頻繁に切らなくていいからいいか。
自分で適当に切っているからいつでも切れるけど、この世界の風呂場で切ったら始末が大変そうだ。
染めなくていいって言ってくれてよかった。染めたら染め続けないといけないからねぇ。めんどくさい。しかも私は眉の色も濃いから眉まで染めないといけないし。
で、さしあたって私は何を着ればいいのか。この服で全く問題ないと思うんだけど、レイサスがこの世界の尺度だから仕方ない。
シルヴィオさんが持ってきてくれて、私が直すまでこのままでいいよねと確認を取ろうとすると、激しいノックの音がした。
マクシミリアンさんがドアを開けると、おお、美女。いや美少女? どちらでもいいしどちらも兼ね備えた女性が駆け込み、レイサスに駆け寄り、ひざまずいてレイサスの手を取って泣きながら額に押し当てた。
素晴らしい。何て絵になるんだろう。
やっぱりレイサスはこういう格好が一番似合う。カジュアルだとどうしても違和感がね。
完璧な貴公子にひざまずく金髪碧眼の美女。
イユリスは金髪の人が多い。北欧みたい。みんな背も高いし。
象牙のように白い額。アクアマリンの瞳から流れる涙。桜桃の唇を戴いた手に当てる。
中世の吟遊詩人なら謳うね。泣いても美しいなんて、本物の美女だ。私の泣き顔は人には見せられない。
婚約者? 恋人? こんな人を残してきたなんて辛かっただろうに。ただ私にはいるって教えてほしかった。さびしい。
「クリスティアナ、私は戻った。もうどこかに行く事はない。手を放してくれ」
冷たいなー。抱きしめて前半のセリフを言えばいいのに。
「ともや、紹介する。マクシミリアンの娘、クリスティアナ・ヌゼラスだ」
とりあえず立ちあがって、頭に掛っている毛布は下ろした。
「大佐屋ともやです。オーサーとお呼びください」
「クリスティアナ・ヌゼラスです」
素晴らしい。これがカーテシーというやつでしょ。美しい。
レイサスが私の隣に立ち、私の腰に手を当てる。
「私の恩人だ」
恩人。まあ確かに。だけどその恩はこれから返してもらうし、関係ない人に恩人って言われても反応に困ると思うよ。
自分の恩人なら丁重に扱われるはずって、疑いなく考えているんだろうな、この王子様め。
「今は反対の立場になりましたが。お邸にお邪魔してすみません」
「いえ。ではオーサー様のお陰でレイサス様がお戻りになったのですね」
まあ広く捉えれば。だけど狭義だと皆さんのおかげです。
「私は何もできませんでした」
「いえ、ありがとうございます」
またお辞儀をしてくれる。礼儀正しい人だなぁ。
困る。私はどうすればいいのか。日本式お辞儀でもしておく?
「ともや、食事は取ったのか?」
近いんだよね。
こうしてみると、日本ではそれなりに日本に合わせようとしていたのか。前よりももっと距離が近い。アラサーの女のスッピンに近寄らないでほしいもんだ。
イスに座っていたときはもう遠ざかれなかったけれど、今は立っているから斜め後ろに移動する。
「まだです」
「すぐに用意を」
マクシミリアンさんが部屋を出ていった。
食堂で食べるのか、ここに運んでくれるのか。そしてみんなで食べるの?
「ひとりで食べてもいいですか?」
さすがに疲れた。着替えるのも面倒だし。
「・・・私も外した方がいいだろうか?」
「できれば。そしてできれば、何か本を貸して下さい。食べた後はまた寝かせてください。それまでの間読んでいたい」
「シルヴィオ、適当な本を持ってきてくれ」
カートに乗せた食事と、シルヴィオさんの持ってきてくれた数冊の本と入れ替えに、皆さん出て行ってくれました。
ひとりだ。ひとりはいい。
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