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43 約束破り

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そのままルークは家まで一直線に向かった。腕をつかむ力が少し強い。まるで何かに焦っているようだ。もしくは機嫌が悪い…?




「ルーク、お風呂終ったよ」

家につく頃には、空がすっかり暗くなっていた。
俺は入浴を済ませると寝室へと向かった。ベッドの上で彼は髪を乾かしている。

「ルークのはやっぱりサイズ合わないなぁ」

時々彼のパジャマを借りるけどやはり袖が余ってしまう。俺は余った袖を大げさに振り回した。
レストランを出てから彼の様子がおかしいから、話のきっかけになればいいと思ったのだが。

「ルークの"は"?」

彼は思いもよらないところに引っかかってきた。やばい。無意識だったけど、前にロウに服を借りたときのことと比べてしまっていたようだ。

「いや、特に意味は…」

するといきなり、ルークはベッドから立ち上がり俺の両手を掴んだ。そして上から覗き込むようにじーっと視線を合わせると

「ノイス。君、僕に隠してることあるよね?」

そうはっきりと告げた。

「か、隠し事…?!」

「そう」

なんだ。隠しごと…。ロウの家に泊まって服を借りたこと?でもそれは付き合う前だし。あとは…冷蔵庫のプリン食べたこと?でもそれは俺にくれるって言ってたし…。
必死に頭を巡らせるがいまいちピンとこない。


すると彼は俺の右側の首を指で軽く擦った。

「そこ」

「ここ?」

「ここにあったキスマークが消えてる。僕が水を買って戻ってきてからね」

「…」

キスマーク…が消えてる?そんなことあるのか?俺は右の首を抑えながら考え込んだ。
右…右…あ。一つだけ心当たりが…ある…。

待って待って。というか普通そんなこと気づくか…?それで怒ってたのか…。

「内出血のあとが瞬時に消えるなんてことありえないよ。例えば」

彼はゆっくりと俺の首筋に顔を近づけた。そして尖った牙をぐっと押し当てる。

「ヴァンパイアが舐めたりしないと治らない」

そう耳元で囁いた。その瞬間背筋がゾクッとして血の気が引いていく。
僕以外に血をあげてはいけないよ。その約束を俺は破った。そしてそれがバレかけている。というかバレてる。

「…ぅっ…」

ルークは押し当てた牙に力を入れる。すると首から真っ赤な血が溢れ出した。
それを丁寧に舐め取っていく。

「…あぁぁっい、痛っ、ルーク」

彼はいつもよりも深く牙を突き刺した。ぐりぐりとえぐるように血をすする。
大量に血を流し俺はその場に座り込んだ。

「…飲みすぎ…っ」

軽く肩を押すが離れてくれる様子はない。

「まだ足りない。ノイス、もっと飲んでいい?」

「う…」

「お願い、どうしても飲みたい」

ルークはそう言って俺を抱きしめる。
これは俺が百悪い。仕方なく頷くと彼の視線が一層冷たくなった。

「へぇ。こうやって必死にお願いされたらあげちゃうんだ」

「…」

彼は冷ややかな目をこちらに向ける。

「どうして僕の言う事聞いてくれないのかな。君の体に他のヴァンパイアが牙をたてることも、触れることもさえ嫌なのに」

「ごめ…っ」

「ノイス」

「ぁっごめ…んんっんっ」
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