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智紀
緊急事態?
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「王、大変です! ”繭”から聖神様の姿が消え……!?」
バーン、と扉が開いて。
血相を変えたイリヤが飛び込んできたのは。
ちょうど、今まさに。
挿入される寸前、という状況下であった。
*****
「聖神様を自室へ連れ込んで手篭めにするとは。何を考えているのですか!!」
イリヤはおかんむりだった。
獣の姿だったら、毛を逆立てているに違いない。
イリヤは空を見て。
今日は珍しく天気が曇ってるな、と不審に思い、どうしたのかと僕の様子を見に行ったら、
”繭”のベッドに僕がいなかった。
まさか誰かに攫われでもしたのかと、大慌てでユリアーンやレナート、パーヴェルも呼び出して。
皆で、手分けして捜索していたらしい。
「智紀はもう私のものだと認めたし、伴侶になると言った。……曇っていたのか? 反応があるのが嬉しくて、つい焦らしすぎたか? 今後はそういった駆け引きはなしにするか」
ヴァルラムはマントで僕を包んで、抱き寄せてきた。
やはり、わざと焦らしていたのか。
全く。
「……肉体と魂がきちんと定着するまで、夜の間は”繭”から出さないように、と言ったのをお忘れで?」
イリヤは氷のような冷たい眼差しで王を睨んだ。
「何!? そんなことを言っていたか!?」
「召喚前からも後も、何度も言いましたよ……?」
どうやら、こちらに来て新しく作られた僕の肉体と魂は、まだ深く結びついていないそうなので、しばらくは”繭”のベッドで寝ていた方が安心なようだ。
その話、僕も初耳なのだが。
何故、そういう大事なことを本人に教えてくれないのだろうか。
余計な心配を掛けさせないように、という思いやりだろうか。
ここに来てから、夢を見ているような感じで。
妙に現実感がなかったのは、魂が安定していなかったせいだったのか?
異世界への違和感などではなく。
「……戻るぞ、」
ヴァルラムはマントに包まっている僕を横抱きにすると。
ダッシュで部屋を飛び出した。
裸のままで。
*****
「ヴァ、……服! 服着て!!」
リアル裸の王様だ!
「私の服など、どうでもよい! ……なに、どうでもよくない? む、智紀が嫌なのか? ならば、」
ヴァルラムは狼の姿に変わって。
僕をひょい、と自分の背中に放った。
凄いスピードで廊下を駆け抜けて、神殿に飛び込んで。
まっすぐに”繭”へ向かう。
銀色の風の如く。
あ、ユリアーンが驚いてこっちを見ている。
心配させて申し訳ない。
”繭”に着いて。
ベッドにそっと下ろされた。
「大丈夫か? 具合が悪かったのか? 何かあれば我慢せず、すぐに言うのだぞ」
心配そうに顔を覗き込まれる。
狼のままでも、表情がわかるものなのか。
不思議だ。
「だ、大丈夫……元気、」
問題ない、と思う。
王は、大きな狼の手で、何やら器用にベッドのコントローラーパネルのようなものを操作をしている。
……銀狼の肉球は、黒いのか。
問題ないか、調べているようだ。
この部屋の装置は、魔法というより、機械のような感じなのか?
言葉は理解できるようになったらしいが。残念ながら、文字は読めないようだ。
さっぱりわからない言語が並んでいる。
大きな狼はほう、と溜め息を吐いて。
「……大丈夫なようだ。これからも、決して無理はするなよ。私はもう、そなたがいないと生きていけないのだからな」
キュゥン、と鼻先をすり寄せて来た。
そんな大袈裟な、とは思ったが。
つい、ぎゅっと抱き締めてしまった。
ああ、もふもふ可愛い。
「聖神様に何かあったのですか!?」
ユリアーンが血相を変えて飛び込んできた。
……さっき、無事な姿を見たはずでは?
*****
ユリアーンは、王があれほど必死な形相で走っている姿を初めて見たので。
何かよほど僕に大変な事でもあったのかと思って、心配して駆けつけてくれたようだ。
単に、ヴァルラムが過剰に心配して、急いで戻ってきただけだったのだが。
とりあえず身体に問題はない、と。
ヴァルラムがパネルのようなものをユリアーンに見せた。
あのパネルのようなものは、機械なのだろうか? 発達しすぎた科学は魔術と区別が付かない、というが。
ここは魔法使いも呪医もいる世界である。両方発達している、と考えるべきか。
「はあ、やっと追いついた……」
しばらくして、イリヤが追いついてきた。
豹の方が足が速そうだが。
途中で、捜索に出ていたレナートとパーヴェルとも合流していたようだ。
朝早くから、お騒がせして申し訳ない。
僕のせいではないが。
イリヤが、ことの顛末を皆に説明して。
皆して人騒がせな! 王は聖神を”繭”から連れ出すの禁止! と王を叱っている。
立場弱いな、王様なのに。年下だからかな?
しょぼんと耳を後ろに伏せた様子が何だか可哀想なので。
額の辺りを撫でたら、嬉しそうにもふもふのしっぽを振り出した。
抱き締めたいほど可愛い。
*****
「あの、王は何故、獣の姿のままなのです?」
ユリアーンが首を傾げている。
「裸で飛び出したからじゃないの?」
パーヴェルは察しがいいな。
「でも、王は普段、裸だろうが平気で歩いてますよね」
「むしろ服を着るのが面倒で、よく獣姿で歩いてましたね」
とか言われている。
レナートは獣の姿から裸になったとき、恥ずかしそうだったが。
ヴァルラムは普段から裸族なのだろうか。
あれだけ立派な身体なら、他人に見られても恥ずかしくはないのかもしれない。
偉い人なら、使用人に着替えをさせたりするだろうし。
しかし、一国の王様がお宝をぶらぶらさせて歩くのは如何なものかと思う。
「智紀が、ツガイである私の裸を他人に見せたくないというので、そうすることにしたのだ」
ヴァルラムは得意げに鼻を上げた。
なにやら曲解されているようだが。
得意げな狼が可愛いので許そう。
もふもふ。
「くっ……、毛皮の触り心地なら負けませんよ!?」
イリヤは何を言っているのだろうか。
豹の毛皮はどうなのか、撫で心地に興味はあるものの。
誰とはあえて言わないが、嫉妬する狼族の人がいるので。
豹皮を撫でさせてもらうのはやめた方がいいだろう。
バーン、と扉が開いて。
血相を変えたイリヤが飛び込んできたのは。
ちょうど、今まさに。
挿入される寸前、という状況下であった。
*****
「聖神様を自室へ連れ込んで手篭めにするとは。何を考えているのですか!!」
イリヤはおかんむりだった。
獣の姿だったら、毛を逆立てているに違いない。
イリヤは空を見て。
今日は珍しく天気が曇ってるな、と不審に思い、どうしたのかと僕の様子を見に行ったら、
”繭”のベッドに僕がいなかった。
まさか誰かに攫われでもしたのかと、大慌てでユリアーンやレナート、パーヴェルも呼び出して。
皆で、手分けして捜索していたらしい。
「智紀はもう私のものだと認めたし、伴侶になると言った。……曇っていたのか? 反応があるのが嬉しくて、つい焦らしすぎたか? 今後はそういった駆け引きはなしにするか」
ヴァルラムはマントで僕を包んで、抱き寄せてきた。
やはり、わざと焦らしていたのか。
全く。
「……肉体と魂がきちんと定着するまで、夜の間は”繭”から出さないように、と言ったのをお忘れで?」
イリヤは氷のような冷たい眼差しで王を睨んだ。
「何!? そんなことを言っていたか!?」
「召喚前からも後も、何度も言いましたよ……?」
どうやら、こちらに来て新しく作られた僕の肉体と魂は、まだ深く結びついていないそうなので、しばらくは”繭”のベッドで寝ていた方が安心なようだ。
その話、僕も初耳なのだが。
何故、そういう大事なことを本人に教えてくれないのだろうか。
余計な心配を掛けさせないように、という思いやりだろうか。
ここに来てから、夢を見ているような感じで。
妙に現実感がなかったのは、魂が安定していなかったせいだったのか?
異世界への違和感などではなく。
「……戻るぞ、」
ヴァルラムはマントに包まっている僕を横抱きにすると。
ダッシュで部屋を飛び出した。
裸のままで。
*****
「ヴァ、……服! 服着て!!」
リアル裸の王様だ!
「私の服など、どうでもよい! ……なに、どうでもよくない? む、智紀が嫌なのか? ならば、」
ヴァルラムは狼の姿に変わって。
僕をひょい、と自分の背中に放った。
凄いスピードで廊下を駆け抜けて、神殿に飛び込んで。
まっすぐに”繭”へ向かう。
銀色の風の如く。
あ、ユリアーンが驚いてこっちを見ている。
心配させて申し訳ない。
”繭”に着いて。
ベッドにそっと下ろされた。
「大丈夫か? 具合が悪かったのか? 何かあれば我慢せず、すぐに言うのだぞ」
心配そうに顔を覗き込まれる。
狼のままでも、表情がわかるものなのか。
不思議だ。
「だ、大丈夫……元気、」
問題ない、と思う。
王は、大きな狼の手で、何やら器用にベッドのコントローラーパネルのようなものを操作をしている。
……銀狼の肉球は、黒いのか。
問題ないか、調べているようだ。
この部屋の装置は、魔法というより、機械のような感じなのか?
言葉は理解できるようになったらしいが。残念ながら、文字は読めないようだ。
さっぱりわからない言語が並んでいる。
大きな狼はほう、と溜め息を吐いて。
「……大丈夫なようだ。これからも、決して無理はするなよ。私はもう、そなたがいないと生きていけないのだからな」
キュゥン、と鼻先をすり寄せて来た。
そんな大袈裟な、とは思ったが。
つい、ぎゅっと抱き締めてしまった。
ああ、もふもふ可愛い。
「聖神様に何かあったのですか!?」
ユリアーンが血相を変えて飛び込んできた。
……さっき、無事な姿を見たはずでは?
*****
ユリアーンは、王があれほど必死な形相で走っている姿を初めて見たので。
何かよほど僕に大変な事でもあったのかと思って、心配して駆けつけてくれたようだ。
単に、ヴァルラムが過剰に心配して、急いで戻ってきただけだったのだが。
とりあえず身体に問題はない、と。
ヴァルラムがパネルのようなものをユリアーンに見せた。
あのパネルのようなものは、機械なのだろうか? 発達しすぎた科学は魔術と区別が付かない、というが。
ここは魔法使いも呪医もいる世界である。両方発達している、と考えるべきか。
「はあ、やっと追いついた……」
しばらくして、イリヤが追いついてきた。
豹の方が足が速そうだが。
途中で、捜索に出ていたレナートとパーヴェルとも合流していたようだ。
朝早くから、お騒がせして申し訳ない。
僕のせいではないが。
イリヤが、ことの顛末を皆に説明して。
皆して人騒がせな! 王は聖神を”繭”から連れ出すの禁止! と王を叱っている。
立場弱いな、王様なのに。年下だからかな?
しょぼんと耳を後ろに伏せた様子が何だか可哀想なので。
額の辺りを撫でたら、嬉しそうにもふもふのしっぽを振り出した。
抱き締めたいほど可愛い。
*****
「あの、王は何故、獣の姿のままなのです?」
ユリアーンが首を傾げている。
「裸で飛び出したからじゃないの?」
パーヴェルは察しがいいな。
「でも、王は普段、裸だろうが平気で歩いてますよね」
「むしろ服を着るのが面倒で、よく獣姿で歩いてましたね」
とか言われている。
レナートは獣の姿から裸になったとき、恥ずかしそうだったが。
ヴァルラムは普段から裸族なのだろうか。
あれだけ立派な身体なら、他人に見られても恥ずかしくはないのかもしれない。
偉い人なら、使用人に着替えをさせたりするだろうし。
しかし、一国の王様がお宝をぶらぶらさせて歩くのは如何なものかと思う。
「智紀が、ツガイである私の裸を他人に見せたくないというので、そうすることにしたのだ」
ヴァルラムは得意げに鼻を上げた。
なにやら曲解されているようだが。
得意げな狼が可愛いので許そう。
もふもふ。
「くっ……、毛皮の触り心地なら負けませんよ!?」
イリヤは何を言っているのだろうか。
豹の毛皮はどうなのか、撫で心地に興味はあるものの。
誰とはあえて言わないが、嫉妬する狼族の人がいるので。
豹皮を撫でさせてもらうのはやめた方がいいだろう。
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