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国王攻略

南の国王アカム・Ⅰ

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南の国の、城でなく町までは普通に入れるようだ。

「小鳥は、多くの大陸のある世界で暮らしていたと言っていたね。どんな国だったのか、教えてくれるかい?」
町に向かう道すがら、リオンに訊かれた。


「ああ。俺はその内の小さな島国、日本ってとこで生まれた。……時代は違うけど、文化は東の国に似てる」

「ああ、それで、東の国を見て驚いていたのだね。……そうか、ニホンというのか。良いところのようだ」
納得してるが。
何で良いところに思えるんだ? 俺の頭が平和ボケしてるからか?


「税金は高ェし、法律は穴だらけだし。ロクなもんじゃねえけどな。……でもま、嫌いじゃなかった」

運が悪けりゃ暴漢に遭うが。
基本的に、夜中一人で歩いても、銃で撃たれたりして死ぬことは滅多にない。

緑や水資源は豊富で。幸い俺は、飢えたこともない。衣住食に困ったことも。
……何だ、恵まれてたんじゃないか。


「自分の育った国をそう言えるのは、平和な証拠だよ」
リオンは静かに言った。
「……南の王都は、他者を受け入れず、国王は、自分や自国を悪く言うもの、逆らうものを処刑するという」


あ、そういう国知ってる。
日本政府承認の国家数には国として含まれてない国だけど。

って、国レベルかよ。すげえ難易度じゃね?


†††


「ここでは、これを被っていた方がいい」
と、リオンから、アラブ女性が被るアバヤ? みたいな布を渡された。
真っ赤なやつ。派手だな。

「南の国は、見目の良い子供は全て国王に捧げられてしまうそうだ。男でも、女でも」

男でも!? おいおい、王様、雑食なのかよ!?
でもそれなら俺より、リオンの方がヤバいんじゃねえの?


「急いで」
慌てた様子のリオンに布を被らされて。

馬を道の脇へ寄せると。


その直後、真っ赤な鎧の騎士の集団が、騎馬で駆け抜けていった。
掲げた旗は、赤地に金の糸で。

フェニックスを模った紋章だった。


南の国は、南の国だった。
気温が。

マジモンのサンシャインだった。青い海、青い空。
ビーチは閑散としてるが。しかし沖縄でも、現地の人は昼間、泳がないっていうしな。日差しで火傷するから。

出歩く人も少なく、頭からクーフィーヤだっけ? アラブ風の布を被った商人が数人いるくらい。
魔界の方の南は、あっちの通路通るとき、改装中だって言ってたな。楽しみだ。


てかリオン、鎧、蒸し暑くないのかね……。
俺は、頭から被ってる布が日除けになって、比較的楽だが。

「それ、脱がなくて大丈夫か? 暑くねえ?」

「聖騎士の鎧には様々な祝福が施されているから大丈夫だよ。外気温に左右されないのもそうだ」
他にもHP、MP回復(小)とか魔法反射効果とかもあるとか。

うわ、便利ー。国の特注品で、店では売ってないのが残念だ。
俺が持ってても着る機会なんてないだろうけど。


†††


「ここは南の町、ウエストです」

…………何て?
WESTって、西じゃ……。いや腰の方か? てかここ、そもそも英語圏じゃなかった。
しかし、何だこの、むずむずする感じは!

人の出入りが多くて、道先案内人である三男アンは忙しそうだ。
母ちゃんの名前教えて欲しい、なんて言えねえな……。


宿屋は4モッコリだった。リゾート地価格か? イロイロなモンが高かった。
飴玉(HP小回復)ひとつが20ソチンとか。暴利貪りすぎじゃね? ぼったくりすぎ。

リオンは情報を得ていたので、必需品は西ですでに仕入れていた。
さすがデキる男は違う。

まあ本来リゾート地に金を落とすのは観光客のマナーみたいなもんだが。別に観光客じゃないので、いいのだ。


「俺、この布とって、歩こうと思う」

リオンはすぐにその意図に気付いた。
攫われたら、王都に潜入できる。しかも、国王のすぐ側に、だ。

「王についての情報は何も無いが……」
不安そうに言う。

言論統制された国じゃ仕方ねえ。出たとこ勝負だ。
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