48 / 64
国王攻略
南の国王アカム・Ⅰ
しおりを挟む
南の国の、城でなく町までは普通に入れるようだ。
「小鳥は、多くの大陸のある世界で暮らしていたと言っていたね。どんな国だったのか、教えてくれるかい?」
町に向かう道すがら、リオンに訊かれた。
「ああ。俺はその内の小さな島国、日本ってとこで生まれた。……時代は違うけど、文化は東の国に似てる」
「ああ、それで、東の国を見て驚いていたのだね。……そうか、ニホンというのか。良いところのようだ」
納得してるが。
何で良いところに思えるんだ? 俺の頭が平和ボケしてるからか?
「税金は高ェし、法律は穴だらけだし。ロクなもんじゃねえけどな。……でもま、嫌いじゃなかった」
運が悪けりゃ暴漢に遭うが。
基本的に、夜中一人で歩いても、銃で撃たれたりして死ぬことは滅多にない。
緑や水資源は豊富で。幸い俺は、飢えたこともない。衣住食に困ったことも。
……何だ、恵まれてたんじゃないか。
「自分の育った国をそう言えるのは、平和な証拠だよ」
リオンは静かに言った。
「……南の王都は、他者を受け入れず、国王は、自分や自国を悪く言うもの、逆らうものを処刑するという」
あ、そういう国知ってる。
日本政府承認の国家数には国として含まれてない国だけど。
って、あの国レベルかよ。すげえ難易度じゃね?
†††
「ここでは、これを被っていた方がいい」
と、リオンから、アラブ女性が被るアバヤ? みたいな布を渡された。
真っ赤なやつ。派手だな。
「南の国は、見目の良い子供は全て国王に捧げられてしまうそうだ。男でも、女でも」
男でも!? おいおい、王様、雑食なのかよ!?
でもそれなら俺より、リオンの方がヤバいんじゃねえの?
「急いで」
慌てた様子のリオンに布を被らされて。
馬を道の脇へ寄せると。
その直後、真っ赤な鎧の騎士の集団が、騎馬で駆け抜けていった。
掲げた旗は、赤地に金の糸で。
フェニックスを模った紋章だった。
南の国は、南の国だった。
気温が。
マジモンのサンシャインだった。青い海、青い空。
ビーチは閑散としてるが。しかし沖縄でも、現地の人は昼間、泳がないっていうしな。日差しで火傷するから。
出歩く人も少なく、頭からクーフィーヤだっけ? アラブ風の布を被った商人が数人いるくらい。
魔界の方の南は、あっちの通路通るとき、改装中だって言ってたな。楽しみだ。
てかリオン、鎧、蒸し暑くないのかね……。
俺は、頭から被ってる布が日除けになって、比較的楽だが。
「それ、脱がなくて大丈夫か? 暑くねえ?」
「聖騎士の鎧には様々な祝福が施されているから大丈夫だよ。外気温に左右されないのもそうだ」
他にもHP、MP回復(小)とか魔法反射効果とかもあるとか。
うわ、便利ー。国の特注品で、店では売ってないのが残念だ。
俺が持ってても着る機会なんてないだろうけど。
†††
「ここは南の町、ウエストです」
…………何て?
WESTって、西じゃ……。いや腰の方か? てかここ、そもそも英語圏じゃなかった。
しかし、何だこの、むずむずする感じは!
人の出入りが多くて、道先案内人である三男アンは忙しそうだ。
母ちゃんの名前教えて欲しい、なんて言えねえな……。
宿屋は4モッコリだった。リゾート地価格か? イロイロなモンが高かった。
飴玉(HP小回復)ひとつが20ソチンとか。暴利貪りすぎじゃね? ぼったくりすぎ。
リオンは情報を得ていたので、必需品は西ですでに仕入れていた。
さすがデキる男は違う。
まあ本来リゾート地に金を落とすのは観光客のマナーみたいなもんだが。別に観光客じゃないので、いいのだ。
「俺、この布とって、歩こうと思う」
リオンはすぐにその意図に気付いた。
攫われたら、王都に潜入できる。しかも、国王のすぐ側に、だ。
「王についての情報は何も無いが……」
不安そうに言う。
言論統制された国じゃ仕方ねえ。出たとこ勝負だ。
「小鳥は、多くの大陸のある世界で暮らしていたと言っていたね。どんな国だったのか、教えてくれるかい?」
町に向かう道すがら、リオンに訊かれた。
「ああ。俺はその内の小さな島国、日本ってとこで生まれた。……時代は違うけど、文化は東の国に似てる」
「ああ、それで、東の国を見て驚いていたのだね。……そうか、ニホンというのか。良いところのようだ」
納得してるが。
何で良いところに思えるんだ? 俺の頭が平和ボケしてるからか?
「税金は高ェし、法律は穴だらけだし。ロクなもんじゃねえけどな。……でもま、嫌いじゃなかった」
運が悪けりゃ暴漢に遭うが。
基本的に、夜中一人で歩いても、銃で撃たれたりして死ぬことは滅多にない。
緑や水資源は豊富で。幸い俺は、飢えたこともない。衣住食に困ったことも。
……何だ、恵まれてたんじゃないか。
「自分の育った国をそう言えるのは、平和な証拠だよ」
リオンは静かに言った。
「……南の王都は、他者を受け入れず、国王は、自分や自国を悪く言うもの、逆らうものを処刑するという」
あ、そういう国知ってる。
日本政府承認の国家数には国として含まれてない国だけど。
って、あの国レベルかよ。すげえ難易度じゃね?
†††
「ここでは、これを被っていた方がいい」
と、リオンから、アラブ女性が被るアバヤ? みたいな布を渡された。
真っ赤なやつ。派手だな。
「南の国は、見目の良い子供は全て国王に捧げられてしまうそうだ。男でも、女でも」
男でも!? おいおい、王様、雑食なのかよ!?
でもそれなら俺より、リオンの方がヤバいんじゃねえの?
「急いで」
慌てた様子のリオンに布を被らされて。
馬を道の脇へ寄せると。
その直後、真っ赤な鎧の騎士の集団が、騎馬で駆け抜けていった。
掲げた旗は、赤地に金の糸で。
フェニックスを模った紋章だった。
南の国は、南の国だった。
気温が。
マジモンのサンシャインだった。青い海、青い空。
ビーチは閑散としてるが。しかし沖縄でも、現地の人は昼間、泳がないっていうしな。日差しで火傷するから。
出歩く人も少なく、頭からクーフィーヤだっけ? アラブ風の布を被った商人が数人いるくらい。
魔界の方の南は、あっちの通路通るとき、改装中だって言ってたな。楽しみだ。
てかリオン、鎧、蒸し暑くないのかね……。
俺は、頭から被ってる布が日除けになって、比較的楽だが。
「それ、脱がなくて大丈夫か? 暑くねえ?」
「聖騎士の鎧には様々な祝福が施されているから大丈夫だよ。外気温に左右されないのもそうだ」
他にもHP、MP回復(小)とか魔法反射効果とかもあるとか。
うわ、便利ー。国の特注品で、店では売ってないのが残念だ。
俺が持ってても着る機会なんてないだろうけど。
†††
「ここは南の町、ウエストです」
…………何て?
WESTって、西じゃ……。いや腰の方か? てかここ、そもそも英語圏じゃなかった。
しかし、何だこの、むずむずする感じは!
人の出入りが多くて、道先案内人である三男アンは忙しそうだ。
母ちゃんの名前教えて欲しい、なんて言えねえな……。
宿屋は4モッコリだった。リゾート地価格か? イロイロなモンが高かった。
飴玉(HP小回復)ひとつが20ソチンとか。暴利貪りすぎじゃね? ぼったくりすぎ。
リオンは情報を得ていたので、必需品は西ですでに仕入れていた。
さすがデキる男は違う。
まあ本来リゾート地に金を落とすのは観光客のマナーみたいなもんだが。別に観光客じゃないので、いいのだ。
「俺、この布とって、歩こうと思う」
リオンはすぐにその意図に気付いた。
攫われたら、王都に潜入できる。しかも、国王のすぐ側に、だ。
「王についての情報は何も無いが……」
不安そうに言う。
言論統制された国じゃ仕方ねえ。出たとこ勝負だ。
3
お気に入りに追加
176
あなたにおすすめの小説
グラティールの公爵令嬢
てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
ファンタジーランキング1位を達成しました!女主人公のゲーム異世界転生(主人公は恋愛しません)
ゲーム知識でレアアイテムをゲットしてチート無双、ざまぁ要素、島でスローライフなど、やりたい放題の異世界ライフを楽しむ。
苦戦展開ナシ。ほのぼのストーリーでストレスフリー。
錬金術要素アリ。クラフトチートで、ものづくりを楽しみます。
グルメ要素アリ。お酒、魔物肉、サバイバル飯など充実。
上述の通り、主人公は恋愛しません。途中、婚約されるシーンがありますが婚約破棄に持ち込みます。主人公のルチルは生涯にわたって独身を貫くストーリーです。
広大な異世界ワールドを旅する物語です。冒険にも出ますし、海を渡ったりもします。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【書籍化決定】神様お願い!〜神様のトバッチリを受けた定年おっさんは異世界に転生して心穏やかにスローライフを送りたい〜
きのこのこ
ファンタジー
突然白い発光体の強い光を浴びせられ異世界転移?した俺事、石原那由多(55)は安住の地を求めて異世界を冒険する…?
え?謎の子供の体?謎の都市?魔法?剣?魔獣??何それ美味しいの??
俺は心穏やかに過ごしたいだけなんだ!
____________________________________________
突然謎の白い発光体の強い光を浴びせられ強制的に魂だけで異世界転移した石原那由多(55)は、よちよち捨て子幼児の身体に入っちゃった!
那由多は左眼に居座っている神様のカケラのツクヨミを頼りに異世界で生きていく。
しかし左眼の相棒、ツクヨミの暴走を阻止できず、チート?な棲家を得て、チート?能力を次々開花させ異世界をイージーモードで過ごす那由多。「こいつ《ツクヨミ》は勝手に俺の記憶を見るプライバシークラッシャーな奴なんだ!」
そんな異世界は優しさで満ち溢れていた(え?本当に?)
呪われてもっふもふになっちゃったママン(産みの親)と御親戚一行様(やっとこ呪いがどうにか出来そう?!)に、異世界のめくるめくグルメ(やっと片鱗が見えて作者も安心)でも突然真夜中に食べたくなっちゃう日本食も完全完備(どこに?!)!異世界日本発福利厚生は完璧(ばっちり)です!(うまい話ほど裏がある!)
謎のアイテム御朱印帳を胸に(え?)今日も平穏?無事に那由多は異世界で日々を暮らします。
※一つの目的にどんどん事を突っ込むのでスローな展開が大丈夫な方向けです。
※他サイト先行にて配信してますが、他サイトと気が付かない程度に微妙に変えてます。
※昭和〜平成の頭ら辺のアレコレ入ってます。わかる方だけアハ体験⭐︎
⭐︎第16回ファンタジー小説大賞にて奨励賞受賞を頂きました!読んで投票して下さった読者様、並びに選考してくださったスタッフ様に御礼申し上げますm(_ _)m今後とも宜しくお願い致します。
悪役令嬢だそうですが、攻略対象その5以外は興味ありません
千 遊雲
恋愛
悪役令嬢に転生したそうですが、攻略対象その5以外には興味がありません。
ストーリー?イベント?ヒロインさん?そんなことはどうでも良いので、攻略対象その5に会いたいのです!
「小説を読もう」にて更新・完結をした作品です。「小説を読もう」のアカウント削除に伴い、書き直して投稿します。
【本編完結済】現在番外編更新中です。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
距離を置きましょう? やったー喜んで! 物理的にですけど、良いですよね?
hazuki.mikado
恋愛
婚約者が私と距離を置きたいらしい。
待ってましたッ! 喜んで!
なんなら物理的な距離でも良いですよ?
乗り気じゃない婚約をヒロインに押し付けて逃げる気満々の公爵令嬢は悪役令嬢でしかも転生者。
あれ? どうしてこうなった?
頑張って自身で断罪劇から逃げるつもりが自分の周りが強すぎてあっさり婚約は解消に?!
やった! 自由だと満喫するつもりが、隣りの家のお兄さんにあっさりつまずいて? でろでろに溺愛されちゃう中身アラサー女子のお話し。
更新は原則朝8時で頑張りますが、不定期になりがちです。ご了承ください(*- -)(*_ _)ペコリ
注! サブタイトルに※マークはセンシティブな内容が含まれますご注意ください。
⚠取扱説明事項〜⚠
異世界を舞台にしたファンタジー要素の強い恋愛絡みのお話ですので、史実を元にした身分制度や身分による常識等をこの作品に期待されてもご期待には全く沿えませんので予めご了承ください。成分不足の場合は他の作者様の作品での補給を強くオススメします。
作者は誤字脱字変換ミスと投稿ミスを繰り返すという老眼鏡とハズキルーペが手放せない(老)人です(~ ̄³ ̄)~マジでミスをやらかしますが生暖かく見守って頂けると有り難いです(_ _)お気に入り登録や動く栞、以前は無かった♡機能。そして有り難いことに動画の視聴。ついでに誤字脱字報告という皆様の愛(老人介護)がモチベアップの燃料です(人*´∀`)。
*゜+
途中モチベダウンを起こし、低迷しましたので感想は完結目途が付き次第返信させていただきます。ご了承ください。
皆様の愛を真摯に受け止めております(_ _)←多分。
9/18 HOT女性1位獲得シマシタ。応援ありがとうございますッヽ(*゚ー゚*)ノ
文字数が10万文字突破してしまいました(汗)
短編→長編に変更します(_ _)短編詐欺です申し訳ありませんッ(´;ω;`)ウッ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる