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魔王様のレベル上げ

魔王の側近・スレイⅠ

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「はぁ……」

溜め息を吐きながら、リオンから貰った指輪を見る。
金細工の、カレッジリングみたいな形状で。リオンの瞳と同じ、碧色の宝石が嵌っている。

……あの瞳が、俺のことを熱っぽく見詰めていたのを思い出すと。何か落ち着かない。

まあ、アイツのおかげで、村人に討伐されることなく安全な場所でレベル上げ出来たのは感謝してる。スレイが俺の気配に気付いたのも、レベルが上がって魔力が増大したからだ。

魔族は人間界にいる間は、定期的に人間の精気を摂取しなければ、衰弱死してしまう、とスレイが言ってた。
俺は一応、自動的に蘇生するようになってるようだし、死にはしないだろうが。お腹がすいて、フラフラにはなってたかも。

あいつ。
夜中、忍んで来たのはエロ目的だけじゃなかったのか……? 俺のため?

……キスくらい、許してやっても良かった、かも。
なんて。


ギャアアア! 何考えてやがんだ俺! 乙女か!!! キモッ!


思わず頭を抱えて、ベッドの上を端から端まで転げ回る。

超キングサイズだから、どんなに転げ回っても落っこちる気がしないぜ! ヒャッハー!


†††


『魔王様、お飲み物をお持ちしま、……どうかなさいましたか?』

げえっ、スレイ!

いいえ、奇声を上げながらベッドを転げ回ってなんかいませんでしたよ? みたいな、何事もなかったような顔をして起きあがって。
乱れた服の皺を直した。

やっべ、29歳にもなって、危うく新たなるブラックなヒストリーを更新するとこだった。


「何事もない。よきにはからえ」

魔王っぽく、魔王っぽく。
臣下の前では威厳ある態度を心がけるように、と言われてるのだ。


確かに、この魔界全てを統括すべき魔王が、俺みたいな柄の悪いチンピラ口調だったら、そりゃイメージ狂うわな。
異世界の言葉がわかるのは、スキルの”全世界共通言語”により、話した言葉がそのまま、自動的にその土地に合わせた言語に変換されているためらしい。

自分では普通に日本語でしゃべってるつもりなので、不思議だ。


どうやらこちらに存在しないものは、自動変換されないようだ。片っ端から試してもいいが、めんどくせえ。
しかし、うっかりすると殿様口調みたくなってしまうのは、時代劇を観すぎたせいだろう。勧善懲悪好きだから。

『これにて一件落着!』とか『追って申し付ける、裁きを待て』とか。一度でいいからリアルで言ってみたいセリフの一つである。
そんな機会はないだろうが。魔王だし。



†††


「ところで、スレイよ」

『はっ、魔王様、何なりと』
お茶のトレイをテーブルに置き、スレイは恭しく跪いた。

自称スレイブだけあってか、命令すると、やたら嬉しそうなんだよなこいつ……。
喜ばれると何かキモイのであんまり命じたくなくなる俺は間違ってないと思う。


「……魔族の精気を得ても、レベルは上がるのか?」
『勿論です。食べても、睦み合いでも。私は上級魔族の上限666ですので、もう上がりませんが。魔王様は9999まで上昇されますよ』

マジか。
くっそ、カンストまで果てしねえええええええ!!!!

今、やっと36だぞ!
魔法の練習とかしてたら、少しだけ上がったが。効率が悪い。

リオンの舐めれば、ガンガン上がるのに。
早くレベル上げれば、それだけ次元移動の魔法も……。


よし。
魔族同士でもレベル上がるってんなら、試してみるか。

スレイは顔色は悪いが。上品に整った綺麗な顔だし、なんとかいけそうな気がする。
魔王の側近という役割のせいだろうか。汚穢おわいを好む魔族もいる中、いつも清潔で、悪臭とかもしない。
少なくとも、嫌悪感は覚えない、と思う。

女の魔族では、構造的に精気を取り込むことの方が多く、俺がレベル上げをする場合には効率が悪いので、男の魔族が最適だろうと言われた。
配下である魔族とはいえ、女性に向かって、レベル上げたいから精気分けて! とか言える勇気があったら童貞のまま29になってねえし、風俗にも行ってるっつーの!
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