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国王陛下、森に現る。

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ライアン国王陛下、御年15歳。

こいつがあの、ろくでもない王命を下した国王様か!!
年下なのに、俺より背が高かった。この世界の男はどいつもこいつも体格が良すぎる。


『苦しゅうない、近う寄るが良い』
なんか国王に手招きされてるが、シカトする。

『で、陛下。何用ですか?』
ランディは俺と国王の間に入り、淡々と訊いた。

『うむ。火急の用があり、手紙をつけた早馬を飛ばそうとしたら、私も連れてかれてしまったのだ。落馬して瀕死のところを、この、美貌のきみに助けられたのだが……』
頬を染めてこっちを見るのやめてほしいんだが。

痛そうだったから怪我を治してやっただけだ。他意はない。全くない。恩を売るつもりならあったが。
まさか、国王だとはな。

『で、陛下。何用ですか?』
ランディは俺に向けてる国王の意味ありげな視線をガン無視している。


『……名前くらい、教えてくれてもよかろうに……』
眉をハの字にしていたが。
『まあよい。……カルフのダグラスが守衛6名を殺害し、逃走したことを伝えに来たのだ』

『ダグラスが……?』
ランディとバーンの顔が強張った。


『この際、子作りの責務は免除としよう。ランドルフ、バーナード両名にダグラスの捕縛及び処刑を命じる。これを最優先とせよ』
と、国王は勅令を出した。

何だと!?
じゃあ、俺はどうなる!?


◆◇◆


カルフとは、ロルフとは対極にある、悪いオオカミの一族らしい。
ロルフは代々王家の守護をしたり、勇者も多く出ている名門一族だそうだ。


ランディとバーンは、騎士団で開催しているテストで魔力・体力・武力の総て高得点を叩き出したので、すぐにでも勇者になれたのに。
それを断って、村に引きこもってしまったのだとライアンは残念そうに言った。

優秀なんだな。
うん。美しい俺に相応しい。

今、国内で一番強いのがこの2人になるので、王が直々に命令しに来たのか。……本当は、手紙をつけた早馬を出すつもりだったようだが。


『……はあ、こういう厄介な指令、受けたくねえから断ったのに……』
バーンが顔を覆った。
『国王が直接命令下しに来るとか、聞いたことねえぞ』

『今から勇者にクラスチェンジしても良いぞ? 勇者を拝命すれば狩りをせずとも食えるし、モテるぞ』
ライアンはどうしても2人を勇者にしたいようだ。


「二人とも、何故勇者になるのが嫌なんだ?」
この世界では最も名誉のある職らしいのに。

『勇者の鎧は銀色なんだよ……色だけでもぞっとする……』
ランディは肩を震わせている。

ああ……。
というか、そんな理由で勇者になるのを断ったのか……。


『本物の銀ではないのだがな。……銀が嫌なら、別の色でも構わぬが』
「青緑の薄いやつとか?」
スレートブルーの鎧もかっこいいだろう。黒騎士もいいが。

『ふむ、それもかっこよさそうだな』

『ならないからな!?』
ライアンと俺の鎧話に、ランディが突っ込んだ。


ライアンは、お迎えが来るまでここに置いて欲しいと言って。
2人はあからさまに嫌そうな顔をした。


◆◇◆


国王ライアンは、ライオンの獣人だった。


俺にちょっかい出そうとして、ランディとバーンから本気の威嚇をされて、耳としっぽが出たのでわかった。
耳はともかく、しっぽは特徴的だ。

そして、すっかり怯えて涙目である。
おい、ライオンは百獣の王じゃなかったのか……?


『私の唇と心を奪ったのはミヅキのほうなのに……!』
泣かなくても。

何で? という顔で2人から見られたので。

ライアンが落馬して骨折していたことを説明したら。
何で助けてしまったんだ、みたいな顔をされた。

「いや、大怪我してたから、つい……」

『こんなの、放置しておいても良かったのに……』
ランディは本気の目だった。

こんなの呼ばわりである。一応これは、この国の国王ではないのか?


ここの国民は、6歳くらいからこの国では成人とされる15歳までは騎士学校に通うのが義務で。
能力が高いと勇者や騎士になったり、兵士になったりするのもいるそうだ。


当時王子だったライアンは、学校でランディとバーンを見て。その強さに憧れていたらしい。
後ろにひっついて回っては私の騎士になれだの国のために勇者になれだのウザかったので、2人は士官するより村に戻って、狩りをする生活を選んだという。

ああ、それで何か知り合いっぽかったのか。国王が一方的に。


◆◇◆


「……で、討伐に出かけるのか?」

凶悪犯だかを捕まえに。
自分たちはお役御免で。俺を、子作りに巻き込んでおいて?

『いや、その必要は無い』
ランディは目を眇めてライアンを見た。

『命拾いしたな。脱獄したダグラスは、一番に、まず間違いなく国王の命を狙うだろう』


ライアンは震え上がった。
ここに来てなかったら、襲撃されて、命を落としていたかもしれない、と。

しかしそのせいでミズキの身まで危ない、と2人は怒っている。


『陛下でも、防御結界くらいは張れるでしょう。ミヅキを護っていれば、ついでに助けてやらなくもないですが?』
バーンも笑顔でわりと丁寧にひどいことを言っている。


『任せろ。防御結界は得意だ。強度は10。2時間くらいならもつぞ』
得意げなライアンに、ランディは片眉を上げた。

『充分だ。腕を上げたなライアン……と、陛下』
名前で呼んで、言い直した。
つれないことを言っていた割に、親しかったのか?

『ライアンでいいと言うに』
ライアンは頬を染めて、もじもじしている。


……いったい何を見せられているのだろう。俺は。
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