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登山していたら赤龍王のツガイにされました。
花より団子
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「おお……、」
一本だけ、っていうから。ぽつんとあるのかと思ったら。
とんでもなく大きな桜の木だった。
目一杯、花を咲かせた枝を張り出している。
今日が満開。壮観だ。
でも、明後日には全部散ってしまうそうだ。
儚いな。本来桜って、すぐ散るものなんだっけ? 品種改良されたソメイヨシノとかが長持ちするだけで。
「綺麗だな……」
何故だろう。
桜を見ると、胸が詰まるのは。
色々、思い出すのかもしれない。
入学式、小学校の前で家族みんなで写真を撮ったこととか。
翌日、熱を出して寝込んだっけ。懐かしいな。
*****
根の近くは枯れてしまうから、と。
広場で絨毯を敷いている。
そこからでも充分桜が見えるし。絶景だ。
『定番ですが、仙桃のお酒と、仙桃の果汁です……。お茶もご用意しております』
剛麒は飲み物係だった。
「じゃあ、いただきまーす」
アルコールに弱いらしい望ちゃんと俺は桃ジュースで。龍たちは酒で乾杯だ。
剛麒の養い親は、すでに酔っ払っていた。
駄目なおっさんだな。
『これは何だ?』
冬雅さんがサンドイッチを不思議そうに見ている。
「サンドイッチだよ。えーと、パンで具を挟んだ食べ物」
望ちゃんが説明している。
「由来はイギリスのサンドイッチ伯爵がゲームの間、片手で気軽に食べられるようにってパンに肉とかを挟んだことから」
挟むことをサンドというのは日本だけで、英語だとPutだ。
サンドイッチから出来た和製英語だということは、わりと知られていない。
「やっぱりプロなの!?」
何のプロだ。
『ほう、これはいいな。おにぎりもよいが、手に米粒がつくのが唯一の難点である』
陛下、片手にサンドイッチ、片手におにぎりを持っての発言である。
「海苔でも巻けば?」
「朔也、ここは海はないから海苔は……」
ああ、大陸が浮かんでるんだっけ?
「え、アオサはあったぞ。汁物に入ってたし。漉けば出来るじゃん」
川にも生えるもんだし。四万十川とか有名だ。
アオサなら板海苔を作るより、天ぷらにするほうが美味いけど。
あ、卵焼きうまっ。
「プロがいる……!」
だから何の。
『ほうほう、詳しく』
商売人が寄って来る。
ないよりあったほうが嬉しいので。冬雅さんに色々な話をした。
青峰さんは黙々と食べている。
美人なのに、意外と食いしん坊だよな、あの人。
多めに持ってきたチーズケーキやカップケーキ、クッキーは、あっという間に食い尽くされた。
龍の胃袋を舐めていたぜ……。仕込みは一週間、食べるの一瞬、ってな。
まあ、好評で何よりだ。
後は花を愛でるだけである。
*****
ピンク色の花びらが、はらはらと舞っている。
「あー、桜餅食べたい……」
望ちゃんは、花より団子派のようだ。
あっちまで、買いに行けばいいんだろうけど。
材料さえあれば、作れなくはない。
「いいけど、桜餅の葉は決まった桜の葉で、更に塩漬けにしないといけないから今年は無理だな。あの独特の香りはクマリンで、抗菌性があるんだよな」
似た桜はあったから、拾いに行くか。
「ただし、作るのは長命寺だ。関東人として、これだけは譲れねえ」
「やっぱりプロ……」
『俺のツガイが料理人過ぎて時々こわい』
『いいじゃねえか料理上手で』
朱赫と元白が何かこそこそ話している。
『あの、お二人とも、どうかわたしに、お料理を教えてくださいませんか?』
剛麒が声をひそめて。神妙な顔をしている。
「別に、料理とか作る必要はないんじゃないか?」
王妃なわけだし。
俺達がちょっと、凝り性なだけで。
『わたしも、ツガイに手料理を美味しいと言ってもらいたいのです』
おぅ……。
ピュアすぎて、俺には眩しすぎる……。
そうだ。
そこが料理の原点だったはずだ。
どうやら俺は、目的を見失っていたようだ。
*****
「わかった。俺は菓子とパンくらいしか作れないけど。食い物の知識はわりとあるし。協力するよ」
俺は剛麒の肩を叩いた。
「俺も、大したものは作れないけど。……頑張ろうな」
望ちゃんが俺と剛麒の背に手を回して。
『はい、ありがとうございます……!!』
料理クラブ結成である。
『わたしのツガイと、朱赫と元白のツガイの仲がよすぎる……』
『華やかでよろしいじゃありませんか』
青峰はとぼけたことを言ってる。
『陛下、もう諦めて台所新調しましょう』
朱赫、いいこと言った。
『あ、仕入れに行くついでに買って来ましょうか?』
冬雅、あっちへ仕入れに行くんだ。
……何を買うんだろう?
いささか古めかしい雷音陛下の話し言葉に比べて、朱赫や冬雅の言葉がわりと砕けてるのは、地上や異世界に仕入れをするため、足を運ぶことがあるからだそうだ。
修験者みたいな格好の時もあるとか。
あの山に出現する天狗の正体は、あんたらだったのか……。
ここも、地上には市場があって。物々交換で売り買い可能。
何でも揃うけど。危険だから、龍だとばれないようにしなければいけないそうだ。
異世界の場合は、宝石や美術品を売ったりして、換金するそうだ。
空気が毒なので活動時間には限界があるけど。
俺を迎えに行った時は、色々術を使ったり龍玉抜いたりしたんで、疲労が激しかったようだ。
じゃあ実家に荷物とか取りに戻っても大丈夫? と聞いたら。
自分が付き添うなら、と許可が出た。
どこまでも心配性のツガイである。
ちゃんと戻ってくるってば。
一本だけ、っていうから。ぽつんとあるのかと思ったら。
とんでもなく大きな桜の木だった。
目一杯、花を咲かせた枝を張り出している。
今日が満開。壮観だ。
でも、明後日には全部散ってしまうそうだ。
儚いな。本来桜って、すぐ散るものなんだっけ? 品種改良されたソメイヨシノとかが長持ちするだけで。
「綺麗だな……」
何故だろう。
桜を見ると、胸が詰まるのは。
色々、思い出すのかもしれない。
入学式、小学校の前で家族みんなで写真を撮ったこととか。
翌日、熱を出して寝込んだっけ。懐かしいな。
*****
根の近くは枯れてしまうから、と。
広場で絨毯を敷いている。
そこからでも充分桜が見えるし。絶景だ。
『定番ですが、仙桃のお酒と、仙桃の果汁です……。お茶もご用意しております』
剛麒は飲み物係だった。
「じゃあ、いただきまーす」
アルコールに弱いらしい望ちゃんと俺は桃ジュースで。龍たちは酒で乾杯だ。
剛麒の養い親は、すでに酔っ払っていた。
駄目なおっさんだな。
『これは何だ?』
冬雅さんがサンドイッチを不思議そうに見ている。
「サンドイッチだよ。えーと、パンで具を挟んだ食べ物」
望ちゃんが説明している。
「由来はイギリスのサンドイッチ伯爵がゲームの間、片手で気軽に食べられるようにってパンに肉とかを挟んだことから」
挟むことをサンドというのは日本だけで、英語だとPutだ。
サンドイッチから出来た和製英語だということは、わりと知られていない。
「やっぱりプロなの!?」
何のプロだ。
『ほう、これはいいな。おにぎりもよいが、手に米粒がつくのが唯一の難点である』
陛下、片手にサンドイッチ、片手におにぎりを持っての発言である。
「海苔でも巻けば?」
「朔也、ここは海はないから海苔は……」
ああ、大陸が浮かんでるんだっけ?
「え、アオサはあったぞ。汁物に入ってたし。漉けば出来るじゃん」
川にも生えるもんだし。四万十川とか有名だ。
アオサなら板海苔を作るより、天ぷらにするほうが美味いけど。
あ、卵焼きうまっ。
「プロがいる……!」
だから何の。
『ほうほう、詳しく』
商売人が寄って来る。
ないよりあったほうが嬉しいので。冬雅さんに色々な話をした。
青峰さんは黙々と食べている。
美人なのに、意外と食いしん坊だよな、あの人。
多めに持ってきたチーズケーキやカップケーキ、クッキーは、あっという間に食い尽くされた。
龍の胃袋を舐めていたぜ……。仕込みは一週間、食べるの一瞬、ってな。
まあ、好評で何よりだ。
後は花を愛でるだけである。
*****
ピンク色の花びらが、はらはらと舞っている。
「あー、桜餅食べたい……」
望ちゃんは、花より団子派のようだ。
あっちまで、買いに行けばいいんだろうけど。
材料さえあれば、作れなくはない。
「いいけど、桜餅の葉は決まった桜の葉で、更に塩漬けにしないといけないから今年は無理だな。あの独特の香りはクマリンで、抗菌性があるんだよな」
似た桜はあったから、拾いに行くか。
「ただし、作るのは長命寺だ。関東人として、これだけは譲れねえ」
「やっぱりプロ……」
『俺のツガイが料理人過ぎて時々こわい』
『いいじゃねえか料理上手で』
朱赫と元白が何かこそこそ話している。
『あの、お二人とも、どうかわたしに、お料理を教えてくださいませんか?』
剛麒が声をひそめて。神妙な顔をしている。
「別に、料理とか作る必要はないんじゃないか?」
王妃なわけだし。
俺達がちょっと、凝り性なだけで。
『わたしも、ツガイに手料理を美味しいと言ってもらいたいのです』
おぅ……。
ピュアすぎて、俺には眩しすぎる……。
そうだ。
そこが料理の原点だったはずだ。
どうやら俺は、目的を見失っていたようだ。
*****
「わかった。俺は菓子とパンくらいしか作れないけど。食い物の知識はわりとあるし。協力するよ」
俺は剛麒の肩を叩いた。
「俺も、大したものは作れないけど。……頑張ろうな」
望ちゃんが俺と剛麒の背に手を回して。
『はい、ありがとうございます……!!』
料理クラブ結成である。
『わたしのツガイと、朱赫と元白のツガイの仲がよすぎる……』
『華やかでよろしいじゃありませんか』
青峰はとぼけたことを言ってる。
『陛下、もう諦めて台所新調しましょう』
朱赫、いいこと言った。
『あ、仕入れに行くついでに買って来ましょうか?』
冬雅、あっちへ仕入れに行くんだ。
……何を買うんだろう?
いささか古めかしい雷音陛下の話し言葉に比べて、朱赫や冬雅の言葉がわりと砕けてるのは、地上や異世界に仕入れをするため、足を運ぶことがあるからだそうだ。
修験者みたいな格好の時もあるとか。
あの山に出現する天狗の正体は、あんたらだったのか……。
ここも、地上には市場があって。物々交換で売り買い可能。
何でも揃うけど。危険だから、龍だとばれないようにしなければいけないそうだ。
異世界の場合は、宝石や美術品を売ったりして、換金するそうだ。
空気が毒なので活動時間には限界があるけど。
俺を迎えに行った時は、色々術を使ったり龍玉抜いたりしたんで、疲労が激しかったようだ。
じゃあ実家に荷物とか取りに戻っても大丈夫? と聞いたら。
自分が付き添うなら、と許可が出た。
どこまでも心配性のツガイである。
ちゃんと戻ってくるってば。
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