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登山していたら赤龍王のツガイにされました。
龍の結婚
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『鱗を通じて、朔也の様子を見ていたんだよ』
ずっとじゃないけど。
どうしてるかな、と時々俺の様子を見ていたという。
それで、事故に遭ったことをいち早く知ることができて、駆けつけられたのか。
……ん?
俺はあの鱗を、肌身離さず持ってた。
「ってことは。風呂とか色々……」
それって。
ストーカーというやつではないだろうか。
『いや、厠や風呂とかは見てない。誓って見てない』
そう言うなら、信じるけど。
「何だよ。一方的に見てたとかずるくね? 俺も朱赫の顔を見たかったのに」
『俺の鱗を見て、名を呼ばれて。すぐにでも飛んで攫いに行きたかったけど、我慢してた。向こうに優しい家族も居る身だったからね』
だから卒業までは待って、すぐに迎えに行こうと思ってたって。
とても長生きする龍にとって、半年なんて一瞬だ。
でも、もの凄く長く感じたって。
*****
何か昔に色々ごたごたがあって。
今の王族は、親兄弟、親戚が存在しないんだそうだ。
ツガイを得て、初めて家族が出来るから。とても嬉しいんだと言った。
『陛下が望殿を手元から離したがらない理由が、身にしみてわかったよ。愛おしいという気持ちも』
何か、すごく照れるな。
ストレートに感情表現しすぎだろ。
望ちゃんが、龍って一途でとても可愛い生き物だよ、と言ってたな。
そういう生き物なのか。
自分の生命を差し出すくらいだもんな。
これには、胸を打たれる。
灼火、という術で負った火傷は、心から反省していれば綺麗に消えるものなんだそうだ。
嫉妬など、醜い心を持ち続けていると、爛れて悪化する。
まさに神罰みたいな術だ。
……綺麗に治ればいいな。
覚えてないけど、ミスキャンになるくらいの顔だったんだろうし。
あの子、俺が図書室とかで朱赫から貰った鱗を見てたの知ってた。
俺のこと、前から見ていたんだ。
まさか、車道に飛び出すとは思わなかったんだろう。
*****
『着いたよ、世界の果てだ』
朱赫は人型になって、俺の腰を支えた。
この世界は円形のだだっ広い平地に海と、虎人や人間が住む陸地があって、そのほとんどが砂漠だという。
その上空に龍が住む国や、麒麟の住む国がそれぞれ大陸として浮かんでいるらしい。
どんだけ世界広いんだよっていう。
海は、滝みたいに下に落ちて。
その下に、またそれを受ける受け皿みたいのがあって。
海水は中央の大きな柱から吸い上げて、上の陸地へ循環してるとか何とか。
も、毛細管現象の永久機関……?
異世界だしな。
その更に下を亀や象が支えてても驚かねえぞ。何しろ、神様のいる世界だ。
でもって、世界の果てには空にも続くような石柱が立っている。モノリスだー!
迫力あるな。
なんか、ロゼッタ・ストーンみたい。
王族が結婚するときは、この石に名前を刻むのだという。
そして、この世界の神様に結婚を認められると、自動的に名前が刻まれるそうだ。
へえ、不思議だなあ。
あ、陛下と望ちゃんの名前がある。
下に行くほど古いようだ。古代語はさすがに読めない。
*****
『朔也、石に手を当てて』
促されて、手を当てると。
石に、勝手に字が刻まれていく。
夏 朱赫、花畑 朔也と。
『ああ、こういう字なんだ。綺麗な名だね』
「……そういや何で名前聞かなかったんだ?」
青峰に聞かれるまで、俺の名前も知らなかったんだよな。
『名乗りたくなさそうだったから』
変なとこ聡いな。
目が合って、両思いなことは確定したから。
そういう細々したことは後で聞けばいいと思ったらしい。
確かに一目惚れだったけど。
もう少し状況説明とかしろっての。
「名前でからかわれることが多かったんで、あんまり名乗りたくなかったんだ」
でも、今はそうでもない。
ここにはそんなことでからかうような性格の悪い人はいないようだし。
親が俺にくれた、唯一の名だから。
『じゃあ、戻ろうか』
差し出された朱赫の手を取る。
……あれ?
俺の手が、龍の手に。
おお、俺も龍に変化できたんだ!
『可愛いよ。朔也』
と上機嫌な朱赫とは、大人と子供ほど差があるサイズもそうだが。
俺のボディカラーは何と、可愛らしい桜色だったのだ。
それも、ラメっぽいピンクだ。きらきら光ってる。
男がピンクの龍とか! ねえわ!
うう、どうせならもっと渋い色の龍になりたかった……。
何でこんな浮かれた色に。
銀とかいいよな。レアだし。
*****
龍の国に戻ると。
皇宮の庭で、望ちゃんが出迎えてくれていた。
「おかえりー、朱赫、朔也! 綺麗な体色だね!」
優しい表現だ。
俺もそういう心遣いのできる人になりたい……。
銀色とかレアでいいよな、とか嫉妬してごめん。
『おお、 桜龍とは。これはまためでたいな』
知らないおっさんが言った。いや、兄ちゃんか?
麒麟の国の王様で、剛麒の養い親だという。
結婚を祝いに来てくれたらしい。
朱赫とも知り合いなのか?
「朔也ー、雲集まれ~雨降れ~って念じてみてー」
ええっ?
言われた通り、念じてみると。
おお、と歓声が上がった。
花が降ってる。
色とりどりの花びらや、花が一輪そのまま。
雨降れって念じたのに。
雨じゃないのかよ!
*****
「甘い。これ、砂糖菓子みたいだ。美味しいよ!」
食べてるし。
『桜龍が降らせるは、祝いの花である。人が食べれば寿命が延び幸福を招くという縁起物だ。是非とも剛麒たちの式に参加してくれないか』
麒麟の王様に頼まれて。
朱赫を見ると。
いいよって感じでこくりと頷いたので。
「はい。喜んでお祝いさせていただきたく思います」
『ありがたい。感謝する。……さあ、宴をはじめよう』
降りておいで、と促された。
「いてっ」
……朱赫、何で俺の鱗を剥ぐ?
ずっとじゃないけど。
どうしてるかな、と時々俺の様子を見ていたという。
それで、事故に遭ったことをいち早く知ることができて、駆けつけられたのか。
……ん?
俺はあの鱗を、肌身離さず持ってた。
「ってことは。風呂とか色々……」
それって。
ストーカーというやつではないだろうか。
『いや、厠や風呂とかは見てない。誓って見てない』
そう言うなら、信じるけど。
「何だよ。一方的に見てたとかずるくね? 俺も朱赫の顔を見たかったのに」
『俺の鱗を見て、名を呼ばれて。すぐにでも飛んで攫いに行きたかったけど、我慢してた。向こうに優しい家族も居る身だったからね』
だから卒業までは待って、すぐに迎えに行こうと思ってたって。
とても長生きする龍にとって、半年なんて一瞬だ。
でも、もの凄く長く感じたって。
*****
何か昔に色々ごたごたがあって。
今の王族は、親兄弟、親戚が存在しないんだそうだ。
ツガイを得て、初めて家族が出来るから。とても嬉しいんだと言った。
『陛下が望殿を手元から離したがらない理由が、身にしみてわかったよ。愛おしいという気持ちも』
何か、すごく照れるな。
ストレートに感情表現しすぎだろ。
望ちゃんが、龍って一途でとても可愛い生き物だよ、と言ってたな。
そういう生き物なのか。
自分の生命を差し出すくらいだもんな。
これには、胸を打たれる。
灼火、という術で負った火傷は、心から反省していれば綺麗に消えるものなんだそうだ。
嫉妬など、醜い心を持ち続けていると、爛れて悪化する。
まさに神罰みたいな術だ。
……綺麗に治ればいいな。
覚えてないけど、ミスキャンになるくらいの顔だったんだろうし。
あの子、俺が図書室とかで朱赫から貰った鱗を見てたの知ってた。
俺のこと、前から見ていたんだ。
まさか、車道に飛び出すとは思わなかったんだろう。
*****
『着いたよ、世界の果てだ』
朱赫は人型になって、俺の腰を支えた。
この世界は円形のだだっ広い平地に海と、虎人や人間が住む陸地があって、そのほとんどが砂漠だという。
その上空に龍が住む国や、麒麟の住む国がそれぞれ大陸として浮かんでいるらしい。
どんだけ世界広いんだよっていう。
海は、滝みたいに下に落ちて。
その下に、またそれを受ける受け皿みたいのがあって。
海水は中央の大きな柱から吸い上げて、上の陸地へ循環してるとか何とか。
も、毛細管現象の永久機関……?
異世界だしな。
その更に下を亀や象が支えてても驚かねえぞ。何しろ、神様のいる世界だ。
でもって、世界の果てには空にも続くような石柱が立っている。モノリスだー!
迫力あるな。
なんか、ロゼッタ・ストーンみたい。
王族が結婚するときは、この石に名前を刻むのだという。
そして、この世界の神様に結婚を認められると、自動的に名前が刻まれるそうだ。
へえ、不思議だなあ。
あ、陛下と望ちゃんの名前がある。
下に行くほど古いようだ。古代語はさすがに読めない。
*****
『朔也、石に手を当てて』
促されて、手を当てると。
石に、勝手に字が刻まれていく。
夏 朱赫、花畑 朔也と。
『ああ、こういう字なんだ。綺麗な名だね』
「……そういや何で名前聞かなかったんだ?」
青峰に聞かれるまで、俺の名前も知らなかったんだよな。
『名乗りたくなさそうだったから』
変なとこ聡いな。
目が合って、両思いなことは確定したから。
そういう細々したことは後で聞けばいいと思ったらしい。
確かに一目惚れだったけど。
もう少し状況説明とかしろっての。
「名前でからかわれることが多かったんで、あんまり名乗りたくなかったんだ」
でも、今はそうでもない。
ここにはそんなことでからかうような性格の悪い人はいないようだし。
親が俺にくれた、唯一の名だから。
『じゃあ、戻ろうか』
差し出された朱赫の手を取る。
……あれ?
俺の手が、龍の手に。
おお、俺も龍に変化できたんだ!
『可愛いよ。朔也』
と上機嫌な朱赫とは、大人と子供ほど差があるサイズもそうだが。
俺のボディカラーは何と、可愛らしい桜色だったのだ。
それも、ラメっぽいピンクだ。きらきら光ってる。
男がピンクの龍とか! ねえわ!
うう、どうせならもっと渋い色の龍になりたかった……。
何でこんな浮かれた色に。
銀とかいいよな。レアだし。
*****
龍の国に戻ると。
皇宮の庭で、望ちゃんが出迎えてくれていた。
「おかえりー、朱赫、朔也! 綺麗な体色だね!」
優しい表現だ。
俺もそういう心遣いのできる人になりたい……。
銀色とかレアでいいよな、とか嫉妬してごめん。
『おお、 桜龍とは。これはまためでたいな』
知らないおっさんが言った。いや、兄ちゃんか?
麒麟の国の王様で、剛麒の養い親だという。
結婚を祝いに来てくれたらしい。
朱赫とも知り合いなのか?
「朔也ー、雲集まれ~雨降れ~って念じてみてー」
ええっ?
言われた通り、念じてみると。
おお、と歓声が上がった。
花が降ってる。
色とりどりの花びらや、花が一輪そのまま。
雨降れって念じたのに。
雨じゃないのかよ!
*****
「甘い。これ、砂糖菓子みたいだ。美味しいよ!」
食べてるし。
『桜龍が降らせるは、祝いの花である。人が食べれば寿命が延び幸福を招くという縁起物だ。是非とも剛麒たちの式に参加してくれないか』
麒麟の王様に頼まれて。
朱赫を見ると。
いいよって感じでこくりと頷いたので。
「はい。喜んでお祝いさせていただきたく思います」
『ありがたい。感謝する。……さあ、宴をはじめよう』
降りておいで、と促された。
「いてっ」
……朱赫、何で俺の鱗を剥ぐ?
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