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登山していたら赤龍王のツガイにされました。
ここは異なる世界
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どこだ、ここは?
目を覚ましたら、中華風な建物の中にいた。
様式的に、古代中国風だが。
しかし、ふんわりと柔らかい布団の上で寝ていた。
……古代中国なら、布団やマットレスなんか無くて、寝台は固いはずだ。
何で上掛け布団に赤い糸で龍の刺繍がしてあるんだ? 皇帝の部屋には見えないが。
っていうか、キルティングの上掛けとか、時代設定どうなってんだよ。
などと冷静に突っ込む俺は史学科、専門は中国史である。
俺の荷物はどこだ?
今は何時だ?
窓の鎧戸はしっかり閉ざされていて、外が暗いのか明るいのかもわからない。
時計はリュックにカラビナでつけてある。携帯もリュックの中だ。
確か、山登り中に、赤い髪の派手な文官服の男に自殺志願者と間違われて。
誤解は解けたんだけど。
なんか、いい匂いがして。そいつも、俺からいい匂いがするって言って。
ファーストキスを奪われた……。
で、息が出来なくて。
酸素が足りなくなって、気絶したんだと思うが。
ここはどこなんだ?
*****
『是覺醒嗎?』
うぉ、びっくりした。
中国語? 目は覚めたか、って聞かれたんだよな。
見れば、古代中国の女官のような格好をした女性だった。
コスプレにしちゃ、服のクオリティが高すぎるが。
「……你是哪位?」
どちらさま? と聞いてみた。
『我是女官』
おお、通じたぞ。
女官か。
困った顔をしている。
困ってるのは俺なんだが。
あいつ、使用人がいるくらいのお坊ちゃまだったのか?
「主人在哪里?」
ここの主人はどこか、聞いてみる。
彼女は後ろを振り向いて。
『あ、起きたんだ。良かった。……もういいよ、下がりなさい』
赤毛の男は、女官を下がらせた。
男は最初に見た時の派手な文官みたいな格好から、派手な王様みたいな服になっていた。
皮弁冠のような冠をつけて、真っ赤な上衣。襟と袖口は黒で、金の刺繍が入っている。裳……スカート状の下衣は黒。
蔽膝……エプロンみたいなやつには黒地に赤い龍の刺繍。腰には太刀を佩いている。
派手なんだけど。この人にはやたら似合うな。
一般人がこんな派手な衣装着てたら浮きまくりだろう。
「谢谢」
礼を言うと、彼女は、頭を下げて、出て行った。
『あれ、もしかしてここの言葉、わかるの? すごいな!』
「ああ、中国語なら何とか話せる」
っていうか、こいつ中国人だったのか。
日本語上手いな。中国人特有の訛りもないし。
……ん? ここの、ってことは。ここ、日本じゃないのか?
『中国、語?』
不思議そうに首を傾げてる。
え、中国語じゃないのか? なら何で俺の中国語が通じたんだよ。
っていうかここ、どこだよ!?
*****
ははは、ここが異世界だなんて。
そんなバカな。
『名乗るのが遅れたが、俺の名は夏朱赫。赤龍王だよ』
しかも、自分は赤龍王だとか言ってるし。
前世戦士かよ。
昔、そういう前世系の痛いのがいたってのは知ってる。
自分は戦士の生まれ変わりだとか王の生まれ変わりだとか前世は歌姫だったとか。
そんなに現世が辛いからって現実逃避するなよ。
鏡を見ろ、どう見たって先祖代々モンゴロイドだろうが! みたいなやつ。
「はあ、そうすか……」
『そうだよ。きみは、俺のツガイだったんだ。やっと運命の相手に出会えて、嬉しいよ』
そんな電波ゆんゆんなセリフを、輝くような笑顔で言った。
なのに。
畜生、こいつイケメンすぎる……!
言動が痛くても、顔面偏差値が高ければ許されるのだと知った。
女なら、コロッと騙されて貢いでしまうだろう。
この魔性の男め! 男の俺までよろめいちゃったじゃねえか。
ツガイって、番のことか? 鴨とかの夫婦に使われる、あの。
俺もこいつも男だよな?
聞き間違いかもしれない。きっとそうだ。
『我らが皇帝陛下に紹介するから、着替えて?』
笑顔の圧力に負け。
赤い皮弁冠服みたいのに着替えさせられて。
皇宮とやらに、連れて行かれてしまった。
マジで赤い龍になった、朱赫の手に乗せられて。
*****
俺の名は花畑 朔也。24歳、大学生である。
子供の頃、心臓が悪くて。20歳まで生きられるかどうかわからないほどだったが。
高校生の時、一か八かの手術に成功して、健康体になった。
出席日数が足りず、高校は留年することになったが。
希望した大学には浪人することなく合格したし。
入院していた頃からやってみたかった登山にチャレンジするために少しずつ身体を鍛えて、バイトでそのためのお金を貯めたりして。
初心者向けの山から、頑張って、念願の上級者向けの山にやっと登れるようになったところだった。
それが。
キスされたせいで酸欠になって気絶して。
その間に異世界に連れて来られていて。
目が覚めたら、ろくな説明もなしに赤龍王とやらのツガイとして、皇帝に紹介するために皇宮に連れて行かれる、なんて。
何でだよ!? 意味がわかんねえ。
更に人が、目の前で龍になって。
その龍の手のひらに乗せられてしまっては。そんな突拍子もない話も信じざるを得ないわけで。
おいおい、空飛んでるよ、俺!
マジかよ!?
*****
皇宮とやらに着いたようだ。
上から見た感じ、 紫禁城みたいに広かった。
屋根瓦は、オレンジに近い赤茶色。装飾には金がふんだんに使われているようだ。
めっちゃ金がかかってそう、と思ってしまう小市民。
その皇宮の中庭のようなところで、そっと降ろされた。
『おや夏王、正装などして、どうしたのですか? ……その方は?』
黒い髪にエメラルドみたいな綺麗な目をした、これまた綺麗な顔をした兄ちゃんが出てきた。
文官みたいな服を着ている。
『聞いてくれ、青峰。俺にもようやくツガイが見つかった。なんと望殿と同じで、異世界人だったんだ!』
『それはそれは。おめでとうございます。それで陛下に報告に?』
朱赫は笑顔で頷いた。
『お名前は?』
青峰と呼ばれた美青年に問われ。
朱赫は、笑顔のままこちらを見た。
俺に名乗れというのか?
くっ……笑顔で圧力をかけるのはやめろ。
よくお花畑で花が咲くや、などと馬鹿にされるから、名乗りたくなかったが。
「……花畑、朔也です……」
『美しいお名前ですね。私は、緑 青峰と申します』
にっこりと笑って。
朱赫も、嬉しそうに頷いている。
ああ、異世界的には嘲笑の対象ではないのか。
ほっとする。
目を覚ましたら、中華風な建物の中にいた。
様式的に、古代中国風だが。
しかし、ふんわりと柔らかい布団の上で寝ていた。
……古代中国なら、布団やマットレスなんか無くて、寝台は固いはずだ。
何で上掛け布団に赤い糸で龍の刺繍がしてあるんだ? 皇帝の部屋には見えないが。
っていうか、キルティングの上掛けとか、時代設定どうなってんだよ。
などと冷静に突っ込む俺は史学科、専門は中国史である。
俺の荷物はどこだ?
今は何時だ?
窓の鎧戸はしっかり閉ざされていて、外が暗いのか明るいのかもわからない。
時計はリュックにカラビナでつけてある。携帯もリュックの中だ。
確か、山登り中に、赤い髪の派手な文官服の男に自殺志願者と間違われて。
誤解は解けたんだけど。
なんか、いい匂いがして。そいつも、俺からいい匂いがするって言って。
ファーストキスを奪われた……。
で、息が出来なくて。
酸素が足りなくなって、気絶したんだと思うが。
ここはどこなんだ?
*****
『是覺醒嗎?』
うぉ、びっくりした。
中国語? 目は覚めたか、って聞かれたんだよな。
見れば、古代中国の女官のような格好をした女性だった。
コスプレにしちゃ、服のクオリティが高すぎるが。
「……你是哪位?」
どちらさま? と聞いてみた。
『我是女官』
おお、通じたぞ。
女官か。
困った顔をしている。
困ってるのは俺なんだが。
あいつ、使用人がいるくらいのお坊ちゃまだったのか?
「主人在哪里?」
ここの主人はどこか、聞いてみる。
彼女は後ろを振り向いて。
『あ、起きたんだ。良かった。……もういいよ、下がりなさい』
赤毛の男は、女官を下がらせた。
男は最初に見た時の派手な文官みたいな格好から、派手な王様みたいな服になっていた。
皮弁冠のような冠をつけて、真っ赤な上衣。襟と袖口は黒で、金の刺繍が入っている。裳……スカート状の下衣は黒。
蔽膝……エプロンみたいなやつには黒地に赤い龍の刺繍。腰には太刀を佩いている。
派手なんだけど。この人にはやたら似合うな。
一般人がこんな派手な衣装着てたら浮きまくりだろう。
「谢谢」
礼を言うと、彼女は、頭を下げて、出て行った。
『あれ、もしかしてここの言葉、わかるの? すごいな!』
「ああ、中国語なら何とか話せる」
っていうか、こいつ中国人だったのか。
日本語上手いな。中国人特有の訛りもないし。
……ん? ここの、ってことは。ここ、日本じゃないのか?
『中国、語?』
不思議そうに首を傾げてる。
え、中国語じゃないのか? なら何で俺の中国語が通じたんだよ。
っていうかここ、どこだよ!?
*****
ははは、ここが異世界だなんて。
そんなバカな。
『名乗るのが遅れたが、俺の名は夏朱赫。赤龍王だよ』
しかも、自分は赤龍王だとか言ってるし。
前世戦士かよ。
昔、そういう前世系の痛いのがいたってのは知ってる。
自分は戦士の生まれ変わりだとか王の生まれ変わりだとか前世は歌姫だったとか。
そんなに現世が辛いからって現実逃避するなよ。
鏡を見ろ、どう見たって先祖代々モンゴロイドだろうが! みたいなやつ。
「はあ、そうすか……」
『そうだよ。きみは、俺のツガイだったんだ。やっと運命の相手に出会えて、嬉しいよ』
そんな電波ゆんゆんなセリフを、輝くような笑顔で言った。
なのに。
畜生、こいつイケメンすぎる……!
言動が痛くても、顔面偏差値が高ければ許されるのだと知った。
女なら、コロッと騙されて貢いでしまうだろう。
この魔性の男め! 男の俺までよろめいちゃったじゃねえか。
ツガイって、番のことか? 鴨とかの夫婦に使われる、あの。
俺もこいつも男だよな?
聞き間違いかもしれない。きっとそうだ。
『我らが皇帝陛下に紹介するから、着替えて?』
笑顔の圧力に負け。
赤い皮弁冠服みたいのに着替えさせられて。
皇宮とやらに、連れて行かれてしまった。
マジで赤い龍になった、朱赫の手に乗せられて。
*****
俺の名は花畑 朔也。24歳、大学生である。
子供の頃、心臓が悪くて。20歳まで生きられるかどうかわからないほどだったが。
高校生の時、一か八かの手術に成功して、健康体になった。
出席日数が足りず、高校は留年することになったが。
希望した大学には浪人することなく合格したし。
入院していた頃からやってみたかった登山にチャレンジするために少しずつ身体を鍛えて、バイトでそのためのお金を貯めたりして。
初心者向けの山から、頑張って、念願の上級者向けの山にやっと登れるようになったところだった。
それが。
キスされたせいで酸欠になって気絶して。
その間に異世界に連れて来られていて。
目が覚めたら、ろくな説明もなしに赤龍王とやらのツガイとして、皇帝に紹介するために皇宮に連れて行かれる、なんて。
何でだよ!? 意味がわかんねえ。
更に人が、目の前で龍になって。
その龍の手のひらに乗せられてしまっては。そんな突拍子もない話も信じざるを得ないわけで。
おいおい、空飛んでるよ、俺!
マジかよ!?
*****
皇宮とやらに着いたようだ。
上から見た感じ、 紫禁城みたいに広かった。
屋根瓦は、オレンジに近い赤茶色。装飾には金がふんだんに使われているようだ。
めっちゃ金がかかってそう、と思ってしまう小市民。
その皇宮の中庭のようなところで、そっと降ろされた。
『おや夏王、正装などして、どうしたのですか? ……その方は?』
黒い髪にエメラルドみたいな綺麗な目をした、これまた綺麗な顔をした兄ちゃんが出てきた。
文官みたいな服を着ている。
『聞いてくれ、青峰。俺にもようやくツガイが見つかった。なんと望殿と同じで、異世界人だったんだ!』
『それはそれは。おめでとうございます。それで陛下に報告に?』
朱赫は笑顔で頷いた。
『お名前は?』
青峰と呼ばれた美青年に問われ。
朱赫は、笑顔のままこちらを見た。
俺に名乗れというのか?
くっ……笑顔で圧力をかけるのはやめろ。
よくお花畑で花が咲くや、などと馬鹿にされるから、名乗りたくなかったが。
「……花畑、朔也です……」
『美しいお名前ですね。私は、緑 青峰と申します』
にっこりと笑って。
朱赫も、嬉しそうに頷いている。
ああ、異世界的には嘲笑の対象ではないのか。
ほっとする。
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