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黄龍大帝のツガイ

カミナリが落ちる

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……あれ?
何か、ここ、寝室っぽいんだけど。


『そこへ横になるがいい。服をゆるめ、喉を見せるのだ』

なんかおかしいな、とは思ったけど。
まあ治療的なものなんだろう、と納得して。

言われるままにベッドに横になって。
襟を緩め、喉を見せた。

蓮麒れんきはそれを覗き込んで、渋い顔をしている。


*****


『確かにこれは、金色の鱗……真実、皇帝であったか。ううむ、厄介だが。何とかなるか……?』

これ、そんなに厄介なものなのか。
皇帝の鱗の場合、取り除くのは特別難しかったりするのかな?


蓮麒は、服を脱ぎだした。

麒麟にでも変身するのかと思ったら。
そのままベッドの上に乗り上げてきて。何故か俺の服も脱がせようとしてきた。


「え、な、何を、」
『龍の鱗を取り除くには、我が精気を注ぎ込み、所有を上書きし、仕上げに角で削り取るしかない』


精って。
あれだよな。

……精液だよな?

麒麟は基本的にツガイにしか角を見せない?
そんなこと、今言われても困る。


「ええっ、じゃあ、取らなくていい。いいです!」

『邪魔なものを取り除かねば、俺のものに出来ぬではないか。あの山で、見上げられた瞬間、そなたに惚れたのだ』
うっとりと、匂いを嗅いでいる。

いい匂いがするって?

……嘘だろ。
麒麟にも効くのかよ、俺の謎フェロモン!?


何なんだよ、いったい。
何でこんなことになってるんだ。

雷音に抱かれるのが嫌で逃げてきたのに。
結局、他の奴にも狙われるとか。


いくらなんでも、呪われすぎだろ、俺の人生。


*****


「や、……嫌だ、」

蓮麒は俺の首筋に鼻先を押し付けて、くんくんと匂いを嗅いでいる。

『ああ、なんと 馥郁ふくいくたる芳香か……。素晴らしい』

鼻息が当たってる。
ひええ、気持ち悪い……! ぞわぞわする。


『処女でもなかろうに。今更抗うでない。……麒麟のまぐわいは いぞ。望もすぐにこれの虜になろう』
ぶるん、と出したものは。

うええ、長っ!?
馬の仲間だから? 馬の仲間だから、そんななの!?


気持ち悪い。
直視したくもない。

嫌悪感で、吐きそう。


蓮麒は、俺の喉の逆鱗に手を伸ばした。

「や、……触るな、」
逃げようと、身を捩る。


これ・・に触れられたら。

発情してしまう。

嫌でも、身体が勝手に解放を求めてしまうんだ。


『外して欲しいのだろう? 何故拒む?』

確かに、外して欲しかったけど。
こんなのは、嫌だ。

俺は、自由になりたかったんだ。

誰かのものになるんじゃなくて。
だから。


「やだ、やめろ、……誰か……雷音、」
自分で言って、驚いた。


何で俺、雷音に助けを求めてるんだよ。

あいつから、逃げてきたのに。


*****


「ひゃっ!?」
ドガシャーン、と物凄い轟音がして、建物が揺れた。


え、地震?

宙に浮いてる大陸で?
まさか、地上に落ちたりしないよな!?


『ちっ、雷帝のお出ましか……』
蓮麒は舌打ちをすると、急いで衣服を身に着けた。

『まだ 威嚇いかくで済んでいるが……屋敷を破壊されてはたまらん』

俺を担いで、部屋から庭に出て。
そのまま空に飛び上がった。


うわあ。
空に、とんでもなく大きい、金色に輝く龍がいた。

この空飛ぶ大陸をぐるりと巻けそうなほど、長い身体をうねらせて。
金の鱗がキラキラ光って、綺麗だ。


暗雲に、紫や青の雷が走っている。

さっきの凄い音、雷だったのか。
焦げた地面から、ぶすぶすと煙出てるし。


『そら、そなたのツガイ殿だ! とっとと連れて帰ってくれ! 麒麟は争いを好まん!』
蓮麒の声に、龍がこちらを向いた。

『おお、望! 心配したぞ!』

咆哮で、空気がびりびりする。


……今の声。
雷音?

じゃあ、この馬鹿でかい金色の龍が、雷音の龍姿なのか?


*****


人型になって。
すごい勢いでこっちに飛んできた雷音は、蓮麒の腕から俺を取り戻すと。

『望、望。無事で良かった』
ぎゅうぎゅう抱き締められた。


……何でだろ。

この腕は。
嫌だって感じない。


『麒麟に攫われたのか? なら滅ぼす』

なんか恐いこと言ってる。
蓮麒はともかく、剛麒に罪はないよな。

止めようとしてたし。

「え、いや、そういう訳じゃ……」
『わたしの助けを呼んだだろう? 故に来たのだ。鱗を通じ、位置はわかった』


逆鱗って、GPSみたいなものなのか?
俺が助けを求めたの、通じたのか。

名前を呼んだら。
すぐに助けに来てくれた。


「もういいから、。龍の国へ」
『……良いのか?』

朱赫から、何か聞いたのかな。
でも。

「うん。帰ろう?」
雷音の腕に、掴まった。


安堵の溜め息を吐いている蓮麒の姿は、あっという間に見えなくなった。


*****


帰ってから、わざと雷音の逆鱗に触れて。

抱かれて。
改めてわかったことがある。


蓮麒の時に感じたおぞましさを、雷音には感じなかった。

気持ち悪いと思うこともなく、すんなり受け入れられた。

慣れだろうか?
いや、違う。

ツガイというのは、一方通行じゃないんだ。
多少なりとも、惹かれるものがあったんだろう。

大嫌いな、男なのに。
そのハードルをクリアするほどの。


「は、あ、あっ、雷音、」

男の性器なんておぞましいものに内臓を突き上げられてるのに。
こんなに気持ちがいいのは。

ちょっとくらいは、愛があるからじゃないのかな、なんて思えて。


『望……、愛している、』

俺のこと、ずっと見守ってたんだよな。
助けを呼んだら飛んできてくれるとか。凄く嬉しかった。


俺だけの。
美しい、黄金色の龍。


「雷音……、好き、」

雷音は、目を見開いた。

『望……、まさか、逆鱗に触れられたのでは!?』
何だよ、その反応。

「触られてないし。……もう二度と言わない」
 ねて尖らせた唇を塞がれて。


いっぱい、抱き合った。
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