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泉水:まだ覚めぬ夢の中で
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「ひどく汗をかいているね。びっしょりだ」
アッシュに汗で濡れた服を脱がされて。
汗の浮いた肌を、拭かれるのではなく、舐められた。
もう、何度も抱かれた身体だ。
望んでもいないのに、アッシュの愛撫に、勝手に反応してしまう。
「……よく眠れるように、してあげよう」
囁かれて、ベッドに押し倒される。
大きくて体温の高い手は、落ち着かせるためでなく、性的な意思でもって俺の太股を撫で上げている。
服の上からでも見てわかる。
アッシュが反応していることが。
俺を、抱こうとしているんだ。
いつものように。
アッシュの視線から、滴るような色気と、情欲の気配を感じて。
ゾクゾクする。
「いや、やだ……、」
思わず、アッシュの胸板を押してしまう。
「イズミ? 何故、震えているんだい?」
耳たぶを噛むように、囁かれる。
あの、熱を孕んだ瞳で。欲望を剝き出しにした視線で。
俺を見ている。
俺だけを映す、琥珀色の瞳。
「こわがらなくていい。わたしに逆らわなければ、ひどくはしない。もう、わかってるね?」
優しい声で。
……ああ、気付かれてしまった。
俺が、すべてを思い出したことを。
彼から、逃げたことを。
†††
アッシュにはもう、何度も抱かれている。
彼の熱い肌を。
逞しい腕に抱き締められる心地好さを。
彼のものに貫かれ、揺さぶられることによって生じる快楽を。
この身体は記憶している。
力では、アッシュには絶対に敵わないことも、すでにわかっている。
いくら抵抗しても無駄だということも。
ここに連れて来られた時。
最初に逃げることができたのは、俺の涙にアッシュが動揺したからだ。
今は、そんなことで油断してくれないだろう。
……泣き叫んでも、許してくれなかった。
せめて、記憶を失っていた期間の記憶なんて、記憶を取り戻した時点ですべて消えてくれたらよかったのに。
産まれたてのヒナが最初に見たものを親だと認識するように。
俺は、心配そうに自分を見ていたアッシュを、自分の絶対的な保護者だと認識したんだ。
何があっても、この人だけは自分を傷つけない、護ってくれる相手だと。
実際にアッシュは、まるで親のように俺の世話を焼いてくれた。
いや、親よりも献身的だったと思う。
自分のせいだという罪悪感があったとしても。
俺が色々なことを理解できるようになるまでは、仕事で忙しいのに、片時も離れず傍にいてくれた。
朝も夜も、目を開ければいつもアッシュが微笑んでくれた。その笑顔を見て、安心できた。この人の傍にいれば、何があってもこわくないと思えた。
最初にアッシュ、と名を呼んだ時くらいだ。彼が表情を変えたのは。
あれは、嬉し泣きだった。
名前を呼ばれたくらいで嬉しくて泣いてしまうほど、アッシュは俺を愛していた。
記憶を取り戻す前の俺も、アッシュが大好きだった。
純粋に、アッシュだけを慕って。
純粋に、アッシュだけを愛した記憶。
そして、アッシュに愛された記憶が、俺を戸惑わせる。
記憶を失っている間、俺がずっと恐れていたのはこれだったんだ。
心の奥底では、思い出したら、すべてが壊れると理解していたんだろう。
だからずっと、すべてを忘れたままでいたかった。
なのに。
すべて、思い出してしまった。
アッシュに抱かれるなんて、嫌だ。
友人のままでいたかった。
こんなこと、望んでないのに。
記憶を失った俺を、周囲を。
行方不明だと言って誤魔化して、騙して。
ここに閉じ込めていたのに。
どうしてだろう?
そんなアッシュを、心底憎んだりできないのは。
†††
「あぅ、」
慣らすのもそこそこに、挿れられたのに。
抱かれるのに慣れたそこは、大好きなアッシュを受け入れて、喜んでいる。
締め付けて。
離したくない。もっと、それが欲しい、と。
身体だけが、アッシュを求めてる。
心は、そうじゃないのに。
「ん、……く、」
自然に腰が揺れてしまう。
「……ん、いい子だ。気持ち良い? 身体は、ちゃんと、わたしを覚えてるんだね。わたしが、きみを、そういう身体に、したんだよ?」
「ああっ、」
灼熱の塊に、何度も突き上げられて。
「わたしのものだ、イズミ。もう、逃がさないよ……絶対に」
熱い囁き。
痛いくらい、きつく抱き締められる。
アッシュが絶対に逃がさないと決めたのなら、そうなるんだろう。
……もう、逃げられない。
俺は、捕まってしまったんだ。
この、熱い腕の中に。
「ひっ、」
膝の上に乗せられる、あの、串刺しにされるような体位。
最初の、あれ以来、しなかったのに。
「い、痛い。アッシュ、裂けちゃう、」
めりめりと、肉を引き裂いて。喉の奥まで入ってくるみたいな感覚。
痛いし、きつい。
「まだ、対面座位には慣れないようだね。ここは狭いから、しかたないかな……」
アッシュは諦めたように、すぐにやめてくれたが。
「これからは、毎日こうして可愛がってあげようね。今まで出来なかったことも。いろいろ、この身体に教えてあげるからね?」
うっとりとした顔で。
俺の頬を撫でて、言った。
俺が、記憶を思い出したから?
アッシュから逃げたことに対するお仕置きをするつもりなのか?
これから、毎日。
†††
「うう……、」
身体が重くて、起き上がれない。
腰が痛い。というか、お尻がヒリヒリしている。執拗に弄り回された胸も。
ちゃんと薬は塗られているようだが。
腫れていて、ジンジンする。
ここまでひどくされたのは、はじめての時以来だ。
アッシュの激しいセックスは、朝方まで終わらなかった。
気を失っている間に風呂に連れて行ったんだろう。髪もさっぱりしている。
俺の身体を綺麗にして、後始末をして。
アッシュはほとんど寝てない状態だろうに。
俺にはまだ寝ているように言って。
額にキスをすると。
アッシュは王子スマイル全開で、颯爽と仕事に行ってしまったのだった。
何であんなに体力があるんだろう?
あんなにいっぱい出して、腰が抜けたりしないのが凄い。精力どうなってるんだ。
羨ましくなんて、全然ないけど。
「今朝、やたらご機嫌でしたね」
ジャファルが不思議そうに首を傾げていた。
まだ、俺が記憶を取り戻したことには気づいていないようだ。
ご機嫌だった?
……久しぶりに、思う存分発散したせいだろうよ。
今までは一応、子供相手だろうと思って、手加減していたわけだ。
記憶が無くて、まっさらだった。
まだ赤ん坊みたいなものだったのに。
あの時も、俺の頭の中身的にはまだまだ子供だったので、充分鬼畜的所業だが。
しかし、あれだけの精力があって、それをセーブしていたと思えば。
今までは、かなり我慢していたほうなのだろう。
アッシュにしては。
アッシュに汗で濡れた服を脱がされて。
汗の浮いた肌を、拭かれるのではなく、舐められた。
もう、何度も抱かれた身体だ。
望んでもいないのに、アッシュの愛撫に、勝手に反応してしまう。
「……よく眠れるように、してあげよう」
囁かれて、ベッドに押し倒される。
大きくて体温の高い手は、落ち着かせるためでなく、性的な意思でもって俺の太股を撫で上げている。
服の上からでも見てわかる。
アッシュが反応していることが。
俺を、抱こうとしているんだ。
いつものように。
アッシュの視線から、滴るような色気と、情欲の気配を感じて。
ゾクゾクする。
「いや、やだ……、」
思わず、アッシュの胸板を押してしまう。
「イズミ? 何故、震えているんだい?」
耳たぶを噛むように、囁かれる。
あの、熱を孕んだ瞳で。欲望を剝き出しにした視線で。
俺を見ている。
俺だけを映す、琥珀色の瞳。
「こわがらなくていい。わたしに逆らわなければ、ひどくはしない。もう、わかってるね?」
優しい声で。
……ああ、気付かれてしまった。
俺が、すべてを思い出したことを。
彼から、逃げたことを。
†††
アッシュにはもう、何度も抱かれている。
彼の熱い肌を。
逞しい腕に抱き締められる心地好さを。
彼のものに貫かれ、揺さぶられることによって生じる快楽を。
この身体は記憶している。
力では、アッシュには絶対に敵わないことも、すでにわかっている。
いくら抵抗しても無駄だということも。
ここに連れて来られた時。
最初に逃げることができたのは、俺の涙にアッシュが動揺したからだ。
今は、そんなことで油断してくれないだろう。
……泣き叫んでも、許してくれなかった。
せめて、記憶を失っていた期間の記憶なんて、記憶を取り戻した時点ですべて消えてくれたらよかったのに。
産まれたてのヒナが最初に見たものを親だと認識するように。
俺は、心配そうに自分を見ていたアッシュを、自分の絶対的な保護者だと認識したんだ。
何があっても、この人だけは自分を傷つけない、護ってくれる相手だと。
実際にアッシュは、まるで親のように俺の世話を焼いてくれた。
いや、親よりも献身的だったと思う。
自分のせいだという罪悪感があったとしても。
俺が色々なことを理解できるようになるまでは、仕事で忙しいのに、片時も離れず傍にいてくれた。
朝も夜も、目を開ければいつもアッシュが微笑んでくれた。その笑顔を見て、安心できた。この人の傍にいれば、何があってもこわくないと思えた。
最初にアッシュ、と名を呼んだ時くらいだ。彼が表情を変えたのは。
あれは、嬉し泣きだった。
名前を呼ばれたくらいで嬉しくて泣いてしまうほど、アッシュは俺を愛していた。
記憶を取り戻す前の俺も、アッシュが大好きだった。
純粋に、アッシュだけを慕って。
純粋に、アッシュだけを愛した記憶。
そして、アッシュに愛された記憶が、俺を戸惑わせる。
記憶を失っている間、俺がずっと恐れていたのはこれだったんだ。
心の奥底では、思い出したら、すべてが壊れると理解していたんだろう。
だからずっと、すべてを忘れたままでいたかった。
なのに。
すべて、思い出してしまった。
アッシュに抱かれるなんて、嫌だ。
友人のままでいたかった。
こんなこと、望んでないのに。
記憶を失った俺を、周囲を。
行方不明だと言って誤魔化して、騙して。
ここに閉じ込めていたのに。
どうしてだろう?
そんなアッシュを、心底憎んだりできないのは。
†††
「あぅ、」
慣らすのもそこそこに、挿れられたのに。
抱かれるのに慣れたそこは、大好きなアッシュを受け入れて、喜んでいる。
締め付けて。
離したくない。もっと、それが欲しい、と。
身体だけが、アッシュを求めてる。
心は、そうじゃないのに。
「ん、……く、」
自然に腰が揺れてしまう。
「……ん、いい子だ。気持ち良い? 身体は、ちゃんと、わたしを覚えてるんだね。わたしが、きみを、そういう身体に、したんだよ?」
「ああっ、」
灼熱の塊に、何度も突き上げられて。
「わたしのものだ、イズミ。もう、逃がさないよ……絶対に」
熱い囁き。
痛いくらい、きつく抱き締められる。
アッシュが絶対に逃がさないと決めたのなら、そうなるんだろう。
……もう、逃げられない。
俺は、捕まってしまったんだ。
この、熱い腕の中に。
「ひっ、」
膝の上に乗せられる、あの、串刺しにされるような体位。
最初の、あれ以来、しなかったのに。
「い、痛い。アッシュ、裂けちゃう、」
めりめりと、肉を引き裂いて。喉の奥まで入ってくるみたいな感覚。
痛いし、きつい。
「まだ、対面座位には慣れないようだね。ここは狭いから、しかたないかな……」
アッシュは諦めたように、すぐにやめてくれたが。
「これからは、毎日こうして可愛がってあげようね。今まで出来なかったことも。いろいろ、この身体に教えてあげるからね?」
うっとりとした顔で。
俺の頬を撫でて、言った。
俺が、記憶を思い出したから?
アッシュから逃げたことに対するお仕置きをするつもりなのか?
これから、毎日。
†††
「うう……、」
身体が重くて、起き上がれない。
腰が痛い。というか、お尻がヒリヒリしている。執拗に弄り回された胸も。
ちゃんと薬は塗られているようだが。
腫れていて、ジンジンする。
ここまでひどくされたのは、はじめての時以来だ。
アッシュの激しいセックスは、朝方まで終わらなかった。
気を失っている間に風呂に連れて行ったんだろう。髪もさっぱりしている。
俺の身体を綺麗にして、後始末をして。
アッシュはほとんど寝てない状態だろうに。
俺にはまだ寝ているように言って。
額にキスをすると。
アッシュは王子スマイル全開で、颯爽と仕事に行ってしまったのだった。
何であんなに体力があるんだろう?
あんなにいっぱい出して、腰が抜けたりしないのが凄い。精力どうなってるんだ。
羨ましくなんて、全然ないけど。
「今朝、やたらご機嫌でしたね」
ジャファルが不思議そうに首を傾げていた。
まだ、俺が記憶を取り戻したことには気づいていないようだ。
ご機嫌だった?
……久しぶりに、思う存分発散したせいだろうよ。
今までは一応、子供相手だろうと思って、手加減していたわけだ。
記憶が無くて、まっさらだった。
まだ赤ん坊みたいなものだったのに。
あの時も、俺の頭の中身的にはまだまだ子供だったので、充分鬼畜的所業だが。
しかし、あれだけの精力があって、それをセーブしていたと思えば。
今までは、かなり我慢していたほうなのだろう。
アッシュにしては。
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