16 / 19
レティシアにて
イニス:陵辱と救済者
しおりを挟む
……何が起こったんだろう。
ぐらぐら揺れている。
あちこちから、叫び声が聞こえる。
領主の男は、娼館での常連だった。
僕を、初めて犯した男。僕に何度も孕めと言った男。
それが、どうして。
『かわいそうに……あの悪魔に捕らえられていたのだね。こわかっただろうに……私の愛しいイニス』
大きな手によって抱き締められ、頬ずりされる。
男は、馬に乗っていて。
僕は男に、人形みたいに片手で掴まれてる状態だった。
後ろから、騎馬隊が追いかけてきている。
「イザヤに逆らったら、殺されちゃうんでしょ? 何で……」
こんな馬鹿なことをしたのか、とは言えなかった。
馬が走ってるため、舌を噛みそうになった。
『おお、言葉を覚えたのか。しかも、私を心配してくれるとは……何という優しい子だ。やはりきみは、本物の天使なのだね』
……天使?
男は言った。
『あの”天使の館”できみを見たときから、私はきみを愛してしまったのだ』
◆◇◆
天使の館。
ぞっとした。
あの娼館は、そんな名前だったのか。おぞましい。
男でも女でもない子供を作って。
それを天使と呼ばせて、客を取らせていたのか。
『私以外の男に抱かれるなんて、許せなくて。あそこから救い出す機会を狙っていたのに。……あの悪魔に、先を越されてしまった』
男の目が、狂気ともいえるような怒りに光っていた。
『悪魔め。……それだけでは飽き足らず、私の弟を、惨殺するとは……』
手に、力が込められる。
肋骨が、みしりと音を立てた。
「い……っ、」
『ああ、すまなかった』
手の力が緩んだ。
弟……って。
まさか。盗賊団の男?
レモン爆弾で、原形をとどめない酷い姿で死んだっていう?
『今度こそ、私の子を孕んでもらうよ』
男の声は、熱っぽかった。
まるで、恋をしているように。
……怖気がした。
◆◇◆
領主の屋敷の中だろうか。
中を、めちゃくちゃに走っていたような気がする。
ここは地下室のようだ。
鉄で出来たような厚い扉。上から、かすかに怒号が聞こえるようだけど。
『……私はあの悪魔に殺されるだろう。しかし、その前に、きみを抱く』
「!?」
服を、力まかせに引き裂かれる。
『さあ、孕んでおくれ。私の子を』
ズボンも、下着ごと剥かれた。
首輪も外そうとしたけど。これはどうにもならないと、すぐに諦めた。
『あの悪魔でも、きみの子なら、殺さないだろう。きみを傷付けるおそれがあるからか、チャンスはあったのに、一切攻撃をしてこなかったくらいだからね。……だから、安心して身篭っていいんだよ?』
男の声は、あくまでも優しかった。
だからこそ、こわかった。
こいつは本気で、僕を孕ませようとしてる。
犯される。
……いやだ。
気持ち悪い。
嫌悪感で、吐きそうだ。
身体が、震えているのがわかる。
「や、」
お尻に太い指を突っ込まれた。
朝方まで、イザヤに抱かれていたから。
まだ。
『やわらかい。これならすぐに入れても大丈夫そうだ……』
男はうっとりと目を細めていた。
「無理、あんなおっきいの、無理、」
男の指は、そこを拡げるようにうごめいている。
男のものは、太く、大きかった。
ダミアンに慣らされたのに。痛かったのを覚えている。
『ああ、私のこれをちゃんと覚えてくれていたのだね。……そう、きみの大好きな、おっきいのを、あげるよ』
先走りでべとべとなものをあてがわれて。
「いやあっ、入れちゃ、やだぁ、」
泣き叫んでも。男はきかない。
目の焦点が合っていない。
こわい。
……助けて。イザヤ。
『……孕め。私の子を孕むんだ、イニス』
「ひ……っ、」
ぐっ、と突きつけられる。
◆◇◆
『孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕めっ!』
何度も腰を叩きつけられる。
「あぐ……っ、ぐ、……くぁ、」
胃の中身を、全部吐き出したんじゃないかと思う。
喉が、焼けるように痛い。
もう、胃液も出ないのに、吐き気がおさまらない。
涙や鼻水、吐瀉物で顔がぐしゃぐしゃだというのに、男は萎えない。
男の精液のにおいと、饐えたにおい。
腰を叩きつけられて、ぐらぐら揺らされて。
更に吐き気がもよおされる。
気持ち悪い。
そうか。
僕はずっと、こんな気持ち悪いことを、されていたんだった。
心を殺して。
何も考えないようにしていた。
そうするしかなかったから。
……イザヤに抱かれてるときは、こうじゃなかった。
心を殺さなくても良かった。
そうか。
僕は、もう、とっくに。
◆◇◆
『孕めっ、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、まだ、孕まないのか!』
苛立ったように男が腰を叩き付けるたびに、ぐちゃぐちゃ耳障りな音がする。
中に、いっぱい出された。
焼けるように痛かったお尻の感覚は、もう無い。
間違いなく、切れてるだろう。
……孕むわけ、ないじゃないか。
愛し合う2人の間にしか、子供は生まれないんだろ?
おまえなんか、好きじゃない。
一方的に気持ちを押し付けてくるだけの、ただの、少年趣味のヘンタイなんか。
大っ嫌いだ。
『孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め!』
ああ、うるさい。
心底気持ち悪い男だ。
僕に女神のご加護があったとしても、おまえの子なんか、絶対に孕まない。死んでも無理だ。
『孕、ごぼっ』
ごぼ?
男の動きが止まった。
「ひっ、」
中に、大量の精液が叩きつけられた。
「うう……、」
気持ち悪い。
泣きたくても、もう、涙も何も出やしない。
ずるり、と大きなものが引き抜かれていく。
べちゃ、と何かが落ちた音がして。
続いて、巨体が後ろで倒れた音が響いた。
◆◇◆
……イザヤ。
血で汚れた長刀を手にして。イザヤは完全に無表情で、立っていた。
白い軍服が、鮮血で、紅く染まっている。
美しい顔にも。
全身に返り血を浴びた、凄惨な状態なのに。
思わず、見惚れてしまうほど。
あまりに美しい、その姿。
イザヤは、僕の方へ手を差し出したけど。
吐瀉物や、涙や鼻水でぐちゃぐちゃな、みっともない自分の顔を見られたくなくて、顔を背けた。
『すまない。いやかもしれないけど……来て?』
マントで、身体を包まれる。
イザヤのマントが、汚れてしまう。
いやだと首を横に振るけど。抱き上げられて。
顎から上が消失したあの男の死体から、血が噴き出しているのが見えた。
さっきの音は、これだったのかと理解した。
ぐらぐら揺れている。
あちこちから、叫び声が聞こえる。
領主の男は、娼館での常連だった。
僕を、初めて犯した男。僕に何度も孕めと言った男。
それが、どうして。
『かわいそうに……あの悪魔に捕らえられていたのだね。こわかっただろうに……私の愛しいイニス』
大きな手によって抱き締められ、頬ずりされる。
男は、馬に乗っていて。
僕は男に、人形みたいに片手で掴まれてる状態だった。
後ろから、騎馬隊が追いかけてきている。
「イザヤに逆らったら、殺されちゃうんでしょ? 何で……」
こんな馬鹿なことをしたのか、とは言えなかった。
馬が走ってるため、舌を噛みそうになった。
『おお、言葉を覚えたのか。しかも、私を心配してくれるとは……何という優しい子だ。やはりきみは、本物の天使なのだね』
……天使?
男は言った。
『あの”天使の館”できみを見たときから、私はきみを愛してしまったのだ』
◆◇◆
天使の館。
ぞっとした。
あの娼館は、そんな名前だったのか。おぞましい。
男でも女でもない子供を作って。
それを天使と呼ばせて、客を取らせていたのか。
『私以外の男に抱かれるなんて、許せなくて。あそこから救い出す機会を狙っていたのに。……あの悪魔に、先を越されてしまった』
男の目が、狂気ともいえるような怒りに光っていた。
『悪魔め。……それだけでは飽き足らず、私の弟を、惨殺するとは……』
手に、力が込められる。
肋骨が、みしりと音を立てた。
「い……っ、」
『ああ、すまなかった』
手の力が緩んだ。
弟……って。
まさか。盗賊団の男?
レモン爆弾で、原形をとどめない酷い姿で死んだっていう?
『今度こそ、私の子を孕んでもらうよ』
男の声は、熱っぽかった。
まるで、恋をしているように。
……怖気がした。
◆◇◆
領主の屋敷の中だろうか。
中を、めちゃくちゃに走っていたような気がする。
ここは地下室のようだ。
鉄で出来たような厚い扉。上から、かすかに怒号が聞こえるようだけど。
『……私はあの悪魔に殺されるだろう。しかし、その前に、きみを抱く』
「!?」
服を、力まかせに引き裂かれる。
『さあ、孕んでおくれ。私の子を』
ズボンも、下着ごと剥かれた。
首輪も外そうとしたけど。これはどうにもならないと、すぐに諦めた。
『あの悪魔でも、きみの子なら、殺さないだろう。きみを傷付けるおそれがあるからか、チャンスはあったのに、一切攻撃をしてこなかったくらいだからね。……だから、安心して身篭っていいんだよ?』
男の声は、あくまでも優しかった。
だからこそ、こわかった。
こいつは本気で、僕を孕ませようとしてる。
犯される。
……いやだ。
気持ち悪い。
嫌悪感で、吐きそうだ。
身体が、震えているのがわかる。
「や、」
お尻に太い指を突っ込まれた。
朝方まで、イザヤに抱かれていたから。
まだ。
『やわらかい。これならすぐに入れても大丈夫そうだ……』
男はうっとりと目を細めていた。
「無理、あんなおっきいの、無理、」
男の指は、そこを拡げるようにうごめいている。
男のものは、太く、大きかった。
ダミアンに慣らされたのに。痛かったのを覚えている。
『ああ、私のこれをちゃんと覚えてくれていたのだね。……そう、きみの大好きな、おっきいのを、あげるよ』
先走りでべとべとなものをあてがわれて。
「いやあっ、入れちゃ、やだぁ、」
泣き叫んでも。男はきかない。
目の焦点が合っていない。
こわい。
……助けて。イザヤ。
『……孕め。私の子を孕むんだ、イニス』
「ひ……っ、」
ぐっ、と突きつけられる。
◆◇◆
『孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕めっ!』
何度も腰を叩きつけられる。
「あぐ……っ、ぐ、……くぁ、」
胃の中身を、全部吐き出したんじゃないかと思う。
喉が、焼けるように痛い。
もう、胃液も出ないのに、吐き気がおさまらない。
涙や鼻水、吐瀉物で顔がぐしゃぐしゃだというのに、男は萎えない。
男の精液のにおいと、饐えたにおい。
腰を叩きつけられて、ぐらぐら揺らされて。
更に吐き気がもよおされる。
気持ち悪い。
そうか。
僕はずっと、こんな気持ち悪いことを、されていたんだった。
心を殺して。
何も考えないようにしていた。
そうするしかなかったから。
……イザヤに抱かれてるときは、こうじゃなかった。
心を殺さなくても良かった。
そうか。
僕は、もう、とっくに。
◆◇◆
『孕めっ、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、まだ、孕まないのか!』
苛立ったように男が腰を叩き付けるたびに、ぐちゃぐちゃ耳障りな音がする。
中に、いっぱい出された。
焼けるように痛かったお尻の感覚は、もう無い。
間違いなく、切れてるだろう。
……孕むわけ、ないじゃないか。
愛し合う2人の間にしか、子供は生まれないんだろ?
おまえなんか、好きじゃない。
一方的に気持ちを押し付けてくるだけの、ただの、少年趣味のヘンタイなんか。
大っ嫌いだ。
『孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め、孕め!』
ああ、うるさい。
心底気持ち悪い男だ。
僕に女神のご加護があったとしても、おまえの子なんか、絶対に孕まない。死んでも無理だ。
『孕、ごぼっ』
ごぼ?
男の動きが止まった。
「ひっ、」
中に、大量の精液が叩きつけられた。
「うう……、」
気持ち悪い。
泣きたくても、もう、涙も何も出やしない。
ずるり、と大きなものが引き抜かれていく。
べちゃ、と何かが落ちた音がして。
続いて、巨体が後ろで倒れた音が響いた。
◆◇◆
……イザヤ。
血で汚れた長刀を手にして。イザヤは完全に無表情で、立っていた。
白い軍服が、鮮血で、紅く染まっている。
美しい顔にも。
全身に返り血を浴びた、凄惨な状態なのに。
思わず、見惚れてしまうほど。
あまりに美しい、その姿。
イザヤは、僕の方へ手を差し出したけど。
吐瀉物や、涙や鼻水でぐちゃぐちゃな、みっともない自分の顔を見られたくなくて、顔を背けた。
『すまない。いやかもしれないけど……来て?』
マントで、身体を包まれる。
イザヤのマントが、汚れてしまう。
いやだと首を横に振るけど。抱き上げられて。
顎から上が消失したあの男の死体から、血が噴き出しているのが見えた。
さっきの音は、これだったのかと理解した。
0
お気に入りに追加
165
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる