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獅子の王の寵愛
王様の養い子
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アサドは裸のまま起き上がって、ベッドから降りた。
ベルを鳴らすと、すぐにアーキルという名前のお兄さんが来て。
アサドに服を着せている。あれは呼び鈴だったんだ。
裸なのに、堂々としてるなあ。
立派な身体だからかな?
どこから見ても、完璧って感じ。
ぼくは恥ずかしくて、あんな風に服を着せてもらうのは無理だ。
あっという間に立派な格好になった。
金色の刺繍をしてある、白いひらひらした服で、王冠を被ってる。王様みたいだ。
『どうだ?』
ぼくの前で、得意そうにくるりと回ってみせた。
「すごくかっこいい」
『そうか』
嬉しそうににっこり笑って。
頭を撫でられる。
アサドはかっこよくて優しくて、素敵なひとだなあ。
†††
何となく、偉いんだろうなって思ってたけど。
アサドは、この国の王様なんだって。やっぱりすごく偉かったんだ。
そして、ぼくは王様の養い子、ということになっていた。
お父さんとは、ちょっと違うらしいんだけど。
どういうことかな?
ラースという名前の先生を紹介された。
礼儀作法とか、国のこととかを教えてくれる先生らしい。
『ラースと申します。どうぞよろしくお願いします』
優雅に手を合わせ、頭を下げた。
黒くて長い髪を結い上げて。裾の長い着物を着た、綺麗なお兄さんだ。
肌の色は、ここの人たちより薄くて、目は薄い茶色。
何となく、中華風だなあ、って言葉が頭に浮かんだけど。
中華って、なんだっけ?
「よろしくお願いします」
ぼくもラース先生がしたように礼をしたら。
『これは、使用人が主にする礼なのです。主は鷹揚に頷いてみせるだけで良いのですよ』
困った顔をされてしまった。
「ええと、教えてもらうのに、そんな横柄な態度でいいんですか?」
『ええ。貴方はこの国で二番目の立場になるので、誰にも媚び諂 う必要はございません』
えっ、この国で二番目!?
王様の養い子って、そんな偉い立場なの!?
ぼく、ただアサドに拾われただけの。
名前以外、身元も何もわからない子供なのに。
それでいいの?
ラース先生には、美しい歩き方とか、座り方とか。
優雅に見える所作とかも教わるようだ。
王様の養い子って、貴族みたいな作法を覚える必要があるらしい。
†††
休憩という名の、美しいお茶の飲み方講座を挟んで。
次に、この国の歴史を教わった。
川から流れてきた一族がここに王国を築き、ゲヘトと名付けた。
川の恵みで国は発展し、大きくなり、国土はこの世界最大の規模になった。
竜巻で飛ばされてきた一族もあるそうだ。
その国とは今は友好国だって。
ゲヘトの一族がここに来てから今までの間、たくさんの争いがあったという。
それは水源を巡った争いだったり、内戦だったり。
一族はとても強く、負け知らずだったけど。
内戦の時は、三分の一くらいの人が死んだらしい。
波乱万丈だ。
ラース先生は話が上手くて、つい聞き入ってしまう。
『感心していただけるのはありがたいですが、お口は閉じてくださいね』
ぽかんと口を開けて聞いてた。
慌てて閉じる。
『そんな、噛み締めなくてもよろしいのですよ、』
ラース先生は、くすくすと笑っている。
32歳だっていうけど、もっと若く見えるし、可愛らしいと思う。
†††
ゲヘトの王は、代々善政を布いていて。国民から慕われているという。
ラース先生は親のいない子だったけど。施設で保護されて教育を受けて、先生になって。
今では王の養い子の教育を任されるようにまでなれたのが嬉しくて、前王と現王に感謝しきれないほど感謝していると言った。
身分で職業差別されないのは、とても珍しいことなんだって。
現王……アサドは国民にとって素晴らしい王様だけど。
他の国からは、残忍な王だと思われてるらしい。
攻め込んできた部族は、女の人や子供がいても、全員処刑してしまうから。
でもそれは、過去に憐れに思って引き取った子供に養い親が殺された事件が多くあったからだって。
どんな小さな子供でも、親の恨みは忘れない。だから。
どんなに無害に見えたとしても、反逆の元になりそうな芽は摘み取っておくんだって。
「でも、それって攻め込んでくる他の国が悪いんじゃないの? 逆恨みじゃない?」
『水の無い国は、他国から水を買わないといけないのですが、貧しい部族では満足に水を買うこともできないのです』
ラース先生は、細い眉をひそめた。
別に高い金で水を売ってるわけじゃないのに、仲介の業者が上乗せして、高額な金を要求するみたいだ。
でも、国々を渡り歩く仲介の業者がいないと、遠くの部族まで水は回らない。
ボランティアでは食べていけない。生きていくには、利益を得ないと。
「そうか。手間賃か。運ぶのが大変なら、仕方ないのかな」
『悲しいことです……』
みんな、色々な事情を抱えて生きてきてるんだな。
でも、隣のペトラ国で、海水を真水に換える工場を発明して。
試運転して、成功したという。
その機械が世界に広まれば、水に困らなくなりそうなんだって。
ゲヘトとペトラは友好国なので、工場に出資もしてるそうだ。
この国は、充分水に恵まれてるのに。
他の国のことも考えてるんだ。えらいなあ。
ベルを鳴らすと、すぐにアーキルという名前のお兄さんが来て。
アサドに服を着せている。あれは呼び鈴だったんだ。
裸なのに、堂々としてるなあ。
立派な身体だからかな?
どこから見ても、完璧って感じ。
ぼくは恥ずかしくて、あんな風に服を着せてもらうのは無理だ。
あっという間に立派な格好になった。
金色の刺繍をしてある、白いひらひらした服で、王冠を被ってる。王様みたいだ。
『どうだ?』
ぼくの前で、得意そうにくるりと回ってみせた。
「すごくかっこいい」
『そうか』
嬉しそうににっこり笑って。
頭を撫でられる。
アサドはかっこよくて優しくて、素敵なひとだなあ。
†††
何となく、偉いんだろうなって思ってたけど。
アサドは、この国の王様なんだって。やっぱりすごく偉かったんだ。
そして、ぼくは王様の養い子、ということになっていた。
お父さんとは、ちょっと違うらしいんだけど。
どういうことかな?
ラースという名前の先生を紹介された。
礼儀作法とか、国のこととかを教えてくれる先生らしい。
『ラースと申します。どうぞよろしくお願いします』
優雅に手を合わせ、頭を下げた。
黒くて長い髪を結い上げて。裾の長い着物を着た、綺麗なお兄さんだ。
肌の色は、ここの人たちより薄くて、目は薄い茶色。
何となく、中華風だなあ、って言葉が頭に浮かんだけど。
中華って、なんだっけ?
「よろしくお願いします」
ぼくもラース先生がしたように礼をしたら。
『これは、使用人が主にする礼なのです。主は鷹揚に頷いてみせるだけで良いのですよ』
困った顔をされてしまった。
「ええと、教えてもらうのに、そんな横柄な態度でいいんですか?」
『ええ。貴方はこの国で二番目の立場になるので、誰にも媚び諂 う必要はございません』
えっ、この国で二番目!?
王様の養い子って、そんな偉い立場なの!?
ぼく、ただアサドに拾われただけの。
名前以外、身元も何もわからない子供なのに。
それでいいの?
ラース先生には、美しい歩き方とか、座り方とか。
優雅に見える所作とかも教わるようだ。
王様の養い子って、貴族みたいな作法を覚える必要があるらしい。
†††
休憩という名の、美しいお茶の飲み方講座を挟んで。
次に、この国の歴史を教わった。
川から流れてきた一族がここに王国を築き、ゲヘトと名付けた。
川の恵みで国は発展し、大きくなり、国土はこの世界最大の規模になった。
竜巻で飛ばされてきた一族もあるそうだ。
その国とは今は友好国だって。
ゲヘトの一族がここに来てから今までの間、たくさんの争いがあったという。
それは水源を巡った争いだったり、内戦だったり。
一族はとても強く、負け知らずだったけど。
内戦の時は、三分の一くらいの人が死んだらしい。
波乱万丈だ。
ラース先生は話が上手くて、つい聞き入ってしまう。
『感心していただけるのはありがたいですが、お口は閉じてくださいね』
ぽかんと口を開けて聞いてた。
慌てて閉じる。
『そんな、噛み締めなくてもよろしいのですよ、』
ラース先生は、くすくすと笑っている。
32歳だっていうけど、もっと若く見えるし、可愛らしいと思う。
†††
ゲヘトの王は、代々善政を布いていて。国民から慕われているという。
ラース先生は親のいない子だったけど。施設で保護されて教育を受けて、先生になって。
今では王の養い子の教育を任されるようにまでなれたのが嬉しくて、前王と現王に感謝しきれないほど感謝していると言った。
身分で職業差別されないのは、とても珍しいことなんだって。
現王……アサドは国民にとって素晴らしい王様だけど。
他の国からは、残忍な王だと思われてるらしい。
攻め込んできた部族は、女の人や子供がいても、全員処刑してしまうから。
でもそれは、過去に憐れに思って引き取った子供に養い親が殺された事件が多くあったからだって。
どんな小さな子供でも、親の恨みは忘れない。だから。
どんなに無害に見えたとしても、反逆の元になりそうな芽は摘み取っておくんだって。
「でも、それって攻め込んでくる他の国が悪いんじゃないの? 逆恨みじゃない?」
『水の無い国は、他国から水を買わないといけないのですが、貧しい部族では満足に水を買うこともできないのです』
ラース先生は、細い眉をひそめた。
別に高い金で水を売ってるわけじゃないのに、仲介の業者が上乗せして、高額な金を要求するみたいだ。
でも、国々を渡り歩く仲介の業者がいないと、遠くの部族まで水は回らない。
ボランティアでは食べていけない。生きていくには、利益を得ないと。
「そうか。手間賃か。運ぶのが大変なら、仕方ないのかな」
『悲しいことです……』
みんな、色々な事情を抱えて生きてきてるんだな。
でも、隣のペトラ国で、海水を真水に換える工場を発明して。
試運転して、成功したという。
その機械が世界に広まれば、水に困らなくなりそうなんだって。
ゲヘトとペトラは友好国なので、工場に出資もしてるそうだ。
この国は、充分水に恵まれてるのに。
他の国のことも考えてるんだ。えらいなあ。
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