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再び、イスナーン国へ
いちゃいちゃタイム
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「っていうか、食べた後すぐ動くと脇腹痛くならない?」
なので俺はしばらく動かない。
「ふふ、何故だろうな?」
アーディルはご機嫌な様子で俺の膝を枕にして寝っ転がってるけど。
膝枕、気に入ったの?
「なんか食べてすぐ動くと肝臓に溜まってる血をいっぱい使うから、ギュってなって痛むらしいよ」
「そうなのか。ミズキは博識だな」
本気で感心されてしまった。
バラエティー番組で得た、ムダ知識だけどね……。
「お妃さま、お茶をどうぞ」
「ありがと」
セーレムはずっと、俺のことを神様の使いじゃなく、アーディルの妃として扱ってくれてるので、なんか嬉しい。
渡されたのは、紅茶にカットしたフルーツを入れたフルーツティーだ。洒落てるな。
やっぱり、ガラスの食器の方が見栄えもいい。
「この美しい食器もそうですが。”レイゾウコ”に食料がいっぱい入ってて、何を作ろうか迷っちゃいました」
セーレム、嬉しそうだ。
今まで料理は趣味で嗜んでいたけど。
王宮には料理人がいるし。この旅の間は思いっきり腕を振るう機会が出来て嬉しい、と言って笑った。
「あ、これ美味しい」
ミントも入ってて後味スッキリ。食後にちょうどいいな。
「どれ、」
アーディルが自分の口を指差した。
まさか、口移しで寄越せ……とか言っちゃう!?
人前だよ!?
セーレムは気を利かせたのか。
おやつ作りに行ってきます、と足早に立ち去った。
それ、12歳の子がする気配りじゃないよ!?
†††
「ん、……もう無いよ?」
空になったコップを揺らすと。
残った氷がカラン、と涼し気な音を立てた。
もっともっと、とねだられて。
親鳥みたいに少しずつ口移しで飲ませてたら。
わりと大きめのコップだったのに、もう紅茶が無くなっちゃったじゃないか。
俺、あんまり飲んでないのに!
口移しなのに、エロい雰囲気とかなくて。
腹ペコひな鳥に必死に餌を食べさせる親鳥の気分だったよ!
「ん? まだ果実があるではないか」
アーディルは俺の手にあるコップに視線をやった。
「……もー、起きて自分で食べたら? それに、ちゃんとセーレムが淹れてくれた、アーディルの分のお茶があるだろ」
とか文句を言いつつ、果実を口に含むと。
ぐいっ、と顔を引き寄せられてしまう。
「ん、」
やわらかい果実が、お互いの舌ですり潰されていく。
半分、舌先で押し込まれた果実を呑み込んだ。
煮出されて、もう味が残ってないと思ったのに。
甘かった。
「……美味だ」
マラークの舌を介したからかな? とか言って。目を細めて笑った。
青空の下、まだ明るいのに。
そんなエロい笑みを浮かべるの、やめて欲しいんですけど!
こういう時のアーディルってば、もう、犯罪級に色っぽいんだよ!
「いやあ、あついあつい! 太陽よりあっちいな!」
「わっ!?」
突然掛けられた、からかうようなカマルの声に慌てて顔を上げると。
声の主は、イルハム王に頭をぺしっとはたかれていた。
†††
「まだ新婚時期ですからね……」
サイード王は、仏のような笑みを浮かべている。
うう。
こんな真っ昼間から、他国の王様二人と王子にとんでもないものをお見せしてしまった……。
申し訳ない……。
「”キッチン”とやらを見学させていただいたのですが。あれは、天界の船では当たり前に存在する施設なのですか?」
イルハム王は真顔だ。
生真面目な性格らしく、変な風にからかうような人じゃなくて良かったけど。
あんな光景を見られた直後だし。
何だか気まずい……のはこの場ではどうやら俺だけのようだ。
この世界、羞恥心というものは存在しないのだろうか。
「いえ、当たり前ではないと思います。ここでは初めての船になるので。つい、気合を入れ過ぎてしまって……」
「そうですか。我が国の王宮にも欲しいと思い、材料を揃えれば同じものが作れるかと訊いたのですが。ラシッド殿もバッシャール殿も、由来がさっぱりわからないと……、」
残念そうだ。
あ、やっぱり自分の国にも欲しいと思って、組成とか調べてもらったんだ。
こっちの人にとっちゃ、未知の物体だよね……。
「……わっ、」
話が長くなるとみたのか。
起き上がったアーディルが、何故か俺を、あぐらをかいた自分の膝の上に載せたのだった。
アーディルの両手は俺の胴に回されてる。
人間椅子状態だ。というよりベビーシート的な感じ?
わーい、安定感抜群だ。……じゃなくて!
おいおい、この状態で、国王たちと真面目な話をしろと? バカップルみたいじゃないか!
いや、バカップルそのものだった。
「ああ、そのままで結構ですので、どうかそのままで」
「新婚ですからねえ」
サイード王はイルハム王に同意して、納得したように頷いている。
って。
皆して、この状況を当たり前みたいに受け入れないでくれるかな!?
それとも、この世界の新婚期間って、皆こんなもんなの?
†††
キッチンの”謎の技術”については、さっき考えた言い訳で通すことにした。
「えー、あれは門外不出の技術で作られた施設なので原理は言えませんが。同じものが欲しいなら、作ります」
それと。
「施設の設置は、ちょっとややこしくなるので。俺が現場まで作りに行きます。無償で」
無償だってことは強調したい。
だって。俺が神様から授かった力で出した物で、お金をもらっちゃいけない気がする。元手はタダなんだし。
生やした植物や生物で取引をするのは、人の手で加工する手間があったりするからセーフってことで。
なので俺はしばらく動かない。
「ふふ、何故だろうな?」
アーディルはご機嫌な様子で俺の膝を枕にして寝っ転がってるけど。
膝枕、気に入ったの?
「なんか食べてすぐ動くと肝臓に溜まってる血をいっぱい使うから、ギュってなって痛むらしいよ」
「そうなのか。ミズキは博識だな」
本気で感心されてしまった。
バラエティー番組で得た、ムダ知識だけどね……。
「お妃さま、お茶をどうぞ」
「ありがと」
セーレムはずっと、俺のことを神様の使いじゃなく、アーディルの妃として扱ってくれてるので、なんか嬉しい。
渡されたのは、紅茶にカットしたフルーツを入れたフルーツティーだ。洒落てるな。
やっぱり、ガラスの食器の方が見栄えもいい。
「この美しい食器もそうですが。”レイゾウコ”に食料がいっぱい入ってて、何を作ろうか迷っちゃいました」
セーレム、嬉しそうだ。
今まで料理は趣味で嗜んでいたけど。
王宮には料理人がいるし。この旅の間は思いっきり腕を振るう機会が出来て嬉しい、と言って笑った。
「あ、これ美味しい」
ミントも入ってて後味スッキリ。食後にちょうどいいな。
「どれ、」
アーディルが自分の口を指差した。
まさか、口移しで寄越せ……とか言っちゃう!?
人前だよ!?
セーレムは気を利かせたのか。
おやつ作りに行ってきます、と足早に立ち去った。
それ、12歳の子がする気配りじゃないよ!?
†††
「ん、……もう無いよ?」
空になったコップを揺らすと。
残った氷がカラン、と涼し気な音を立てた。
もっともっと、とねだられて。
親鳥みたいに少しずつ口移しで飲ませてたら。
わりと大きめのコップだったのに、もう紅茶が無くなっちゃったじゃないか。
俺、あんまり飲んでないのに!
口移しなのに、エロい雰囲気とかなくて。
腹ペコひな鳥に必死に餌を食べさせる親鳥の気分だったよ!
「ん? まだ果実があるではないか」
アーディルは俺の手にあるコップに視線をやった。
「……もー、起きて自分で食べたら? それに、ちゃんとセーレムが淹れてくれた、アーディルの分のお茶があるだろ」
とか文句を言いつつ、果実を口に含むと。
ぐいっ、と顔を引き寄せられてしまう。
「ん、」
やわらかい果実が、お互いの舌ですり潰されていく。
半分、舌先で押し込まれた果実を呑み込んだ。
煮出されて、もう味が残ってないと思ったのに。
甘かった。
「……美味だ」
マラークの舌を介したからかな? とか言って。目を細めて笑った。
青空の下、まだ明るいのに。
そんなエロい笑みを浮かべるの、やめて欲しいんですけど!
こういう時のアーディルってば、もう、犯罪級に色っぽいんだよ!
「いやあ、あついあつい! 太陽よりあっちいな!」
「わっ!?」
突然掛けられた、からかうようなカマルの声に慌てて顔を上げると。
声の主は、イルハム王に頭をぺしっとはたかれていた。
†††
「まだ新婚時期ですからね……」
サイード王は、仏のような笑みを浮かべている。
うう。
こんな真っ昼間から、他国の王様二人と王子にとんでもないものをお見せしてしまった……。
申し訳ない……。
「”キッチン”とやらを見学させていただいたのですが。あれは、天界の船では当たり前に存在する施設なのですか?」
イルハム王は真顔だ。
生真面目な性格らしく、変な風にからかうような人じゃなくて良かったけど。
あんな光景を見られた直後だし。
何だか気まずい……のはこの場ではどうやら俺だけのようだ。
この世界、羞恥心というものは存在しないのだろうか。
「いえ、当たり前ではないと思います。ここでは初めての船になるので。つい、気合を入れ過ぎてしまって……」
「そうですか。我が国の王宮にも欲しいと思い、材料を揃えれば同じものが作れるかと訊いたのですが。ラシッド殿もバッシャール殿も、由来がさっぱりわからないと……、」
残念そうだ。
あ、やっぱり自分の国にも欲しいと思って、組成とか調べてもらったんだ。
こっちの人にとっちゃ、未知の物体だよね……。
「……わっ、」
話が長くなるとみたのか。
起き上がったアーディルが、何故か俺を、あぐらをかいた自分の膝の上に載せたのだった。
アーディルの両手は俺の胴に回されてる。
人間椅子状態だ。というよりベビーシート的な感じ?
わーい、安定感抜群だ。……じゃなくて!
おいおい、この状態で、国王たちと真面目な話をしろと? バカップルみたいじゃないか!
いや、バカップルそのものだった。
「ああ、そのままで結構ですので、どうかそのままで」
「新婚ですからねえ」
サイード王はイルハム王に同意して、納得したように頷いている。
って。
皆して、この状況を当たり前みたいに受け入れないでくれるかな!?
それとも、この世界の新婚期間って、皆こんなもんなの?
†††
キッチンの”謎の技術”については、さっき考えた言い訳で通すことにした。
「えー、あれは門外不出の技術で作られた施設なので原理は言えませんが。同じものが欲しいなら、作ります」
それと。
「施設の設置は、ちょっとややこしくなるので。俺が現場まで作りに行きます。無償で」
無償だってことは強調したい。
だって。俺が神様から授かった力で出した物で、お金をもらっちゃいけない気がする。元手はタダなんだし。
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