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砂漠の花

愛の衝動

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「……私は、ミズキを何よりも大切にしたいと心から思っている。それなのに、何度抱いても、この衝動は収まらぬ。それどころか、この欲望は抱く毎に膨れ上がり、際限なく求めてしまう。めちゃくちゃに犯し、どこへも、誰とも会えぬようになるほど抱き潰してしまいたくなる。……私は、おかしい」


あまりに赤裸々な衝動を口にされて。

正直、驚いたけど。そんな告白をされて、嫌だとか、恐ろしいとか感じてない自分に驚いた。
アーディルからそこまで想われて。嬉しいとすら思ってしまった。

そんな俺も、かなりアレだと思う。


この世界、エロ本とかなさそうだし。
知識を得る場所も限られてるみたいだし。

アーディルはただでさえ精力が強い上に、まだ若いんだ。
性欲が暴走するのはよくあることだと思う。俺だってそうだし。


でも、アーディルは王様で。
王というものは常に理性的であり、自分を律するのが当たり前だと思ってるから。

欲望に振り回される自分が理解できないんだろう。

欲情したのも、えっちしたのも。
全部、俺が初めてだから。
まだ身体と心が落ち着かなくて、コントロール不能に陥って混乱してるんだと思う。


俺も、何もかもアーディルが初めてなんだけど。
一応、ひととおりの知識だけはあるからな。

世界には、もっとドン引きするような異常な性癖があるのも知ってるし……。

そういった知識が無かったら、アーディルの俺に対する愛情があまりに深すぎて。
怖がって、逃げてしまっていたかも。

でもって、絶対に逃がしたくないアーディルと、泥沼な結果になっちゃったり?


そう考えれば、別の世界から来た俺たちがこうして出逢ったのは、本当に幸運だったと思う。
まあ、神様の采配なんだけど。


†††


アーディルの言うことには。

俺は何もかもが愛らしい天使であり、出逢った誰も彼も魅了してしまうから。
この先、自分よりも懐の広い、魅力的な王様と出逢ったら、奪われてしまうのではないか。

こうして傍にいるのは、たまたま自分が最初に会って。
強引に奪ってしまったからではないのかと、心配でたまらなくなったようだ。

全くもう。そんなこと、ないってば!

最初の時、強引だったのは、もうすでに謝ってくれたし。
嫌じゃなかったから抵抗しなかったんだし。別に良いって言ってるのに。


「アーディル」
アーディルの背中に手を回して、広い背中を抱き締める。

「信じてくれるまで、何度でも言うからな? 俺がこうやって抱き締めたいのも、抱き締められたいと思うのも。愛してるのも、アーディルだけだよ。いくら顔が良くても、アーディルじゃないと駄目なんだ。絶対、他に目移りなんかしないから、安心しろ」
「ミズキ……、」

「神様が、わざわざアーディルの国の近くを選んで俺を送ったのは、他でもない、アーディルが俺の運命の相手だから。こうしてちゃんと、逢えただろ?」
あえて言い切ろう。


「それに。ハカムは美形だったけど、触られるのも、エロい目で見られるのも気持ち悪くて嫌だった。でも、アーディルの時はそうじゃなかった」

「……もし他の者に触れられて、嫌でなかった時は?」
それは。あるかもしれないけど。

「俺が誰かに触られそうになったら、アーディルが『私の妻に触れるな』って怒ればいいんじゃない? 結婚したんだし」
「なるほど、確かにそうだな」
ふ、と笑った気配がした。


「ミズキ、心の狭い夫ですまない」
ぎゅっと抱き締められる。

そんなことない。
誰にも渡したくないほど、俺のことを愛してくれて。嬉しく思ってる。


大好きだよ。アーディル。
俺も、アーディルのこと、誰にも渡したくないほど好きだよ。

もし誰かに目移りしたら、嫉妬しまくって。マジで天罰くだしちゃうからな?
そんな俺の方が、心狭いし。嫉妬深くて危ないヤツだろ?


†††


「……すみません、サラーサ国スルタンから、そろそろ朝食の支度をしても良いかと尋ねられているのですが」
セーレムの声がして。

もうそんな時間だったんだ、と思った。

ずいぶん朝寝坊しちゃった感じだけど。
昨夜はわりと遅くまで宴会してたし、許してもらいたい。


「少し待て。ミズキの支度をする」

アーディルが俺の身体を撫でて。ドロドロに汚れていたのが一瞬で綺麗になった。
何度見ても、不思議な魔法だよな。

「風呂に入る時間はなさそうだな。すまぬが、これで我慢してくれ」

それは別にいいけど。
何で今、懐に入れたの? ……その、汚れを集めた玉、どうするんだろう……。

そういえば、前にワーヒドのお風呂で回収した精液の玉も、どうやって処分しているんだろうか。


まあいいか。
お腹すいちゃった。


†††


「ゆっくりお休みできましたか?」
ウサーマ王に声を掛けられる。

「ええ、シーツの肌触りも良くて、とても快適でした」
「そうですか。あれは、我が国で育てた綿花の糸から織られた布なのです」
嬉しそうだ。


ワーヒド国のシーツは、シルク製だった。
絹の肌触りも滑らかでいいけど。綿もやわらかくて好きだという話をしていたら。

アーディルが、ではそっちの方の取引も是非お願いしたい、と言って。
こちらはシルクを、サラーサは綿の取引をすることになった。


ウサーマ王と歓談しながら朝食をとって。

川とか湖を作る場所や、商業取引の細かい相談とかはまた、他の王様との話し合いの後で、と約束をして別れた。
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