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夏の王

この愛を捧ぐ

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「俺は”普通”なの!」


イチは自分を”普通”と判断しているようだが。
客観的に見て、普通ではないと思うぞ。

まず、異世界に送られたというのに、すぐに馴染んでみせたこと。
泣いてはいたが。
それは家族との別れを寂しがっていただけであった。

普通の神経ならば、己の境遇に不安を抱き、恐慌状態に陥ってもおかしくはない。

そして、その後過去の世界に跳ばされ。各王と共に、国の再興までしてのけて。
色々あったというのに。

性格が歪んでしまってもおかしくないだろう。
それだけのことがあったのだ。


だが。
イチは、のである。

どこの世界にこんな”普通”が存在するのだ。


◆◇◆


第一。
「王である余が、特別の寵愛を与えているイチは、もうすでに”普通”ではないのだが?」


「俺、ウージュの特別?」
イチは首を傾げた。

自覚はないのか。
罪作りな。

「ああ。余は、イチの外見のみを好いているのではないぞ?」


祖母思いで優しいところも。

年寄りの話をよく聞き、倣うところも。

商売に意外に厳しい意見を持つところも。

食欲旺盛なところも。菓子作りが上手いところも。

真面目で努力家であるところも。

謙虚であるところも。

閨では大胆になるところも。


「すべてを含め、イチを愛している」

愛しい、わたしのイチ。

「……涙もろいところも、愛らしいと思うぞ?」


涙を、唇で吸い上げて。
この世で一番、愛しいイチを、抱き寄せた。


◆◇◆


「……も、おしり、痛い……」

何度も愛し合った後。
イチが涙目で訴えてきたので。

「そうか、」

結合部を探り。
腫れて炎症を起こしている部分の血を散らし、治療する。


「……え?」

よし、痛みが消えたようだな。

「もう大丈夫だな?」
「嘘、ちょ、……ああっ、やぁ、」

再び、腰を突き上げてやる。

初物の果実のような、まだ青く、固い感触も悪くはないが。
蕩けて吸い付いてくる、熟れたような内部を愉しむのも格別である。

このような素晴らしい肉体は、普通ではないぞ、イチ。


「んっ、くぅ、……ああっ、」
突き上げる度に、愛らしい声で鳴く。

その声を、ずっと聞いていたくなる。

「……もう、嫌か?」
いいところを、擦りあげるようにしてやる。

「んん、おっきいので、おなかの中かき回されるの、好き……」
イチの目も、すっかり快楽に潤んでいる。


何度しても、足りないが。
そろそろ、眠らせてやろうか。


「王の寵愛を、受けよ」

イチの体内に、精を放つ。

イチは高い声を上げ、びくびくと身悶えた。
共に、果てたようだ。


「……愛しているぞ、イチ。かわいい伴侶よ」

疲れて寝入っているイチの額に、口付けを落とした。
わたしも寝るとしようか。


さて。
朝には二人の子供を授かっているだろうか?

朝が楽しみであるのは、いつぶりであろうか。


◆◇◆


「ウージュ、起きて!」
イチの声で、目覚めた。

「どうした? 何かあったか、」
すぐに起き上がると。

イチは赤子を抱いていた。

「いつのまにかいたんだけど。授かったのかな?」


そうか。
イチはこうして、授かったばかりの子を見るのは、初めてであったのか。

授かってもすぐに別の国へ飛ばされていたのだから。


しかし、イチはもう、どこへも行かない。
ずっと、この国に。わたしの傍に居てくれるのだ。

再確認し、心より安堵する。


「……ああ、二人の愛のあかしだ」

「かわいいなぁ、ほっぺ、ふくふくだ」
そっと、赤子の頬を撫でている。


そういうイチが一番かわいいのだが。
あまり褒めすぎると、照れて怒り出すのだからな。

本心からの言葉だというのに。
そこもかわいらしいが。


◆◇◆


「名前は? ウージュが決めて。俺は次でいいから」

次、か。
すでに次を授かる気であるのか。イチは気が早いな。

無論、わたしに異存はないが。


見れば、今度の子の肌の色は、わたしに似たようだ。
一人目はイチに似た子だったが。二人目は、わたしに似た子であったか。

次は、どのような子になるのだろう?


そうだな。
今はこの子の名を考えねば。

二番目の子であるから二、ではあまりに短絡的か。


自動人形が、窓の覆いを開けた。

眩しい日差しが、部屋を照らす。
……長い夜を終わらせ、次の朝を報せる、まばゆい太陽。


太陽シャムス……シャムスはどうだ?」

「いいな。この子の名前は、シャムスだ」
イチは、シャムスの両脇を持ち、掲げた。太陽のような笑顔で。


シャムスは明るい未来に相応しい、珠のような、男の赤子であった。


愛するイチと、子供達。
その生涯を、幸福なものにすると約束しよう。

これより先の、わたしの生甲斐である。


王として、一人の男として誓おう。
一生涯、わたしの愛は、イチ、そなただけに捧げると。




おわり
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