28 / 51
秋の国
叛意する、純粋な白。
しおりを挟む
エセルは、”印の力”で触れずに石を持ち上げてみせた。
『おお、私にこのような力があったとは!』
大喜びだ。
ザラームはその数百倍くらいの岩を軽く持ち上げてたけどな。
と思いつつ羨ましく思う俺だった。
元々、この世界の人間には魔力があって。
魔動ボードも、その力で動かすことが可能だ。
”印持ち”は。
その中でも、桁の違う魔力を持った人のことだったようだ。
じゃあ、黒って、相当凄かったんだな。
飛んできた矢が四散したのも、この印の守護だったと思う。印が熱くなったし。
ザラームの力は、今でも俺を守ってくれてるんだ。
◆◇◆
赤の紋章も、何かあるんだろうか?
そういえば、異世界に来てから風邪とか引いてないな。
病気避けとかだったり?
左手を見ていると。
『左手に赤き月の刻印……それは、発明王の后妃の印ではありませんか?』
ルークが俺の手を見て、言った。
手に持ってる本。”愛に生きた我が人生”?
ここにもラグナルのファンが。
もう一冊あるのは、シグルズの自伝で。
後日談が書かれているが、あまりにファンタジックな内容すぎて、創作だろうと言われてるそうだ。
121年前に消えた若いままの母が、黒の王と共にやって来た、とか。
確かにファンタジーすぎて、誰も信じないよな。
『名も同じとは。偶然ではないのでしょう?』
と首を傾げると。
青みがかった銀髪が、さらりと流れた。綺麗な髪だ。
ルークは15歳だっていうけど、俺よりも背が高いし、妙に色気がある。
「そうだけど。お兄ちゃんには内緒な?」
絶対拗ねるだろうし。
ルークは、石を持ち上げてはしゃいでいる兄を、冷めた目で見ていた。
『……格上の存在を教えておくのも、悪いことではないと思いますがね』
わりと辛辣な弟であった。
◆◇◆
「ん……、」
気がついたら。
ごそごそと、身体を弄られていた。
寝込みを襲うとか。どういうつもりだエセル。
もう、後ろは慣らされていて。
後ろから、ぎゅっと抱き締められて。
足を開かされる。
「う、……んん、」
熱いのが、入って来てる。
……でも、何か。
違和感が。
『凄い、……素晴らしいですよ、イチ殿』
「!?」
え、この声。
まさか。……ルーク!?
『儀式の洞窟で。目が合ったでしょう? ひと目見た途端、運命を感じたのです。この人こそが、わたしの半身だと。なのに、兄上にさらわれて。どんなに悔しい思いをしたか……』
熱い囁きに、ぞくぞくする。
「い、ああっ、」
奥まで、突っ込まれて。
圧し掛かられて。ぐいぐい腰を押し付けられる。
『すごい締め付けだ……兄上の大きいだけのアレに、相当陵辱されたでしょうに。処女のように、きついですね?』
「あっ、ん、やぁ、……っく、」
嘘だろ。
犯されてるのに。こんな。
身体は、もっともっとと、欲しがってる。
『……わたしのものにしますよ、イチ。寵愛を、受けなさい』
耳たぶを甘噛みされて。
耳が、熱くなって。
……中に、出された。
その感覚に、ぞくぞくしてしまう。
◆◇◆
身体を引っくり返されて。
正面から、足を持ち上げられる。
「え、また? ひあ……っ!? ああっ、」
一気に、奥まで突き上げられた。
衝撃で、イってしまう。
『……”印の力”の強さなら。わたしのほうが、兄よりもずっと上だ』
ルークが髪をかき上げると。長い耳が見えた。
ルークの耳たぶに、白い、印……?
白なんて。初めて見た。
印を持たない人には、何も出ないはずだ。
でも。さっき、試してみたら。
兄が持ち上げることのできなかった石が、軽々と持ち上がったという。
『……白に、染まれ』
囁かれて。
左手の印と胸の印が、白くなった。
おそらく、耳の印も。
……これは。
ザラームも、していた。
それよりも強い力でなければ、色を塗り替えるのは不可能だって。
と、いうことは。
黒よりも、上の印が存在していたんだ。
『できた。……何でも出来るのですね、これは。ああ、もっと早く知っていれば、あなたを、兄などに奪われなくて済んだものを』
何を考えているのか。
どす黒い、重い空気を感じて。
ぞっとした。
これは。
この力は、危険だ。
いやな予感がする。放置してはいけない。
拒んではいけない。
「ルーク」
頬に手を当てて、正面から顔を見詰める。
”印”は、嘘を見抜くという。
力が強いものほど、人を信じられないのは、そのせいなんだろう。
心からの言葉じゃないと、響かない。
「この力は、私利私欲のために使ってはいけない。人のために、使って欲しい」
ルークは目を瞬かせて。
『いいですよ。約束します。あなたが、わたしの伴侶として、そばにいてくれるなら。わたしはその願いをかなえましょう』
そう言って、微笑んだ。
それはまるで、天使のような微笑みだった。
◆◇◆
翌日からは、大騒ぎだった。
ルークが、印の力を見せ付け、皇帝を交代させることになった。
有無を言わせない、力づくの強行突破だ。
黒よりも、強い。
その力に逆らえる者などいなかった。
前皇帝は、蟄居という名の投獄に処すという。
かわいそうだと言ったら。
なら国外追放と選ばせる、といった。
エセルは、神官のセスと共に、国を出された。
”夏の国”に行くのかもしれない。
そんな気がした。
国の名は、”秋の国”に戻され、ルークは”秋の国”の新王となった。
叛意を持つものは、”印”でそれがわかるので、全て追い出され。
城に残ったのは僅かな兵と、自動人形だけとなった。
しかし、国民から、この新しい王は好意的に受け入れられていた。
エセルは、自分の出来ることがわからなかっただけで、悪い王ではなかったと思うけど。
国民からは怠惰な王だと思われていたようだ。
『さあ、イチ。わたしは、王として、何をすべきだと思う?』
望めば、何でも出来るだろう。
神の如き力で。
間違った使い方だけは、させてはいけない。
考えろ。
俺に。何ができる?
『おお、私にこのような力があったとは!』
大喜びだ。
ザラームはその数百倍くらいの岩を軽く持ち上げてたけどな。
と思いつつ羨ましく思う俺だった。
元々、この世界の人間には魔力があって。
魔動ボードも、その力で動かすことが可能だ。
”印持ち”は。
その中でも、桁の違う魔力を持った人のことだったようだ。
じゃあ、黒って、相当凄かったんだな。
飛んできた矢が四散したのも、この印の守護だったと思う。印が熱くなったし。
ザラームの力は、今でも俺を守ってくれてるんだ。
◆◇◆
赤の紋章も、何かあるんだろうか?
そういえば、異世界に来てから風邪とか引いてないな。
病気避けとかだったり?
左手を見ていると。
『左手に赤き月の刻印……それは、発明王の后妃の印ではありませんか?』
ルークが俺の手を見て、言った。
手に持ってる本。”愛に生きた我が人生”?
ここにもラグナルのファンが。
もう一冊あるのは、シグルズの自伝で。
後日談が書かれているが、あまりにファンタジックな内容すぎて、創作だろうと言われてるそうだ。
121年前に消えた若いままの母が、黒の王と共にやって来た、とか。
確かにファンタジーすぎて、誰も信じないよな。
『名も同じとは。偶然ではないのでしょう?』
と首を傾げると。
青みがかった銀髪が、さらりと流れた。綺麗な髪だ。
ルークは15歳だっていうけど、俺よりも背が高いし、妙に色気がある。
「そうだけど。お兄ちゃんには内緒な?」
絶対拗ねるだろうし。
ルークは、石を持ち上げてはしゃいでいる兄を、冷めた目で見ていた。
『……格上の存在を教えておくのも、悪いことではないと思いますがね』
わりと辛辣な弟であった。
◆◇◆
「ん……、」
気がついたら。
ごそごそと、身体を弄られていた。
寝込みを襲うとか。どういうつもりだエセル。
もう、後ろは慣らされていて。
後ろから、ぎゅっと抱き締められて。
足を開かされる。
「う、……んん、」
熱いのが、入って来てる。
……でも、何か。
違和感が。
『凄い、……素晴らしいですよ、イチ殿』
「!?」
え、この声。
まさか。……ルーク!?
『儀式の洞窟で。目が合ったでしょう? ひと目見た途端、運命を感じたのです。この人こそが、わたしの半身だと。なのに、兄上にさらわれて。どんなに悔しい思いをしたか……』
熱い囁きに、ぞくぞくする。
「い、ああっ、」
奥まで、突っ込まれて。
圧し掛かられて。ぐいぐい腰を押し付けられる。
『すごい締め付けだ……兄上の大きいだけのアレに、相当陵辱されたでしょうに。処女のように、きついですね?』
「あっ、ん、やぁ、……っく、」
嘘だろ。
犯されてるのに。こんな。
身体は、もっともっとと、欲しがってる。
『……わたしのものにしますよ、イチ。寵愛を、受けなさい』
耳たぶを甘噛みされて。
耳が、熱くなって。
……中に、出された。
その感覚に、ぞくぞくしてしまう。
◆◇◆
身体を引っくり返されて。
正面から、足を持ち上げられる。
「え、また? ひあ……っ!? ああっ、」
一気に、奥まで突き上げられた。
衝撃で、イってしまう。
『……”印の力”の強さなら。わたしのほうが、兄よりもずっと上だ』
ルークが髪をかき上げると。長い耳が見えた。
ルークの耳たぶに、白い、印……?
白なんて。初めて見た。
印を持たない人には、何も出ないはずだ。
でも。さっき、試してみたら。
兄が持ち上げることのできなかった石が、軽々と持ち上がったという。
『……白に、染まれ』
囁かれて。
左手の印と胸の印が、白くなった。
おそらく、耳の印も。
……これは。
ザラームも、していた。
それよりも強い力でなければ、色を塗り替えるのは不可能だって。
と、いうことは。
黒よりも、上の印が存在していたんだ。
『できた。……何でも出来るのですね、これは。ああ、もっと早く知っていれば、あなたを、兄などに奪われなくて済んだものを』
何を考えているのか。
どす黒い、重い空気を感じて。
ぞっとした。
これは。
この力は、危険だ。
いやな予感がする。放置してはいけない。
拒んではいけない。
「ルーク」
頬に手を当てて、正面から顔を見詰める。
”印”は、嘘を見抜くという。
力が強いものほど、人を信じられないのは、そのせいなんだろう。
心からの言葉じゃないと、響かない。
「この力は、私利私欲のために使ってはいけない。人のために、使って欲しい」
ルークは目を瞬かせて。
『いいですよ。約束します。あなたが、わたしの伴侶として、そばにいてくれるなら。わたしはその願いをかなえましょう』
そう言って、微笑んだ。
それはまるで、天使のような微笑みだった。
◆◇◆
翌日からは、大騒ぎだった。
ルークが、印の力を見せ付け、皇帝を交代させることになった。
有無を言わせない、力づくの強行突破だ。
黒よりも、強い。
その力に逆らえる者などいなかった。
前皇帝は、蟄居という名の投獄に処すという。
かわいそうだと言ったら。
なら国外追放と選ばせる、といった。
エセルは、神官のセスと共に、国を出された。
”夏の国”に行くのかもしれない。
そんな気がした。
国の名は、”秋の国”に戻され、ルークは”秋の国”の新王となった。
叛意を持つものは、”印”でそれがわかるので、全て追い出され。
城に残ったのは僅かな兵と、自動人形だけとなった。
しかし、国民から、この新しい王は好意的に受け入れられていた。
エセルは、自分の出来ることがわからなかっただけで、悪い王ではなかったと思うけど。
国民からは怠惰な王だと思われていたようだ。
『さあ、イチ。わたしは、王として、何をすべきだと思う?』
望めば、何でも出来るだろう。
神の如き力で。
間違った使い方だけは、させてはいけない。
考えろ。
俺に。何ができる?
5
お気に入りに追加
654
あなたにおすすめの小説
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
絶滅危惧種の俺様王子に婚約を突きつけられた小物ですが
古森きり
BL
前世、腐男子サラリーマンである俺、ホノカ・ルトソーは”女は王族だけ”という特殊な異世界『ゼブンス・デェ・フェ』に転生した。
女と結婚し、女と子どもを残せるのは伯爵家以上の男だけ。
平民と伯爵家以下の男は、同家格の男と結婚してうなじを噛まれた側が子宮を体内で生成して子どもを産むように進化する。
そんな常識を聞いた時は「は?」と宇宙猫になった。
いや、だって、そんなことある?
あぶれたモブの運命が過酷すぎん?
――言いたいことはたくさんあるが、どうせモブなので流れに身を任せようと思っていたところ王女殿下の誕生日お披露目パーティーで第二王子エルン殿下にキスされてしまい――!
BLoveさん、カクヨム、アルファポリス、小説家になろうに掲載。
総受けなんか、なりたくない!!
はる
BL
ある日、王道学園に入学することになった柳瀬 晴人(主人公)。
イケメン達のホモ活を見守るべく、目立たないように専念するがー…?
どきどき!ハラハラ!!王道学園のBLが
今ここに!!
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる