22 / 61
華麗なる少年王の半生
元近衛騎士である美貌の勇者と麗しき少年王の結婚
しおりを挟む
結婚式当日である。
花嫁というので。女装でもさせられるのか、異世界で女装子デビューかよ、と戦々恐々としていたが。
フリルたっぷりのシャツにレースひらひらのフロックコートみたいな上着だが、下はスカートではなかった。
ほっとしたような、些か拍子抜けしたような。
いや、決して女装したかったわけじゃないけど。
でも、ほら俺は今、美少年だし?
正直言って、似合うと思うんだよね!
美少年時代ならともかく、今はガタイが良すぎて難しいだろうが。
顔はやたら整ってるんだから、アルベルトも似合うんじゃないだろうか。女装。
190センチ近い美女とか迫力ありそう。ちょっと見てみたいかもしれない。
*****
おっと招待客の中にアルベルトの母ちゃ……母君発見!
アルベルトの顔をちょっと気弱で地味にしたような感じの美人だった。
フッ、アルベルトは母親似だろうと想像した俺の勘に間違いはなかったようだな。
父親のハインリヒ・フォン・ロイエンタール公爵には何度か会ったことはある。
ブルネットに青い目の相変わらずダンディなおじさまだ。
目の辺りが似てるかな?
アルベルトの弟たちも、両親のいいとこどりしたような美形揃いだ。
しかし、こうして並んでいると。やっぱりアルベルトが特別な美形だなと実感する。
あいつだけ抜きん出て綺麗な顔をしてる……。
アルベルトは、今日は勇者の鎧ではなく、近衛騎士の正装に似た、白い軍服のような正装だった。
胸には勲章がずらりと並んでる。いつの間にそんなに貰ってたんだ?
俺は一回しか授与式やった覚えがないから、前王の時代かな?
儀礼用の剣を佩いた立姿は、凛々しくも美しい。
俺、今からこいつと結婚すんのか……。
あんまり実感わかねえな。
昨夜も散々、エロいことされたってのに。
残ってしまった顔の傷痕を嘆く声もあるが。
賢者からは、あの暴竜バルバルスと正面から戦って、命があるだけでも幸運だと聞いた。
戦士一人の犠牲で済んだのは、かなりの奇跡で。
聖剣ヴァルムントをもってしても、良くて相討ちだろうと予想されていたとか。
そんな強い敵だったんだな。
俺のために、そこまで身体張って頑張った訳か。
その執着がこわいんですけど!
*****
母上が、俺の頭にベールをかけた。
物凄く細かいレース編みで。めちゃくちゃ手間暇かかってそう。
母上の実家であるエルラフリート国に代々伝わっている、花嫁に贈るものだそうだ。
前世の記憶があるせいか、我ながら両親にあまり懐かない、可愛くない子供だったと思う。
だって中身29歳なのに、若い女性のおっぱいとか吸えないじゃん!?
今まで愛情いっぱいに育ててくれたことを感謝して、お礼を言うと。
母上は泣きだしてしまった。
赤ん坊の頃から分別があり過ぎるというか、賢い子過ぎてかえって心配してたそうだ。
我儘も言わないから。何か望みがあれば、それが何だろうが受け入れようと思っていたという。
だからアルベルトとの結婚にも反対しなかったとか。
それは先に言ってよマミー!
「クリス兄様、とっても綺麗」
リーゼロッテは、頬をばら色に染めた愛らしい顔をして褒めてくれた。
普段、人前では兄妹でも陛下と呼ぶのだが。
今日の俺は、アルベルトの花嫁だ。
「次は、お前の番だぞ?」
縫い込まれた宝石がキラキラと光る綺麗なベールを摘まんでみせる。
「寂しいけど、泣かないわ。アル兄様のお嫁さんになっても、クリス兄様はずっと、私の兄様だもの」
リーゼロッテは泣きそうな顔をして、俺に抱き着いてきた。
「当たり前だ。私達はずっと、兄妹なのだから」
頭を撫でてやる。
駄目だ、俺が泣きそう。
何だよこれ。
尊みあふれすぎだろ! 俺の妹が尊すぎてニルヴァーナ見えてきた。
*****
申し訳なさそうな咳払いが聞こえた。
「そろそろ時間だけど……いいかな?」
金髪碧眼のイケオジが、所在なさげに立っていた。
ベルンハルト・フォン・ローエンシュタイン侯爵。
父上の弟、つまり叔父である。
教会までのエスコート役である父親が不在なので、叔父上に代理を頼んだのだった。
「バーニィ叔父様!」
「やあ、リズ。大きくなったねえ。もう立派な淑女だ」
イケオジ……もとい叔父上はリーゼロッテの手を取り、手の甲にキスをして。
そしてこちらを向いて、恭しく敬礼した。
「久しくお目にかかります、我が麗しの陛下。この度は大変栄誉ある役目を戴き……」
「叔父上、今日はただの叔父と甥ということで」
長くなりそうな口上を遮った。
放っておくと、校長先生の話くらい長くなる。
適当なところで止めなければならない。朝礼ではないのだ。寝てはまずい。
叔父上はにっこりと笑って、肘を出してみせた。
「では可愛いクリス。行こうか」
「よろしくお願いします、バーニィ叔父様」
出された肘に掴まって、大聖堂へ。
やたら長いベールは、引きずらないよう叔父上の小さな娘たちが持ってくれる。
しばらく見ない間に花がほころぶように綺麗になったねえ、とか。
歯の浮くような台詞を言われながら長い廊下を歩く。
そういうのはリーゼロッテに言ってやれ。
*****
イケオジのエスコートでバージンロードを歩むと。
祭壇の前で、花婿であるアルベルトが待っていた。
ステンドグラスから光が差し込んでいるのに、それよりも眩い笑顔を浮かべている。
うおっまぶしっ。
叔父上もその眩しさに目を細めていたほどだ。
でも、こんな太陽みたいな爽やかな笑顔しといて、こいつの腹の中はベンタブラックよりも真黒なダークマターで一杯なんですよ!?
と心の中で叫ぶ。
他人にアルベルトの腹黒さをバラしたところで、俺には何の得もないからな。
教皇が何やら呪文のような聖句を唱えて。
祝福を受け、永遠の愛を誓う。
一昨日、全世界に向けて誓ったような気がするが。
再びの羞恥プレイである。
花嫁というので。女装でもさせられるのか、異世界で女装子デビューかよ、と戦々恐々としていたが。
フリルたっぷりのシャツにレースひらひらのフロックコートみたいな上着だが、下はスカートではなかった。
ほっとしたような、些か拍子抜けしたような。
いや、決して女装したかったわけじゃないけど。
でも、ほら俺は今、美少年だし?
正直言って、似合うと思うんだよね!
美少年時代ならともかく、今はガタイが良すぎて難しいだろうが。
顔はやたら整ってるんだから、アルベルトも似合うんじゃないだろうか。女装。
190センチ近い美女とか迫力ありそう。ちょっと見てみたいかもしれない。
*****
おっと招待客の中にアルベルトの母ちゃ……母君発見!
アルベルトの顔をちょっと気弱で地味にしたような感じの美人だった。
フッ、アルベルトは母親似だろうと想像した俺の勘に間違いはなかったようだな。
父親のハインリヒ・フォン・ロイエンタール公爵には何度か会ったことはある。
ブルネットに青い目の相変わらずダンディなおじさまだ。
目の辺りが似てるかな?
アルベルトの弟たちも、両親のいいとこどりしたような美形揃いだ。
しかし、こうして並んでいると。やっぱりアルベルトが特別な美形だなと実感する。
あいつだけ抜きん出て綺麗な顔をしてる……。
アルベルトは、今日は勇者の鎧ではなく、近衛騎士の正装に似た、白い軍服のような正装だった。
胸には勲章がずらりと並んでる。いつの間にそんなに貰ってたんだ?
俺は一回しか授与式やった覚えがないから、前王の時代かな?
儀礼用の剣を佩いた立姿は、凛々しくも美しい。
俺、今からこいつと結婚すんのか……。
あんまり実感わかねえな。
昨夜も散々、エロいことされたってのに。
残ってしまった顔の傷痕を嘆く声もあるが。
賢者からは、あの暴竜バルバルスと正面から戦って、命があるだけでも幸運だと聞いた。
戦士一人の犠牲で済んだのは、かなりの奇跡で。
聖剣ヴァルムントをもってしても、良くて相討ちだろうと予想されていたとか。
そんな強い敵だったんだな。
俺のために、そこまで身体張って頑張った訳か。
その執着がこわいんですけど!
*****
母上が、俺の頭にベールをかけた。
物凄く細かいレース編みで。めちゃくちゃ手間暇かかってそう。
母上の実家であるエルラフリート国に代々伝わっている、花嫁に贈るものだそうだ。
前世の記憶があるせいか、我ながら両親にあまり懐かない、可愛くない子供だったと思う。
だって中身29歳なのに、若い女性のおっぱいとか吸えないじゃん!?
今まで愛情いっぱいに育ててくれたことを感謝して、お礼を言うと。
母上は泣きだしてしまった。
赤ん坊の頃から分別があり過ぎるというか、賢い子過ぎてかえって心配してたそうだ。
我儘も言わないから。何か望みがあれば、それが何だろうが受け入れようと思っていたという。
だからアルベルトとの結婚にも反対しなかったとか。
それは先に言ってよマミー!
「クリス兄様、とっても綺麗」
リーゼロッテは、頬をばら色に染めた愛らしい顔をして褒めてくれた。
普段、人前では兄妹でも陛下と呼ぶのだが。
今日の俺は、アルベルトの花嫁だ。
「次は、お前の番だぞ?」
縫い込まれた宝石がキラキラと光る綺麗なベールを摘まんでみせる。
「寂しいけど、泣かないわ。アル兄様のお嫁さんになっても、クリス兄様はずっと、私の兄様だもの」
リーゼロッテは泣きそうな顔をして、俺に抱き着いてきた。
「当たり前だ。私達はずっと、兄妹なのだから」
頭を撫でてやる。
駄目だ、俺が泣きそう。
何だよこれ。
尊みあふれすぎだろ! 俺の妹が尊すぎてニルヴァーナ見えてきた。
*****
申し訳なさそうな咳払いが聞こえた。
「そろそろ時間だけど……いいかな?」
金髪碧眼のイケオジが、所在なさげに立っていた。
ベルンハルト・フォン・ローエンシュタイン侯爵。
父上の弟、つまり叔父である。
教会までのエスコート役である父親が不在なので、叔父上に代理を頼んだのだった。
「バーニィ叔父様!」
「やあ、リズ。大きくなったねえ。もう立派な淑女だ」
イケオジ……もとい叔父上はリーゼロッテの手を取り、手の甲にキスをして。
そしてこちらを向いて、恭しく敬礼した。
「久しくお目にかかります、我が麗しの陛下。この度は大変栄誉ある役目を戴き……」
「叔父上、今日はただの叔父と甥ということで」
長くなりそうな口上を遮った。
放っておくと、校長先生の話くらい長くなる。
適当なところで止めなければならない。朝礼ではないのだ。寝てはまずい。
叔父上はにっこりと笑って、肘を出してみせた。
「では可愛いクリス。行こうか」
「よろしくお願いします、バーニィ叔父様」
出された肘に掴まって、大聖堂へ。
やたら長いベールは、引きずらないよう叔父上の小さな娘たちが持ってくれる。
しばらく見ない間に花がほころぶように綺麗になったねえ、とか。
歯の浮くような台詞を言われながら長い廊下を歩く。
そういうのはリーゼロッテに言ってやれ。
*****
イケオジのエスコートでバージンロードを歩むと。
祭壇の前で、花婿であるアルベルトが待っていた。
ステンドグラスから光が差し込んでいるのに、それよりも眩い笑顔を浮かべている。
うおっまぶしっ。
叔父上もその眩しさに目を細めていたほどだ。
でも、こんな太陽みたいな爽やかな笑顔しといて、こいつの腹の中はベンタブラックよりも真黒なダークマターで一杯なんですよ!?
と心の中で叫ぶ。
他人にアルベルトの腹黒さをバラしたところで、俺には何の得もないからな。
教皇が何やら呪文のような聖句を唱えて。
祝福を受け、永遠の愛を誓う。
一昨日、全世界に向けて誓ったような気がするが。
再びの羞恥プレイである。
32
お気に入りに追加
683
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
転生したら、ラスボス様が俺の婚約者だった!!
ミクリ21
BL
前世で、プレイしたことのあるRPGによく似た世界に転生したジオルド。
ゲームだったとしたら、ジオルドは所謂モブである。
ジオルドの婚約者は、このゲームのラスボスのシルビアだ。
笑顔で迫るヤンデレラスボスに、いろんな意味でドキドキしているよ。
「ジオルド、浮気したら………相手を拷問してから殺しちゃうぞ☆」
王子様から逃げられない!
白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
巨人族の1/3の花嫁〜王様を一妃様と二妃様と転生小人族の僕の三妃で幸せにします〜〈完結〉
クリム
BL
一回めは処刑された老臣、二回めは鬼教官、三回めは教師、そして四回めの転生は異世界で小人族ですか。身長一メート僕タークは、御信託で巨人族にお嫁入りです。王様はどう見ても三メートルはあります。妖精族のソニン様、獣人族のロキと一緒に王様になりたてのガリウス様を幸せにします。まず、王様のイチモツ、入りますかね?
三人分の前世の記憶と、豆知識、そして貪欲な知識欲を満たすため、異世界王宮改革をしていく三妃タークの物語。
※はご高覧注意です。
『小説家になろう』にも同時連載。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!
ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて
素の性格がリスナー全員にバレてしまう
しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて…
■
□
■
歌い手配信者(中身は腹黒)
×
晒し系配信者(中身は不憫系男子)
保険でR15付けてます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる