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華麗なる少年王の半生
麗しき少年王、先王より託されし予言を伝える
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「陛下、ズューデン・ヴルカンにて異変が……!」
「巨大な影を見たとの報告が入っております」
兵士たちが、あわあわと慌てふためきながら王の間にやってきて。
俺の前に跪いて報告してきた。
……そら来た。
予言通りだ。
さすが百発百中な父上の予言だ、間違いないぜ。さす父。
内心ではリアルでドラゴンキタコレ! イヤッホー! とか思いつつ。
「……そうか。ついにあれが目覚めたか……」
顎に手をやり、深く思案するようなポーズをつけて。
何やら思わせぶりに呟いてみたりする俺だった。
*****
「殿下……いえ陛下、何が起こったのか、ご存じなのですか!?」
まだ陛下呼びに慣れない様子の近衛騎士に、鷹揚に頷いてみせ。
つらそうな表情をつくり、皆に告げてやる。
「先王の遺した予言にあった、恐るべき怪物が現れたのだ……。千年の長き封印より解き放たれし暴竜バルバルス。今はまだ、目覚めたばかりだが。やつの暴虐を許せば、この国どころか、この世が終わる、と……」
「……!?」
「何と……、」
俺の言葉に、兵士や近衛騎士達の顔色が変わった。
まさにこの世の終わりか、というような。
絶望的な表情だ。
でもご安心めされよ。
世界は滅びずに助かるということは、すでに予言でわかっているのである。
王座から立ち上がり、声を張る。
「城より東方、リリエンベルグに封印されし聖剣ヴァルムント。あれを引き抜くことが出来た者こそが、暴竜バルバルスを打ち倒せし真の勇者である。すぐに国民の中から成人の若者を集め、試させよ!」
「はっ、」
「御意」
兵たちは、俺に向けて礼をして。
国民に、今の俺の言葉を伝えるために出て行った。
*****
ここまでは、順調に先の国王である父上が言っていた予言の通りに進んでいる。
一度やったゲームのイベントをもう一度やらされているような気分だ。
この国から現れた勇者が聖剣を引き抜き、見事竜を倒してみせるってことまでわかっている。
そいつに言うべき台詞まで決められているのだ。
最初の村のNPCかよ。ぶっちゃけめんどくさい。
その後は、特に災害もなく。
予言を遺すまでもない、平和な世の中になるらしい。
あの日。父上が今わの際に。
病気でやせ衰えていたっていうのに、驚くほど強い力で手を握られて。
悲痛な顔で。
竜が倒された後のことは、お前が決断しろ、と言われたんだよな。
国のことも。
全て、俺の采配に任せる、と言ってたが。
実のところ、立派な王様なんてやってく自信はない。
全くない。
だって、国に関しての全ての責任を取らなくちゃいけない立場って重いし、めんどいじゃん?
キラキラした王子様役なら、気楽で良かったんだけど。
大臣とか、周囲が優秀だから。政務についてはまあ、何とかなるだろうけど。
俺ちゃん、がんばえー。
「陛下、何があろうと、陛下の御身は私が護りますので、どうかご安心を」
俺の横にいた、絵に描いたようなキラキラしい美青年が跪いて。
恭しく、俺の手を取った。
いや、別にドラゴンのことで憂鬱な気分になってた訳じゃないんだが。
*****
国民から大人気の麗しき少年王、ってのも悪くはないけどさ。
どうせなら、こいつみたいにかっこよく生まれて来たかったなあ。
とか思いながら、自分の傍らに跪いている美貌の騎士を見た。
自分たち騎士が命に代えても御身をお護り致しますので、鍛錬など必要ありません、とか言われて。俺は、剣の修業もしていないんだよな。
お陰で筋肉がつくこともなく、文字通り深層の姫君のごとく蝶よ花よと育ってしまったわけで。
周囲は体格の良い奴ばかりだというのに、成人とされる年齢になっても未だ線の細い、儚げな美少年である。
非力すぎて、お姫様をお姫様抱っこも出来ない。
生前も出来なかったくせに、とか突っ込まない。
いいんだ。文系だもん。
……うわあ。
美貌の騎士とふと目が合ったら。優しく微笑まれてしまったでござる。
綺麗な青藤色の目を細めて。唇がゆるく弧を描いている。
純情可憐な乙女なら一瞬で恋に落ちて、ときめいてキュン死にしそうなくらいパーフェクトなスマイルだった。純情な男でも、思わずよろめいてしまうかもしれない。
俺の場合、中身はいい年したオッサンなので普通に引いたが。
お前毎日鏡を見て角度とか決め顔の練習でも日々研究してるのか、と。小一時間問い詰めたいくらい、完璧に決まったいい笑顔だった。
生まれながらのイケメンにしか習得できない、難易度の高いスキルである。
……何でこいつは俺の手を取ったまま、俺に向けて一撃必殺の微笑みを向けたのだろうか。
微笑みを向ける相手を間違えてないか?
まさか、王妃の座でも狙ってるんですか? 男の娘ならギリ許容できるかもだが。
俺よりも背が高く鍛え上げた屈強な肉体をもつ男の嫁はノーサンキューだ。同じコミケ三日目でもジャンルが違う。
それとも。
生まれながらのハンター気質で、手あたり次第に誰彼構わずラブ時空に落とそうとしているのだろうか。
無意識でやっているのだとしたら。何というおそろしい子……!
「巨大な影を見たとの報告が入っております」
兵士たちが、あわあわと慌てふためきながら王の間にやってきて。
俺の前に跪いて報告してきた。
……そら来た。
予言通りだ。
さすが百発百中な父上の予言だ、間違いないぜ。さす父。
内心ではリアルでドラゴンキタコレ! イヤッホー! とか思いつつ。
「……そうか。ついにあれが目覚めたか……」
顎に手をやり、深く思案するようなポーズをつけて。
何やら思わせぶりに呟いてみたりする俺だった。
*****
「殿下……いえ陛下、何が起こったのか、ご存じなのですか!?」
まだ陛下呼びに慣れない様子の近衛騎士に、鷹揚に頷いてみせ。
つらそうな表情をつくり、皆に告げてやる。
「先王の遺した予言にあった、恐るべき怪物が現れたのだ……。千年の長き封印より解き放たれし暴竜バルバルス。今はまだ、目覚めたばかりだが。やつの暴虐を許せば、この国どころか、この世が終わる、と……」
「……!?」
「何と……、」
俺の言葉に、兵士や近衛騎士達の顔色が変わった。
まさにこの世の終わりか、というような。
絶望的な表情だ。
でもご安心めされよ。
世界は滅びずに助かるということは、すでに予言でわかっているのである。
王座から立ち上がり、声を張る。
「城より東方、リリエンベルグに封印されし聖剣ヴァルムント。あれを引き抜くことが出来た者こそが、暴竜バルバルスを打ち倒せし真の勇者である。すぐに国民の中から成人の若者を集め、試させよ!」
「はっ、」
「御意」
兵たちは、俺に向けて礼をして。
国民に、今の俺の言葉を伝えるために出て行った。
*****
ここまでは、順調に先の国王である父上が言っていた予言の通りに進んでいる。
一度やったゲームのイベントをもう一度やらされているような気分だ。
この国から現れた勇者が聖剣を引き抜き、見事竜を倒してみせるってことまでわかっている。
そいつに言うべき台詞まで決められているのだ。
最初の村のNPCかよ。ぶっちゃけめんどくさい。
その後は、特に災害もなく。
予言を遺すまでもない、平和な世の中になるらしい。
あの日。父上が今わの際に。
病気でやせ衰えていたっていうのに、驚くほど強い力で手を握られて。
悲痛な顔で。
竜が倒された後のことは、お前が決断しろ、と言われたんだよな。
国のことも。
全て、俺の采配に任せる、と言ってたが。
実のところ、立派な王様なんてやってく自信はない。
全くない。
だって、国に関しての全ての責任を取らなくちゃいけない立場って重いし、めんどいじゃん?
キラキラした王子様役なら、気楽で良かったんだけど。
大臣とか、周囲が優秀だから。政務についてはまあ、何とかなるだろうけど。
俺ちゃん、がんばえー。
「陛下、何があろうと、陛下の御身は私が護りますので、どうかご安心を」
俺の横にいた、絵に描いたようなキラキラしい美青年が跪いて。
恭しく、俺の手を取った。
いや、別にドラゴンのことで憂鬱な気分になってた訳じゃないんだが。
*****
国民から大人気の麗しき少年王、ってのも悪くはないけどさ。
どうせなら、こいつみたいにかっこよく生まれて来たかったなあ。
とか思いながら、自分の傍らに跪いている美貌の騎士を見た。
自分たち騎士が命に代えても御身をお護り致しますので、鍛錬など必要ありません、とか言われて。俺は、剣の修業もしていないんだよな。
お陰で筋肉がつくこともなく、文字通り深層の姫君のごとく蝶よ花よと育ってしまったわけで。
周囲は体格の良い奴ばかりだというのに、成人とされる年齢になっても未だ線の細い、儚げな美少年である。
非力すぎて、お姫様をお姫様抱っこも出来ない。
生前も出来なかったくせに、とか突っ込まない。
いいんだ。文系だもん。
……うわあ。
美貌の騎士とふと目が合ったら。優しく微笑まれてしまったでござる。
綺麗な青藤色の目を細めて。唇がゆるく弧を描いている。
純情可憐な乙女なら一瞬で恋に落ちて、ときめいてキュン死にしそうなくらいパーフェクトなスマイルだった。純情な男でも、思わずよろめいてしまうかもしれない。
俺の場合、中身はいい年したオッサンなので普通に引いたが。
お前毎日鏡を見て角度とか決め顔の練習でも日々研究してるのか、と。小一時間問い詰めたいくらい、完璧に決まったいい笑顔だった。
生まれながらのイケメンにしか習得できない、難易度の高いスキルである。
……何でこいつは俺の手を取ったまま、俺に向けて一撃必殺の微笑みを向けたのだろうか。
微笑みを向ける相手を間違えてないか?
まさか、王妃の座でも狙ってるんですか? 男の娘ならギリ許容できるかもだが。
俺よりも背が高く鍛え上げた屈強な肉体をもつ男の嫁はノーサンキューだ。同じコミケ三日目でもジャンルが違う。
それとも。
生まれながらのハンター気質で、手あたり次第に誰彼構わずラブ時空に落とそうとしているのだろうか。
無意識でやっているのだとしたら。何というおそろしい子……!
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