ドSワンコとクズ眼鏡

うさき

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 もう何を言えば良いのか分からず固まってしまった俺に、七海は優しく目を細めて手を伸ばす。
 腰を力強く引き寄せられて、ハッとして目の前の身体を押し返した。

「さ、触るなっ」
「触りますよ。最近あーちゃんのせいで全然触ってないですもん。俺もー限界で」
「限界って…っ」

 無遠慮に伸ばされた手が再び俺の手を掴む。

 こんな混乱している状況で七海に色々されたら、俺は絶対にまたグダグダになってしまう。
 触れられたところから熱が生じて、自分でも覚えのない心臓の音に戸惑う。

 逃げようとしたが椅子から立ち上がった七海に手を引かれ、身体を反転させられた。
 有無を言わせぬ力強さは相変わらずで、肩を押されてさきほどまで七海が座っていた椅子に座らせられる。

 マズイ。
 このままだとまた七海のペースになってしまう。
 そう思っているのに落ちてくる視線の強さに、いつものような文句の言葉も出てこない。
 それどころかさっきからずっと、顔はどうしようもなく熱いままだ。

「…みーちゃん、なんて顔してくれるんすか」

 どこか困ったように七海は微笑んで、俺から眼鏡を引き抜いた。
 ぼやけた視界の先で大きな身体が覆いかぶさってくる。

「――っ」

 キスされる、と覚悟して反射的に堅く目を閉じる。
 全身に熱が昇り、もう頭が沸騰しそうだ。

 こんな感覚、今までに一度だって感じたことはない。
 どうしていきなりこんな風になってしまったんだ。

 バクバクと鳴る心臓の音と共に唇を引き結んで覚悟していたが、予想していた感触はなかなか訪れなかった。
 うっすらと目を開けると、鼻先数センチの距離で俺の顔を覗き込む七海の視線とぶつかる。

「なっ…何を見ているっ」
「あ、すいません。俺の事意識してくれてんのかなって思ったらすげー嬉しくて」
「…っだから違うと言ってるだろう。お前は生徒で――」
「俺は教師だ、ですよね。分かってます。大好きです、みーちゃん」
「それは分かってな――」

 話してる最中なのに、いきなり唇を奪われた。

 いつものようにこのまま手慣れたキスをされてしまうのかと思ったが、それはすぐに離される。
 だが間を置かずすぐにまた口付けられる。
 そしてまたすぐに離され、もう一度。

 触れるだけの啄むようなキスをする度に人の顔を覗き込まれて、まるで俺の反応を伺っているような仕草にたまらなく羞恥心が煽られる。

 耐えきれず顔を俯かせると、コツンと額を合わせられた。
 ものすごく近い距離でこっちは心臓がおかしくてたまらないと言うのに、七海は息を漏らしてふはっと笑う。

「あーもう、やべ。すげー可愛い」
「きょ、教師に言う言葉じゃない…っ」
「そうっすね。謝ります。謝りますからもっと触らせて」

 七海の手が俺の髪を梳き、唇が頬に触れる。
 それから額、こめかみから耳へと優しく口付けられて、顔を俯かせたままぎゅっと目を閉じてその行動に耐える。

 いつもはあっという間に人を犯すくせに、なぜ今日に限ってこんな人を弄ぶような触り方をするんだ。

「みーちゃん、顔上げて。顔が見たいです」

 昼間の快活な声とはうって変わり、落ち着いた声音が耳を揺らす。
 いつだって勝手に人の顎を持ち上げるくせに、七海は指先で人の耳をくすぐりながら俺の行動を待つ。

 顔をあげたら何をされるかなんて、もう分かりきっている。
 俺の頭はもう許容範囲をとうに超えていたが、それでも七海のせいで逃げ場がない。

「ほら、俺の言うこと聞けますよね」

 有無を言わせぬ口調とは反対に、その声音は酷く優しい。
 心ではダメだとちゃんと分かっているのに、ぼーっとした頭がゆっくりと顔を上向かせる。
 見上げた先で七海の視線とぶつかり、どこか色気を帯びた瞳にゾクリと背筋が震えた。
 
「よく出来ました」

 待ち望んでいたと言わんばかりの、急くようなキスをされた。
 さっきまでの優しいキスとは打って変わり、呼吸を奪われるような激しいキス。

 よく出来ました、なんて教師の俺が言うならまだしもなぜ生徒に言われなければならない。
 口の聞き方が間違っていると今すぐ叱るべきだ。

 いやそもそもなぜコイツはこの部屋に居座っていたんだ。
 勝手に使うことを俺は許可した覚えなんてない。

 そう思っているのに舌を絡め取られ狙ったように吸い上げられると、堪らなく腰まで響くような気持ちよさが駆け抜ける。
 
「……ん、…っふ」

 鼻から抜けるような甘い声が自然と漏れて、口付けがより深くなる。
 後頭部に手を回されて、これ以上ないほどピッタリとした隙間のない口付けに翻弄されてしまう。

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