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しおりを挟むその後は体験学習を中心に美術や音楽に関する知識を生徒は学び、俺は協力してくれている店側の人間と話をして時間を潰していた。
七海は終始俺に絡んでこようとしたが、慌てたようにクラスメイトに引っ張られていった。
結局二日目は雨で終わってしまったが、それでも生徒は皆楽しそうに沖縄を満喫していたようだった。
ホテルに戻り昨日と同じように生徒の夕飯や風呂を廊下で促していると、俺のところへ数人の男子生徒が訪れた。
見れば昨日の夜抜け出していた七海と同室の生徒で、皆バツの悪そうな顔で俺を見つめている。
キラキラした顔で人に走り寄ってくるアイツと違って、いつもとなんら変わらぬ生徒の視線に逆に安心する。
何か思いきり話しづらそうな雰囲気だったが、何の用だと眼鏡を押し上げて促すと慌てたように話し始めた。
「――え?」
事情を聞き終えた俺は、生徒の予想外の言葉に驚いていた。
少し戸惑ったが、話は分かったと返す。
俺の反応を気にしているのか生徒はチラチラと目配せしていて、どうやらまた怒られるんじゃないかと思っているらしい。
だが昼間に感じていた苛立ちなんて、もうすっかりなくなっていた。
それどころか今しがたの話で、どこか暖まった気持ちが自然と表情を緩ませる。
「どうするかは神谷と相談する。せっかくの修学旅行だろう。残りの時間は羽目を外さないように楽しめよ」
「…あ、はい!」
少し驚いた顔をされたが、すぐに返事をして生徒たちは戻っていった。
それから神谷に先程の生徒の話を伝えつつ、教師同士のミーティングに出席する。
今日の反省や報告、明日の予定やらをしっかり話し合い、深夜になってから風呂に入った。
相変わらず教頭がやたら馴れ馴れしく話しかけてきたが、話をさっさと切り上げて部屋へ戻る。
昨日と同じく先に俺が仮眠を取る流れで、部屋に行くとすぐに横になる。
睡眠不足と日中の蒸し暑さで身体はクタクタなはずだが、やはりなかなか眠れない。
それでもなんとか眠りに落ちた頃には、もうだいぶ時間が経っていた。
「…何をしている」
「――あ、また起きてしまいましたか」
目を開けると、またしても人の顔をカメラで撮ろうとしている神谷と目が合った。
コイツも凝りないな。
もう本気で警察に通報してやろうか。
「紺野先生、もしやあまり寝れていないのではないですか?」
「…いや、問題はない。今日は抜けがないかちゃんと見たんだろうな」
「大丈夫です。抜き打ちで部屋確認もしましたので」
どうやら心配はなさそうだ。
身体を起こして額に手を当てる。
毎年のことだが、修学旅行は睡眠不足との戦いだ。
「やはり心配です。紺野先生少し神経質なところがあるでしょう。慣れない場所だとゆっくり寝れないのではないですか?」
なぜ分かる。
全くその通りなんだが、とはいえ弱音など吐いてはいられない。
「どのみちお前だってゆっくりは寝られないだろう。あと2日だし問題ない」
「もう少し見張りしていましょうか?明日は晴れるみたいですし、今日よりもずっと体力をつかうと思います。紺野先生体力ないでしょう」
どこまでも人を見透かしてくる奴だが、神谷の方が生徒と関わる分大変だろう。
担任の方が気は張るし、気遣いはいらないと言って俺は洗面台へ向かった。
冷たい水で顔を洗ってから、上着を羽織り見張りへ向かうことにする。
行ってくる、と一言神谷に言おうとして、目の前の光景に思わず目を細めた。
「おい。お前のベッドはそっちだろう」
「え?ああ。そうでしたね」
ゴロゴロと人の枕に顔を埋めていたが、コイツ人のベッドで何をしている。
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