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しおりを挟む唇を奪いながら七海の手が俺のスーツのボタンを外す。
ネクタイを緩められ、シャツの上から身体を撫でられる。
慌てて身体を押し返そうとしたが、きつく舌を吸われるとそっちに意識を持ってかれてしまう。
「――っ」
不意に俺の足を割って入って来た太腿が、ぐいと下腹部を刺激する。
ピクリと反応したらじゅっと舌先を吸われた。
「…ん、んっ」
自分でも知らない、鼻にかかった声が勝手に口から漏れる。
腰に響くような甘い疼きが、次から次へと込み上げてくる。
「ああ、気持ちいい事に素直な身体なんですね」
唇が離れ、熱く吐き出す呼気と共に耳を舐めあげられる。
そんな場所を舐められたことなどなく、ゾクゾクと込み上げる何かを目の前の身体に縋り付いて耐える。
その間もずっと煽るように半身を刺激され、こんな風に熱が溜まっていく感覚は今までに体験したことのないものだった。
「可愛いです、先生」
「――せん…」
完全に与えられる快楽にとろりと惚けていたが、『先生』と呼ばれ急激に意識が戻ってくる。
ゆっくりとピントが合うように、目の前の七海と視線を合わせる。
ニッコリと微笑まれて、背筋が凍りついた。
俺は今何をしている。
何をされている。
誰に。
「――は、離せっ」
「わっ、いきなりどうしたんすか」
いつの間にか拘束が緩んでいたことに気付き、慌てて目の前の身体を押しのける。
が、逃さないとばかりに手首を掴まれた。
「お、お前自分が何したのか分かってるのか」
「…はぁ?分かってますよ。言ったでしょう。俺先生が好きだって」
「お前は生徒で俺は教師だ。恋愛対象になりはしない」
「なんでいきなり…あ」
何か気付いたように七海が声をあげる。
いつの間にか上がっている呼吸と、乱されたスーツに気付いて慌てて身だしなみを整える。
俺は何をやっているんだ。
「そうか。先生って呼んだのがいけなかったんですね。分かりました」
「何を言っている」
「今度からこういう時は先生、じゃなく名前で呼びますね」
「――は?」
今度があるものか。
だが七海は全く反省も後悔もしていない顔で、屈託のない笑顔を俺に向ける。
「ミハヤだし、みーちゃんって呼んでいいですか?」
「よし、お前はあとで生徒指導室に来い」
「えっ、いいんですか?」
キラキラと輝いた視線を寄越された。
コイツ何かデートの誘いとでも勘違いしているのだろうか。
この場で説教してやろうと思ったが、不意に予鈴が鳴る。
ゆっくりしている暇などない。
授業が始まってしまう。
「おい、離せ」
「ええ?離しませんよ。これからいいところなのに」
「ふざけるな。授業をサボる奴を俺は絶対に許さない」
覚醒した意識できっぱりと七海の顔を睨みあげてそう言うと、七海は一度目を瞑ってから俺を離した。
「分かりましたよ。そこは本気でダメなんでしょうし…先生に嫌われたくはないのでしょうがないです」
どこかしょんぼりと垂れ下がるような犬の耳と尻尾が見えるようだったが、一瞬で気を取り直したのか悪戯に揺れる視線が俺を捉える。
「まあ最初なんで先生の可愛い姿見れただけで満足です。次はもっと気持ちいいことしましょうね」
気持ちいいこと、と言われて今しがたの行為が蘇る。
ゾクリと身体に痺れるような熱がこみ上げて、慌てて俺は机に置かれていた眼鏡を取った。
「次があるわけないだろう。お前は要警戒生徒だ」
「えー、あんな気持ちよさそうな顔してたのに」
「……っ、黙れ。自分の情欲を無理やり人に押し付けるなど言語道断だ。お前が何を言おうと、俺にはただの自己中心的な子供にしか見えない」
「あー!また人のこと子供扱いして。子供じゃないっすよー」
子供はみんなそう言う。
だが今はのんびり説教している暇もなく、俺は教科書を取ると七海に戻れと告げる。
散々吸い付かれた唇が、いまだ痺れるような熱を持っていた。
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