ドSワンコとクズ眼鏡

うさき

文字の大きさ
上 下
5 / 132

4

しおりを挟む

 今のは聞き間違えだろうか。

 ああいや、好きとは恐らく人間的に好きということだろう。
 俺の指導態度が気に入ったということなら、中々見どころのある生徒じゃないか。

「あっ、先生。誤解オチとかつまらないんでハッキリ言いますけど、ちゃんと恋愛感情での好きですからね」

 逃げ道を塞がれた気がした。
 いや待て、何を逃げる必要がある。

「くだらん冗談を言うな。お前は生徒であって俺は教師だろう」
「え、そこですか?男同士の方言われると思ったんですけど、そこ問題ないならいけますね」
「いやいや、ちょっと待て。そこも問題だ。大問題だ。そもそも歳だって違いすぎる」
「大丈夫ですよ。歳の差くらい俺が埋めてあげます。他に何か不安はありますか?」

 不安しかないんだが。
 いやそういう問題じゃない。

「あー…あれか。お前何かストレスでもあるのか。それかイジメでもされているのか。誰に言えと言われた。俺がちゃんと説教してきてやるから――」
「誰に何も言われてませんし、思春期特有の悩みもストレスもありません。まあ簡単に信じてもらえるとは思っていないんで、これから一年かけて先生に分かってもらいますね」
「は?」
「だって先生俺の事まだ知らないでしょう。俺も先生のこともっと知りたいですし」
「いや…え?」

 今まで生きてきて一度も遭遇したことのない事態に、対応策が思いつかない。
 いや恋愛経験がないわけじゃないが、相手は教え子でそれも男とかどういう冗談だ。
 ひょっとして生徒に恨まれすぎて、新手の仕返しでもされているんだろうか。

 七海はそんな俺の心境を余所に言いたいことを言い終えると、無遠慮に俺の顔に手を伸ばしてきた。
 反射的に目を瞑ると、頬を撫でて耳に伸びた手が俺の眼鏡をスッと取り上げる。

「おい、お前何して――」
「うん。やっぱり可愛いです。これから二人の時は眼鏡取ってくださいね」
「ふざけるな。いい加減にしろ」

 怒気を強めた口調で言って、眼鏡をガッと奪い返す。
 確かに年の割に童顔なのは認めるし、この眼鏡も生徒指導という立場の元なるべく威圧的に見えるフレームをチョイスしてはいる。
 だが決して可愛いと持て囃されるような顔ではないし、ましてやこんな一回りも年下の生徒に言われるほど幼い顔でもない。

 再び眼鏡を掛けて七海を見ると、怒られることに怯える顔も、不安に揺れる瞳も何一つなかった。
 ただ至極嬉しそうに、その瞳が眩しげに俺を見て微笑む。

「――先生、好きです。やっと会えました。俺の運命の人」

 僅かに開いていた窓から最後の桜の花びらが舞い込んで、七海の髪にひらりと落ちる。
 自分の思ったことを信じて疑わない真っ直ぐすぎる瞳は、ただひたすらに俺の心をざわつかせていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

【R-18】僕は堕ちていく

奏鈴
BL
R-18です。エロオンリーにつき苦手な方はご遠慮ください。 卑猥な描写が多々あります。 未成年に対する性的行為が多いですが、フィクションとしてお楽しみください。 初投稿につき読みづらい点もあるかと思いますがご了承ください。 時代設定が90年代後半なので人によっては分かりにくい箇所もあるかもしれません。 ------------------------------------------------------------------------------------------------- 僕、ユウはどこにでもいるような普通の小学生だった。 いつもと変わらないはずだった日常、ある日を堺に僕は堕ちていく。 ただ…後悔はしていないし、愉しかったんだ。 友人たちに躰をいいように弄ばれ、調教・開発されていく少年のお話です。 エロ全開で恋愛要素は無いです。

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

土方の性処理

熊次郎
BL
土方オヤジの緒方龍次はある日青年と出会い、ゲイSEXに目醒める。臭いにおいを嗅がせてケツを掘ると金をくれる青年をいいように利用した。ある日まで性処理道具は青年だった、、、

処理中です...