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しおりを挟む「真島ー、宿題やって」
「はい。ノートだしてね。あとで復習しやすいように分かりやすくポイントも書いておくね」
「真島ー、腹減った」
「何が食べたいかな。健康を重視してお野菜と――」
「いや肉だろ」
「じゃあハンバーグがいいかな。玉ねぎも人参もしいたけも細かくしていれて…たくさん食べれるように大きく作るね」
「真島ー」
「はい。なんでも言ってね。なんでも聞くよ」
メロメロだった。
どうしようもなくもうデレデレでメロメロで幸せだった。
彼が世界で一番大切で、自分なんかより全然大事で、彼の言うことは何でも叶えてあげたくてそれ以上のこともしてあげたくて頭の中が彼一色だった。
友達になろうと言おうと思ったはずが、勢い余って大泣きして告白してしまって、それでも高瀬くんが受け入れてくれた。
もちろん高瀬くんが俺と同じ気持ちを持っていないことはちゃんと分かっているけど、それでも彼を見ているだけだった日々に比べればどれほど贅沢なのか。
側にいられるだけで良かった。
彼の近くにいることを許されて、その目に俺を映して話しかけて時たま笑いかけてくれる。
そのことが本当に幸せで、一日一日が大切だった。
彼に望むことなんて何一つない。
ただ俺を隣に置いてくれるだけで天にも昇る気持ちになれる。
そう思ってた。
本当に、そう思っていたんだ。
――触りたい。
抱きしめたい。
キスしたい。
それ以上もしたい。
他の誰にも見せたくない。
自分だけを見ていてほしい。
ずっと一緒にいたい。
だからこんなどうしようもなく真っ黒な気持ちが自分から生まれるなんて思いもしなかった。
それはあまりに酷い独占欲で、こんなんじゃいつか俺は見限られてしまう。
必死に抑え込もうとしても、抑え込めば抑え込むほど苦しくて代わりに涙が溢れる。
好きで、大好きで、一番情けない姿を見せたくない人なのにどうしても涙が止まらない。
いつか別れられてしまうんじゃないかと思ったらすごく怖くて、想像するだけで身体が竦む。
「あーあ。ったくほんとお前って泣き虫」
「ご…ごめん。俺普段はこんなんじゃなくて――」
「知ってるよ、バーカ」
高瀬くんは俺の涙を袖でグシグシ拭いながら、天使なんか足元にも及ばない笑顔で俺に笑いかける。
彼の優しさと笑顔にあっという間に涙は止まって、幸せな気持ちが溢れ出していく。
俺の感情の全ては高瀬くんに支配されてるんじゃないかというほど、彼の一挙一動に心が動かされる。
良かった。まだ一緒にいてくれる。
お弁当のリクエストもしてくれたから、明日も一緒にいられる。
いつ捨てられるのか分からなくていつも怖くて、それでも彼が俺を必要としてくれるたびに麻薬のような甘い感覚に囚われて俺はもう周りが何も見えなかった。
そう、本当に見えていなかった。
高瀬くんを見ているようで、俺は彼のことを、彼の気持ちを全然見ることが出来ていなかった。
いつも自分のことでいっぱいいっぱいで、好きな感情をひたすら彼に押し付けることしか出来ていなかった。
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