ベタボレプリンス

うさき

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 背中を舐められ、確かめるように尻を触られ、そこから割って入ってきた指先がそういう目的で作られていない箇所をぐにぐにと押してくる。
 不意にとろりと冷たい感触がして顔を振り向かせたが、同時にキスをされた。

「…なに…っ」
「ちょっと…我慢してね」
「――っあ」

 つぷり、と身体の中に異物が入り込んでくる感覚。
 尻穴に指を差し込まれた事を知って、俺はシーツに顔を埋めながらもう半泣き状態になっていた。
 マジかよ。いやちょっと、マジかよ。

 ケツに指突っ込まれている現実に半泣きになっているだけでなく、コイツがさりげなくローションとかちゃっかり用意していた事実にも泣きたくなってくる。

 コイツ最初からそのつもりだったな。
 どこに隠し持ってやがった。
 
 俺の気持ちなんか知る由もない奏志は、鼻に詰まったままのティッシュを更に赤く染めながら、何度も俺にキスしてくる。
 だが鼻栓のせいで息が出来ないらしく、そう長くは続かない。

 ぐにぐにと差し込まれた指が、明らかに中を解すような動きをする。
 感じたことのない圧迫感に俺はたまらずシーツを握りしめて頭を振った。
 
「やっ…う、動かすな…無理――もう無理だからっ…」
「…っ大丈夫。大丈夫だからね」

 明らかに上擦った興奮してる声で大丈夫と言われても全く安心出来ないんだが。
 半ば押さえつけられてんじゃねーかというような力で俺が逃げないように覆いかぶさり、頬やこめかみに口付けしながら俺の中に埋めた指を動かしてくる。
 初めての感覚は到底すぐに慣れるようなモンでもなく、何度も無理だと言っているのに奏志は俺を離してくれない。
 身を捩る俺を抑えつけて、遠慮なく指を増やし押し込めてくる。

「あっ、あっ…無理だっ…あぅ…くっ」
「はぁ…可愛い。すごく可愛い声出てる」
「嫌だ、嫌だっ…聞くな…っ」

 勝手に女みたいな高い声が出て、自分でも死にたくなる。
 こんなのは俺じゃない。
 自分が自分じゃなくなりそうな知らない声が出て、酷い羞恥に目眩がする。

 枕に顔を埋めて堪えていたら、顎を取られて声が聞きたいと強請られる。
 指を抜き差しされるたびに濡れた音が室内に響いて、恥ずかしさで俺は限界だった。

「も…やだ…奏志…っ」

 堪らず懇願するように涙で霞む目で見上げたら、ブチッと音がしそうなほど目の前の瞳から理性が抜けていくのが分かった。
 どうやら何か今、俺はトドメをさしたらしい。

「ああもう…優しくしたいのに…こんなの我慢できない…っ」
 
 いつもの俺を愛でるような触れ方ではなく、荒々しく乱暴に押し込めていた指を引き抜かれる。
 悲鳴に似た声が俺からもれたが、それすらも今のコイツには劣情を煽るものにしかならない。
 カチャカチャとベルトを外す音がして、ギョッとして俺は振り向いた。

「待て、無理だっ…絶対無理っ。頼むからっ…」

 背中を押されて、シーツに身体が沈み込む。
 明らかに俺とは質量の違うものが尻に当たって、身体が堅く強張った。
 噓だろ。

「――ごめんね。ごめん…っ。ごめんなさい」

 謝るのかよ。
 もう嫌な予感しかしない。

 直後、目の前がブレるような物凄い圧迫感が身体に訪れる。
 力任せに捩じ込まれる感覚に目の前に星が飛ぶほどチカチカと衝撃を受ける。

「――っは…」

 もう声も出ないほど俺は目を見開いて、初めての衝撃を後ろから受け入れていた。

 マジでありえねえ。
 コイツ無理やり突っ込んできやがった。

「ごめん、大好きだよ…っ、愛してるよ…っ」

 後ろからぴったりと肌を重ねて抱きしめて、酷く荒い呼吸で何度も言われる。
 慣らしてくれていたおかげでなんとか奥まで受け入れてはいたが、それでも今まで体験したことのない感覚に俺は完全に瞠目していた。
 奏志もかなり苦しそうだったが、コイツに同情なんかしてやる余地はない。

「――っあ、あッ…やめっ」
「…っは、高瀬くんっ、高瀬くん…っ」

 そこからはもう、完全に発情期の雄犬だった。
 ガツガツと容赦なく後ろから抱き締められたまま腰を振られる。

 腹が苦しい。息が苦しい。無理だ。無理。やめてくれ。

 何度そう言っても聞いてくれず、何度も何度も後ろから突き上げて、揺さぶられる。
 ずっとこうしたかったんだと、ずっと我慢していたんだと言わんばかりに容赦なく突き動かされる。

 目からボロボロと生理的な涙が溢れて、それすらも逃さないと目元に吸い付かれる。

「むり…っ、あッ、あ…ッ、もうむりだからっ…」
「好きだよ…っ。大好き、大好きだよ…っ」

 啜り泣きながら俺は奏志のされるがままになっていて、完全に犯されていた。

 本当に、本能のままに欲望を貪る獣みたいだった。
 コイツが今までどれほど俺を我慢してきたのかということを、痛いほど知った。
 腹ん中いっぱいの圧迫感から必死に逃れるように手を伸ばしてシーツを掴む。
 その手の上から力強い手が重ねられて、また何度も執拗に腰を揺さぶられる。

「――っ」

 程なくして俺の中で一気にドクドクと熱い感覚があって、奏志がイッたんだと知る。
 何を言う間もなく思いっきり中出しだ。
 だが俺も今は何も言う気力がなくて、うつ伏せでぐったりとベッドに顔を埋めていた。
 目からぼろりと溢れた涙がシーツを濡らす。

 コイツ、絶対許さねえ。

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