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「なに、真島は?お前一人かよ」
「…飲み物買いに行ってくれてる。他の奴らはせっかくの修学旅行だから、楽しんでこいって先に行かせた」
「なるほどな。で、大丈夫かよ?」
ベンチで力なく項垂れてる青い顔を覗き込む。
見た感じ控えめに言ってダメそうだ。
もう俺に絡んでこないで黙って寝てろ。
「な、なんでもねーよこのくらい。…それよりお前、修学旅行中にまた奏志にひでーことしただろ」
青い顔してるくせに、俺を見上げる視線は変わらずに鋭い。
「ひでーことって…ただの喧嘩だよ。ちゃんと仲直りしたし別にいーだろ」
「お前にとってはそれくらいの事かもしれねーけど。…でもアイツはずっと修学旅行中落ち込んでたんだ。簡単にアイツの気持ちを――」
うわ、なんか説教はじまった。
コイツも相変わらず真島バカだな。
「おーい高瀬、先行くぞ――ってあれ、結城だ」
「うわっ、日比谷…」
グチグチと俺に捲し立てていた貞男の顔が引き攣る。
どうやら貞男はヒビヤンが苦手らしい。そういや前に夏休みの課題を無理矢理手伝わされてたことあったな。
何はともあれナイスタイミングだ。
それじゃあまたな、と流れに乗って立ち去ろうと踵を返す。
「――たっ、高瀬くん!」
そこに、ハッピーエンドを迎える事が出来た忠犬ハチ公の如く、キラキラと顔を輝かせた真島が現れた。
目にも留まらぬ速さで俺の目の前へ来ると、あっという間に情けなく顔を緩ませる。
「ど、どうしてここにいるのっ?会えて嬉しいなあ、大好きだよ」
「――ちょっ」
流れるような口調でさらっと言われて、ギクリと身体を強張らせる。
俺の態度で真島も今しがたの自分の発言に気付いたのか、あっ、と呑気な声をあげた。
あっ、じゃねーよ。
コイツ思ったことそのまま口に出しやがったな。
慌てて後ろを見たら、ヒビヤンが必死に笑いを堪えていて、貞男が白目を剥いていた。
聞かれたのがまだこの二人でよかったが、さすがにこれは後で真島にお仕置きコースだ。
「ご、ごめんねっ。俺昨日の事がまだ頭から離れなくてつい――」
「ああもうお前墓穴しか掘らねーからちょっと黙ってろ。それより貞男に飲み物買って来たんじゃねーのかよ」
真島が来てからまだ二言しか話してないのに、あっという間に俺のライフが持っていかれたんだが。
慌てたように真島は貞男に飲み物を渡しているが、完全に貞男にトドメを刺したのはお前だ。
「へー、昨日どこで何やってたんだ?へー」
そしてヒビヤンが横から茶化しながら小突いてくる。
うぜえ。
「わっ…ひ、日比谷くんっ」
「よー真島。相変わらず俺の事見えてねーな」
真島は今ヒビヤンに気付いたらしく、慌てたように俺とヒビヤンの間に割って入って来る。
それからぐいと隠すように自分の背後へ俺の腕を引いた。
おお、すげーライバル視してるな真島。
七海の時は全く気にしてなかったくせに、ヒビヤンに対しては昨日のメッセやら風呂の件で何か火が付いたらしい。
それにしても今回の喧嘩にしろ今のヒビヤンに対する態度にしろ、真島は本当に俺への感情を遠慮しないようになってきた。
時たま怯えたように自分の感情をひた隠しにすることはあるが、昨日だって俺が返事をしないにも関わらずあんなに一緒にいようと強請ってきた。
ずっと人の顔色を伺って怯えてきた頃を思えば、今の姿は普通なら当たり前でも、俺には特別なことのように嬉しい。
大事に育てられてきたワンコが初めての威嚇をするような態度に、内心でおー頑張れ、と微笑ましい気持ちで見つめてしまう。
「何ニヤニヤ面白がってんだお前」
ヒビヤンと貞男にダブルツッコミされた。
「…飲み物買いに行ってくれてる。他の奴らはせっかくの修学旅行だから、楽しんでこいって先に行かせた」
「なるほどな。で、大丈夫かよ?」
ベンチで力なく項垂れてる青い顔を覗き込む。
見た感じ控えめに言ってダメそうだ。
もう俺に絡んでこないで黙って寝てろ。
「な、なんでもねーよこのくらい。…それよりお前、修学旅行中にまた奏志にひでーことしただろ」
青い顔してるくせに、俺を見上げる視線は変わらずに鋭い。
「ひでーことって…ただの喧嘩だよ。ちゃんと仲直りしたし別にいーだろ」
「お前にとってはそれくらいの事かもしれねーけど。…でもアイツはずっと修学旅行中落ち込んでたんだ。簡単にアイツの気持ちを――」
うわ、なんか説教はじまった。
コイツも相変わらず真島バカだな。
「おーい高瀬、先行くぞ――ってあれ、結城だ」
「うわっ、日比谷…」
グチグチと俺に捲し立てていた貞男の顔が引き攣る。
どうやら貞男はヒビヤンが苦手らしい。そういや前に夏休みの課題を無理矢理手伝わされてたことあったな。
何はともあれナイスタイミングだ。
それじゃあまたな、と流れに乗って立ち去ろうと踵を返す。
「――たっ、高瀬くん!」
そこに、ハッピーエンドを迎える事が出来た忠犬ハチ公の如く、キラキラと顔を輝かせた真島が現れた。
目にも留まらぬ速さで俺の目の前へ来ると、あっという間に情けなく顔を緩ませる。
「ど、どうしてここにいるのっ?会えて嬉しいなあ、大好きだよ」
「――ちょっ」
流れるような口調でさらっと言われて、ギクリと身体を強張らせる。
俺の態度で真島も今しがたの自分の発言に気付いたのか、あっ、と呑気な声をあげた。
あっ、じゃねーよ。
コイツ思ったことそのまま口に出しやがったな。
慌てて後ろを見たら、ヒビヤンが必死に笑いを堪えていて、貞男が白目を剥いていた。
聞かれたのがまだこの二人でよかったが、さすがにこれは後で真島にお仕置きコースだ。
「ご、ごめんねっ。俺昨日の事がまだ頭から離れなくてつい――」
「ああもうお前墓穴しか掘らねーからちょっと黙ってろ。それより貞男に飲み物買って来たんじゃねーのかよ」
真島が来てからまだ二言しか話してないのに、あっという間に俺のライフが持っていかれたんだが。
慌てたように真島は貞男に飲み物を渡しているが、完全に貞男にトドメを刺したのはお前だ。
「へー、昨日どこで何やってたんだ?へー」
そしてヒビヤンが横から茶化しながら小突いてくる。
うぜえ。
「わっ…ひ、日比谷くんっ」
「よー真島。相変わらず俺の事見えてねーな」
真島は今ヒビヤンに気付いたらしく、慌てたように俺とヒビヤンの間に割って入って来る。
それからぐいと隠すように自分の背後へ俺の腕を引いた。
おお、すげーライバル視してるな真島。
七海の時は全く気にしてなかったくせに、ヒビヤンに対しては昨日のメッセやら風呂の件で何か火が付いたらしい。
それにしても今回の喧嘩にしろ今のヒビヤンに対する態度にしろ、真島は本当に俺への感情を遠慮しないようになってきた。
時たま怯えたように自分の感情をひた隠しにすることはあるが、昨日だって俺が返事をしないにも関わらずあんなに一緒にいようと強請ってきた。
ずっと人の顔色を伺って怯えてきた頃を思えば、今の姿は普通なら当たり前でも、俺には特別なことのように嬉しい。
大事に育てられてきたワンコが初めての威嚇をするような態度に、内心でおー頑張れ、と微笑ましい気持ちで見つめてしまう。
「何ニヤニヤ面白がってんだお前」
ヒビヤンと貞男にダブルツッコミされた。
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