130 / 251
120
しおりを挟むさっきまでの理性的な発言はどこへ行ったのか、あっという間に俺に手を伸ばしてきたから、『待て』とそれを押し止める。
明らかに今この場所ではまずい。
俺と真島が外に出ていったのを知ってるギャラリーが、今どこで見ているかも分からん。
あっという間にカッカしながら鼻息荒くなってる真島に、ついてこいと俺は促す。
「ど、どこいくの」
「俺の部屋。みんな女子部屋行ってて今いねーから」
「えっ、だ、大丈夫なのかな」
「分かんね。でもお前に触りてーし」
「…う、ちょっと…やばい。また鼻血出そう」
おいおい、と振り向いたら、真っ赤になった顔が切羽詰ったように俺を見下ろしていた。
「大丈夫。まだ出てねーから」
「は、早く行かないと出るかも」
「それはやばいな」
どんな会話だ。
というかどんだけ興奮してんだ。
かく言う俺も真島に触りたくて、もう限界だ。
部屋の中は真っ暗で、案の定誰もいなかった。
洗面所から覗く僅かな予備灯の明かりだけが、かろうじて室内を照らしている。
扉を締めたらすぐに引き寄せられて、息が詰まるほど力強い手に抱き締められた。
それこそ身体が浮かび上がるほどに、かき抱くような真島の手のひらを背中に感じる。
バクバクとすぐ耳元で鳴っているような心臓の音に、まだキスもしていないのにあっというまに呼吸が上がってしまう。
「…どうしよう。本当に嬉しい」
真島が俺の首筋に顔を埋めて、急くように何度も額を擦りつけてくる。
こそばゆさに身じろいだら、それすらも愛しいとばかりにそのまま首筋に口付けられる。
「…っこら、くすぐったい」
ふふ、と笑ったが真島は余裕が無いようで、伸びてきた指先が俺の唇に触れた。
一度なぞったがすぐにそれは強引に唇を割って入り込んできて、俺の舌に触れるとその感触を確かめられる。
「…はぁ、堪らない」
上擦った声で囁かれて、ゾクゾクと背筋に甘い痺れが走り抜けた。
勢いよく指を引き抜かれて、代わりに噛み付くように真島の唇が俺の唇に重ねられる。
唇を吸われ、舌を絡め取られて、口の中を好き勝手に貪られる。
普段の真島の姿からは想像つかないほど、荒々しく乱暴なキスだった。
酷く真島が興奮していることが伝わってきて、足先から頭の天辺まで一気に駆け抜けるような衝動が込み上げる。
「…っあ」
いつの間にか玄関横の壁に押し付けられるように抱き締められていて、キスをしたまま真島の手が浴衣越しに俺の身体を撫であげる。
その熱い手のひらの感触にゾクリと身体を震わせたら、指先がするりと首筋をなぞり俺の浴衣の合わせを引っ張る。
意図したような手付きにドキリと心臓が跳ねたが、次の瞬間にはガバっと身体を引き離されていた。
苦しそうに肩で息をしながら、真島は顔を俯かせる。
痣が出来そうなほど強い力で肩を掴まれて、どれほど真島が堪えているかが伝わってきた。
分かってはいたが、やっぱりここら辺が限界らしい。
「…ああ、そうだ。お前に身体見せてやるって言ったんだっけ」
「――だ、ダメだよ。それは…っ」
ガバっと真島が顔をあげる。
「え、でも別にみんな見たぞ。ヒビヤンだって一緒に風呂入ったし」
「……」
真島の目がどこか据わって、すっとその手が俺の浴衣の襟に伸びる。
無意識なんだろうが、面白くないらしい。
コイツなんかヒビヤンは特に意識するんだよな。
引き合いに出して悪いとは思ったが、俺だって真島に触ってもらいたくて必死だ。
7
お気に入りに追加
864
あなたにおすすめの小説
ガランド・マカロン「特別な人編」
さすらいの侍
BL
【20・30代女性向け】【完結】【土日休みにイッキ読み】【12万文字】【あらすじ】「オレたちに正しい恋なんていらない」超能力者・待鳥 十才は、覚醒剤密輸組織への潜入捜査を決意し、情報を掴もうとする。しかし、その先で待ち受けていたのは、同じく超能力者の賀野だった。十才が掴んだ情報は、実は幻に過ぎなかった。超能力の激闘が繰り広げられる中、戦いを制したのは賀野。彼は冷酷に告げる、「この薬を飲んで私の子分になるか、今この場で死ぬか、どちらか選べ」。絶望の中で、十才は選択を迫られ、運命が大きく動き出す…。【ご縁が続きますように。「⭐︎お気に入り」追加でいつもそばに。】
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
番って10年目
アキアカネ
BL
αのヒデとΩのナギは同級生。
高校で番になってから10年、順調に愛を育んできた……はずなのに、結婚には踏み切れていなかった。
男のΩと結婚したくないのか
自分と番になったことを後悔しているのか
ナギの不安はどんどん大きくなっていく--
番外編(R18を含む)
次作「俺と番の10年の記録」
過去や本編の隙間の話などをまとめてます
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件
水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。
そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。
この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…?
※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる