ベタボレプリンス

うさき

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 さっきまでの理性的な発言はどこへ行ったのか、あっという間に俺に手を伸ばしてきたから、『待て』とそれを押し止める。
 明らかに今この場所ではまずい。
 俺と真島が外に出ていったのを知ってるギャラリーが、今どこで見ているかも分からん。
 
 あっという間にカッカしながら鼻息荒くなってる真島に、ついてこいと俺は促す。
 
「ど、どこいくの」
「俺の部屋。みんな女子部屋行ってて今いねーから」
「えっ、だ、大丈夫なのかな」
「分かんね。でもお前に触りてーし」
「…う、ちょっと…やばい。また鼻血出そう」

 おいおい、と振り向いたら、真っ赤になった顔が切羽詰ったように俺を見下ろしていた。

「大丈夫。まだ出てねーから」
「は、早く行かないと出るかも」
「それはやばいな」

 どんな会話だ。
 というかどんだけ興奮してんだ。
 かく言う俺も真島に触りたくて、もう限界だ。


 部屋の中は真っ暗で、案の定誰もいなかった。
 洗面所から覗く僅かな予備灯の明かりだけが、かろうじて室内を照らしている。

 扉を締めたらすぐに引き寄せられて、息が詰まるほど力強い手に抱き締められた。
 それこそ身体が浮かび上がるほどに、かき抱くような真島の手のひらを背中に感じる。
 バクバクとすぐ耳元で鳴っているような心臓の音に、まだキスもしていないのにあっというまに呼吸が上がってしまう。

「…どうしよう。本当に嬉しい」

 真島が俺の首筋に顔を埋めて、急くように何度も額を擦りつけてくる。
 こそばゆさに身じろいだら、それすらも愛しいとばかりにそのまま首筋に口付けられる。
 
「…っこら、くすぐったい」

 ふふ、と笑ったが真島は余裕が無いようで、伸びてきた指先が俺の唇に触れた。
 一度なぞったがすぐにそれは強引に唇を割って入り込んできて、俺の舌に触れるとその感触を確かめられる。

「…はぁ、堪らない」

 上擦った声で囁かれて、ゾクゾクと背筋に甘い痺れが走り抜けた。
 勢いよく指を引き抜かれて、代わりに噛み付くように真島の唇が俺の唇に重ねられる。
 唇を吸われ、舌を絡め取られて、口の中を好き勝手に貪られる。

 普段の真島の姿からは想像つかないほど、荒々しく乱暴なキスだった。
 酷く真島が興奮していることが伝わってきて、足先から頭の天辺まで一気に駆け抜けるような衝動が込み上げる。

「…っあ」

 いつの間にか玄関横の壁に押し付けられるように抱き締められていて、キスをしたまま真島の手が浴衣越しに俺の身体を撫であげる。
 その熱い手のひらの感触にゾクリと身体を震わせたら、指先がするりと首筋をなぞり俺の浴衣の合わせを引っ張る。
 意図したような手付きにドキリと心臓が跳ねたが、次の瞬間にはガバっと身体を引き離されていた。

 苦しそうに肩で息をしながら、真島は顔を俯かせる。
 痣が出来そうなほど強い力で肩を掴まれて、どれほど真島が堪えているかが伝わってきた。
 分かってはいたが、やっぱりここら辺が限界らしい。

「…ああ、そうだ。お前に身体見せてやるって言ったんだっけ」
「――だ、ダメだよ。それは…っ」

 ガバっと真島が顔をあげる。
 
「え、でも別にみんな見たぞ。ヒビヤンだって一緒に風呂入ったし」
「……」

 真島の目がどこか据わって、すっとその手が俺の浴衣の襟に伸びる。
 無意識なんだろうが、面白くないらしい。
 コイツなんかヒビヤンは特に意識するんだよな。
 引き合いに出して悪いとは思ったが、俺だって真島に触ってもらいたくて必死だ。
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