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しおりを挟むヒビヤンとはまた同じクラスで、驚いたことに後ろの席だった。
「中村とか西村とか野村とか間にいねーのかよ」
「なんで村限定なんだ」
ヒビヤンがすかさず後ろからツッコミをいれてくる。
まあ新鮮味はないが、やりやすいっちゃやりやすいから不満はないが。
聞く所によると真島も貞男とはまた同じクラスだったらしい。
貞男の大喜びしている顔が目に浮かぶが、特進クラスって二つしかないしな。
「おいこら、最低ゲス野郎」
ドスッと背中を蹴られて、苛立ちと共に振り返る。
今日の昼休みは部活紹介オリエンテーションの準備があるからと真島に言われた。
隕石直撃間近の地球人みたいな顔した真島に弁当だけ貰って、その背中を見送ったところだった。
相変わらず俺を最低と罵る貞男は、人の顔を見てハン、と悪気なく鼻を鳴らす。
「ちょっと顔貸せ」
「え、無理。俺メシ食いたいし」
「い、一緒に食べればいいだろっ。今日は奏志がいないからお前と話出来るかと思って…っ」
何だコイツ。昼飯誘いに来ただけかよ。
それならそうとハッキリ言え。
貞男も弁当持参してるし、なら天気もいいから学食のテラスで食うかと提案する。
「せーんぱい!」
学食に行ったら相変わらず子犬のように飛んできた七海に纏わりつかれたが、二秒であしらってそのままテラスへ足を向ける。
だが俺のあしらいにも七海は慣れたモンで、貞男と七海という謎のメンバーで飯を食うことになった。
「何だコイツ」
貞男が苛立たしげに七海を見たが、七海は変わらず純粋な視線で俺にニコニコと笑いかけている。
「ああ、コイツ無視でいいよ。その辺の事情は知ってるし」
「なっ、先輩酷くないっすかっ」
「――お前奏志と別れるつもりなのか?」
いきなり本題に入ってきた。
だがコイツに飯を誘われた辺り、どうせ真島の話だろうということは分かっていた。
そして俺の言葉通り、綺麗に七海を無視しているコイツの性格も相変わらずだ。
「なんだよ、真島に泣きつかれでもしたか?」
何もそれは最近決めたことでもない。半年とまではいかないがそれくらい前の話だ。
それでも俺の中では全く褪せる事のない記憶だが。
貞男の言葉を聞き返しながら、弁当箱をカパッと開ける。
今じゃもうおせち料理かよというほど真島の料理スキルはアップしていた。
あいつの料理スキルは留まることを知らず、このままいったらフランス料理フルコースとか弁当に出てきそうだ。
「…奏志が俺にそんなことするかよ。ただあと一年とぼやいてたのを聞いただけだ。奏志のあんな顔は、お前に関わることしかねーから…」
貞男がなんか言ってる横でガツガツと飯を食う。
やっぱり真島は料理の天才だ。
俺が見込んだだけのことはある。
とか思ってたらひょいっと七海の手が伸びてきて、おかずを一品持ってかれた。
「ちょ、お前人の弁当取るのまじでやめろっ」
「えー、先輩ケチなこと言わないでくださいよっ。真島先輩の手作り弁当とか俺も食いたいですっ」
子供のような事を言う七海に構っていたら、貞男がピキピキと青筋を立てる。
あ、しまった。真面目な話してたっぽいし、さすがにキレられるか。
そう気付いたが時すでに遅し、貞男は真っ赤な顔で勢いよく口を開く。
「奏志の弁当とか…っ、俺も食いてーんだよっ!」
そっちかよ。
食堂を出て教室へ戻りながら、俺はさらっとだが貞男には卒業式で真島と別れることにしたと伝えておいた。
本気で真島のことを考えている奴だし、一応文化祭の時も世話になった。
だがヘタに俺達の事に茶々を入れられても面倒だから、俺が真島を好きだという事は伏せておいた。
「…つまり遊ぶだけ遊んでポイってか」
「まーそうだな。あいつ色々便利だし」
「…ふーん」
殴られるかと思ったが、別に貞男は殴ってこなかった。
まあもし殴ってきても今なら絶対に殴り返すが。
「お前はそれで後悔しないのかよ」
「はぁ?俺がするわけねーだろ。むしろ卒業式で別れなかったほうが後悔すんだよ」
きっぱりとそう言ったら、貞男は苛立ったように俺を睨む。
相変わらず美人の鋭い視線というものは、中々に迫力がある。
「やっぱりお前は最低だな。最低ビビリ野郎」
「おお、ゲスよりはマシだな。ありがとう」
「褒めてねーんだよっ」
殴られはしなかったが、ガツッとケツを蹴られた。
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