ベタボレプリンス

うさき

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 文化祭と二日間の休日を終えて、またダルい学校生活が始まる。
 休み中はなぜか熱があると勘違いした真島が、まだ寝起きだっつーのに俺の家に来た。
 真島に適当にしないと言ったから朝の挨拶にもちゃんと返してやっただけなのに、なんであそこまで話がこじれたのかアイツの思考はマジで分からない。
 
 あれから数日が経ち、文化祭の盛り上がりなんかすっかり忘れたように通常モードとなった教室をぼんやりと眺める。

 文化祭のあの日、俺はこの教室で真島とキスをした。
 ここで、この場所で。
 記憶にもまだ鮮やかな、オレンジ色の教室。
 遠くで聞こえる後夜祭のBGM。

 思い返してもクソ恥ずかしくなるような真島の台詞や仕草を思い返せば、いまだにゾワゾワと背筋にむず痒さが込み上げてくる。
 あれから真島との関係は急激に進展した、ということもなく、前と変わらぬ日常を繰り返していた。
 とはいえ目には見えないが実は俺の心境は結構変化していて、俺なりにアイツを適当に扱わないようにはしている。

「おー、なんか楽しそうじゃん」

 四限が終わり、昼飯に行くらしいヒビヤンに顔を覗き込まれた。
 相変わらず含んだような表情でニシシと笑ってくる。
 鬱陶しい。

 だがそろそろ真島が来るかなと思えば、俺も席を立ち上がる。
 ヒビヤンが少し驚いた顔をしたから、なんだよと小突きあいながら二人で廊下に出た。

「――あ、いたいた」

 不意に知らない奴が俺に手を上げて向かってくる。
 とりあえずスルーしたが、そいつは俺の目の前でしっかり立ち止まった。
 え、誰だコイツ。

「また今度って言ってたから、来ちゃいました」

 なんか人の良さそうな顔でニコニコと笑っている。

 真島くらいの高身長で、爽やかなスポーツ青年といった風貌。
 短めの茶髪と日に焼けた肌、目元の泣き黒子と笑った顔にはエクボが出来ていて、なんだか見るからに女受けしそうな顔をしている。

 とはいえ真島に見慣れている俺からすれば何だコイツという印象しか受けず、完全に不審者扱いで目を細めてやった。
 初対面にもかかわらず人懐っこそうな笑みを向けてくるソイツは、テンション高めに口を開く。
 
「先輩だったんですね。可愛いからタメかと思った」
「よし、お前ぶっ飛ばす」

 確かに俺は日本人男子の平均身長より少し低めだが、その差は誤差みたいなもんだ。
 決して低くはない。
 いきなり目の前に現れて可愛いとか煽ってきた男をどついてやろうかと思っていたら、ヒビヤンにパスンと頭を叩かれた。

「文化祭の時の奴じゃん。お前覚えてねーの」
「えっ」

 文化祭の記憶なんか、正直真島との思い出が濃すぎて他がかなり霞んでいる。
 だがよく見れば、そういやヒビヤンと一緒に一年の教室に行った超簡易合コン――フィーリングカップルとやらで俺とカップル成立した奴だ。
 もう忘れてた。

「ああ、お前か」
「えー、忘れないで下さいよ。俺探したんすよ」
「なんで」
「え?だってせっかくだし連絡先交換しようって言ったら、また今度って言ってくれたじゃないですか」

 何だコイツ。社交辞令というものを知らねーのか。
 そしてわざわざ探してまで男に連絡先を聞いてくるとか、貞男もビックリの律儀さだ。
 ドン引いていたら、ヒビヤンがため息を吐いた。

「…また変な奴わいたな」
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