補綴師(ほてつし)

電気羊の夢

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第二章 羽化

女性よりも女らしい男

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「それにしても、どこからどう見ても、本物の女だよねw」
「てゆーか、私たちよりも女らしいしw」

 生まれた時から女性だった彼女たちは、努力をしなくても女性でいられたので、女性になる為の努力をしている私の方が女らしいのは、当然の事と言えました。

 ただ、本物の女性である彼女たちが、女らしくするにはハードルがありました。

 本物の女性が過度に女らしくする事は、同じ女性から反感を買う行為で、女性の多くが、可愛さや美しさにリミッターを掛けて生活していました。

「美しくなり過ぎない事」…それは、女性社会の中で生きていく上で最も重要な事で、女性が、目の錯覚で太って見えるボーダー柄のトップスを無意識に選んでいる事も、そんな深層心理からくるものでした。

 そんな彼女たちがリミッターを解除するには言い訳が必要で、それは、成人式であったり、卒業式であったり、結婚式であったり、綺麗になっても反感を買わない状況が必要でした。

 それは、私も感じていて、エピテーゼで女装をする前の私は、全力で綺麗になろうと努力していましたが、今の私は、男性の筋肉質な体をベースにして、ワザと女らしくなり過ぎないようにしていました。

 また、洋服に関しても、以前は露出の多い洋服を好んで着ていましたが、今は流行を外さない程度の洋服を着ていて、今日の洋服も、胸元が露出し過ぎないスクエアネックのトップスと、脚が全く露出しないロングスカートを選択していました。

 そのお陰もあって、私は女性から話しかけられる機会が多くなり、今も、女子大生たちから気さくに話かけられていました。

「ねえ、触ってもいい?」
「うん、いいよw」

 私のエピテーゼが気になっていた女子たちは、弾力を確かめるように私の乳房を指先で触ってきました。

「すごい! 柔らかい!」
「本当! 本物と一緒だ!」
「うん! 私のより柔らかいかもw」

 私は自分の作品が認められて嬉しい気持ちになりました。

「ねえ、お尻もエピテーゼなの?」

 目ざとい女子大生たちは、私の下半身の体型の変化にも気付いていました。

「そうよw」
「えー、見せて!」
「ちょっとだけだよw」

 私は自分でスカートを捲り、彼女たちに太ももを披露しました。

「ここが継ぎ目なんだけど…」
「すごい、全然分からない!」
「もっと、お尻の方も見たい!」
「バカw こんな所で見せられないでしょw」
「そっかw」

 私は女性が相手なら、いくらでも裸を見せる事が出来ましたが、別のテーブルから私たちをチラ見している男たちには、体のどの部分も見せる気はありませんでした。

「あっ!そうだ!美月ちゃんって明日、予定ある?」
「別にないけど…」
「じゃあ、一緒にプールに行かない?」
「プール?」
「そう!ナイトプールw」
「ホテルのプールに行くのw」
「女同士で遊ぼうw」

 同級生の女子大生たちは、今年最後のナイトプールに行く予定でした。

 私は自分の女体を女性に見てもらう事が好きだったので、その提案は願ってもない事でした。

 ただ、私は一人で海水浴場に行った際に、ナンパ男たちに囲まれた苦い記憶がありました。

「ねえ、それだけ綺麗だったら、誰も男だって気付かないし!」
「そうそう、それに、ホテルの部屋で着替えるから、女子更衣室に行かなくてもいいし!」

 詩央里ちゃんたちは、私がナイトプールに行く事に戸惑っている理由を勘違いしていました。

「ねえ!3人よりも4人の方が楽しいから、一緒に行こう!」

 私は男の前で水着姿になる事を躊躇っていましたが、彼女たちと一緒になってから、ナンパをされていない事に気付きました。

 女モードになった私は、頻繁にナンパされていましたが、それは、一人でいた事が原因の一つだと気付き、女性4人で固まっていればナンパされる頻度は低くなる筈でした。

「いいよw 一緒に行こうw」
「やった!」

 女子大生たちは、私と一緒にプールに行ける事を喜んでいました。

「それでね、これから3人で水着を見に行くんだけど…」
「良かったら、美月ちゃんも一緒に来ない?」

 私は女子たちから買い物に誘われました。

 私はレディースの水着を持っていましたが、それは、体を露出したいと考えていた頃に買った物で、流行を無視した露出の多い水着は、女子たちの反感を買う代物でした。

 私はこの機会に、自分の体型に合った流行の水着を購入しようと思い、彼女たちの提案に乗る事にしました…。
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