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1章
2B-同郷
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奏太達は、まず冒険者としての生活の拠点を決めるため、街の宿屋を探していた。
「う~ん。宿屋はどこにあるんだろうか……。文字がサッパリ読めなくて分からないな……。」
言葉は通じるのに、文字は分からないとは、一体どういう仕組みなんだろうか。
「わぁ~!見てください!色んな楽器が置いてありますよ!
あ!こっちの店にも!」
響子がウキウキと店の品を眺める。
「そういえば、なんだか楽器屋が多い気がするな。」
流石音楽の国と言うべきか、まるで東京の御茶ノ水のように、至るところに楽器屋が店を構えている。
弦楽器が沢山置いてある店、打楽器がメインの店、管楽器専門店等、様々な種類の楽器店がある。
「おや、あれはーー」
その中でも随分ボロい店があり、看板を見るとーー
「あれって、どう見ても英語……だよな?」
雑な字で「Music」と書かれている。
「ひょっとして、私達と同じく召喚者の方が経営しているのでしょうか……?」
「折角だし入ってみるか。何か聞けるかもしれないし。」
奏太は恐る恐る店の扉を開いてみる。
『カランカラン』
「すみませ~ん。」
奏太が声をかけるが、中から反応はない。
留守なのかな?
誰も姿を現さないので、奏太がこのまま引き返そうとするとーー
「あ!あれ見てください!ギターがありますよ!」
響子が指を差す方を見ると、確かにギターが置かれている。
「フォーク・ギターでござるな。」
そこには、アコースティック・ギターの一種である、フォーク・ギターが置かれていた。
メーカー名は……書かれていないな。
「ーー誰かいるのか?」
奥から人の声が聞こえ、慌ててそちらの方に体を向ける。するとそこに一人のおっさんが現れた。
歳は自分より二回りほど上だろうか。髪の毛はオールバックで固めている。
目にはサングラスをかけ、革ジャンを羽織っている。
どう見てもヤバイ人だ。マズイ所に来てしまったかもしれない。
男のただならぬ風貌に、3人は完全にビビり、慌てて逃げようとするとーー
「おっ。なんだお前ら、ひょっとして異世界人のお客さんか?」
おっさんは明るい声で話しかけてきた。
「ええと、はい……。」
「久し振りの"同郷"モンか~。いや~嬉しいぜ~。」
同郷?
とするとひょっとしてこの人も……?
「あの~、おじさんも異世界から来られた人なんですか?」
響子が恐る恐る質問する。
「おじさんじゃねえよ!俺はこう見えて25だよ!」
ええ~……。い、意外すぎる。どう見ても40、いや、45と言われても納得出来る。
「まあ、俺が異世界人ってのは正解だ。俺は早馬 永吉。元日本人だ。」
「俺達もついさっき日本から召喚されたんだ。」
「っつーと、おたくら音楽家か?」
またか。この質問は何処に行っても付いて回るらしい。
「いや……、俺達は冒険者だ。」
またガッカリされるところを想像して、俺は少し身構える。
「フッ。」
案の定、永吉は俺達が冒険者だと聞いて笑いやがった。
奏太は『ギリッ』と歯を食い縛った。
「ーー気に入った。お前ら困ったときは、この早馬永吉を頼りな。
何でも力になるぜ。」
永吉の口から予想だにしない言葉が出てきて、奏太は拍子抜けする。
そんな奏太の様子を察してか、永吉は身の上話を始めたーー
「ーー俺は日本にいた頃、とある有名楽器メーカーで働いていたんだ。
元々音楽が好きで、幼い頃からピアノ、バイオリン、トランペット、ドラム、そしてギター、色んな楽器に挑戦した。
だがどれも花開かなかった。俺に音楽を奏でる才能は無かった。それでも俺は大好きな音楽から離れたくなかった。
ーーそこで俺は、楽器を作ることに興味が湧いたんだ。
色々勉強して、楽器のことを一から学んで、楽器を作る学校に通った。
寝る間も惜しんで楽器漬けの毎日を送り、その甲斐あって学校を卒業後、一流楽器メーカーに就職出来た。
だがーーそこで俺に与えられた仕事は、楽器を作ることではなく、楽器を売ること、つまり営業マンだった。
初めは大好きな楽器の素晴らしさを沢山の人に伝えるため、営業の仕事に燃えたが、段々と俺の楽器への理想が、製造部や会社の現実と合わなくなり、社内でよく衝突を起こすようになった。
ーーそしてある日、俺は上司に噛みつき、会社をクビになった。
楽器を演奏する才能に恵まれず、楽器を作る夢すら叶わず、職を失った俺は自暴自棄になっていた。
そんな折、この世界に召喚されたんだ。だがこの世界は演奏の才能が一番に評価される。
勿論俺は楽器が弾けないから、この国の奴らには笑われた。
だがそんな俺を国王は笑わず、俺に楽器を作る道を与えてくれたんだ。」
永吉がこの世界に来てからの経緯を語り終えたーー
「う~ん。宿屋はどこにあるんだろうか……。文字がサッパリ読めなくて分からないな……。」
言葉は通じるのに、文字は分からないとは、一体どういう仕組みなんだろうか。
「わぁ~!見てください!色んな楽器が置いてありますよ!
あ!こっちの店にも!」
響子がウキウキと店の品を眺める。
「そういえば、なんだか楽器屋が多い気がするな。」
流石音楽の国と言うべきか、まるで東京の御茶ノ水のように、至るところに楽器屋が店を構えている。
弦楽器が沢山置いてある店、打楽器がメインの店、管楽器専門店等、様々な種類の楽器店がある。
「おや、あれはーー」
その中でも随分ボロい店があり、看板を見るとーー
「あれって、どう見ても英語……だよな?」
雑な字で「Music」と書かれている。
「ひょっとして、私達と同じく召喚者の方が経営しているのでしょうか……?」
「折角だし入ってみるか。何か聞けるかもしれないし。」
奏太は恐る恐る店の扉を開いてみる。
『カランカラン』
「すみませ~ん。」
奏太が声をかけるが、中から反応はない。
留守なのかな?
誰も姿を現さないので、奏太がこのまま引き返そうとするとーー
「あ!あれ見てください!ギターがありますよ!」
響子が指を差す方を見ると、確かにギターが置かれている。
「フォーク・ギターでござるな。」
そこには、アコースティック・ギターの一種である、フォーク・ギターが置かれていた。
メーカー名は……書かれていないな。
「ーー誰かいるのか?」
奥から人の声が聞こえ、慌ててそちらの方に体を向ける。するとそこに一人のおっさんが現れた。
歳は自分より二回りほど上だろうか。髪の毛はオールバックで固めている。
目にはサングラスをかけ、革ジャンを羽織っている。
どう見てもヤバイ人だ。マズイ所に来てしまったかもしれない。
男のただならぬ風貌に、3人は完全にビビり、慌てて逃げようとするとーー
「おっ。なんだお前ら、ひょっとして異世界人のお客さんか?」
おっさんは明るい声で話しかけてきた。
「ええと、はい……。」
「久し振りの"同郷"モンか~。いや~嬉しいぜ~。」
同郷?
とするとひょっとしてこの人も……?
「あの~、おじさんも異世界から来られた人なんですか?」
響子が恐る恐る質問する。
「おじさんじゃねえよ!俺はこう見えて25だよ!」
ええ~……。い、意外すぎる。どう見ても40、いや、45と言われても納得出来る。
「まあ、俺が異世界人ってのは正解だ。俺は早馬 永吉。元日本人だ。」
「俺達もついさっき日本から召喚されたんだ。」
「っつーと、おたくら音楽家か?」
またか。この質問は何処に行っても付いて回るらしい。
「いや……、俺達は冒険者だ。」
またガッカリされるところを想像して、俺は少し身構える。
「フッ。」
案の定、永吉は俺達が冒険者だと聞いて笑いやがった。
奏太は『ギリッ』と歯を食い縛った。
「ーー気に入った。お前ら困ったときは、この早馬永吉を頼りな。
何でも力になるぜ。」
永吉の口から予想だにしない言葉が出てきて、奏太は拍子抜けする。
そんな奏太の様子を察してか、永吉は身の上話を始めたーー
「ーー俺は日本にいた頃、とある有名楽器メーカーで働いていたんだ。
元々音楽が好きで、幼い頃からピアノ、バイオリン、トランペット、ドラム、そしてギター、色んな楽器に挑戦した。
だがどれも花開かなかった。俺に音楽を奏でる才能は無かった。それでも俺は大好きな音楽から離れたくなかった。
ーーそこで俺は、楽器を作ることに興味が湧いたんだ。
色々勉強して、楽器のことを一から学んで、楽器を作る学校に通った。
寝る間も惜しんで楽器漬けの毎日を送り、その甲斐あって学校を卒業後、一流楽器メーカーに就職出来た。
だがーーそこで俺に与えられた仕事は、楽器を作ることではなく、楽器を売ること、つまり営業マンだった。
初めは大好きな楽器の素晴らしさを沢山の人に伝えるため、営業の仕事に燃えたが、段々と俺の楽器への理想が、製造部や会社の現実と合わなくなり、社内でよく衝突を起こすようになった。
ーーそしてある日、俺は上司に噛みつき、会社をクビになった。
楽器を演奏する才能に恵まれず、楽器を作る夢すら叶わず、職を失った俺は自暴自棄になっていた。
そんな折、この世界に召喚されたんだ。だがこの世界は演奏の才能が一番に評価される。
勿論俺は楽器が弾けないから、この国の奴らには笑われた。
だがそんな俺を国王は笑わず、俺に楽器を作る道を与えてくれたんだ。」
永吉がこの世界に来てからの経緯を語り終えたーー
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