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水の王国編
え、私伝説を見た?
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「削れー!!!!」
ティードの叫びに呼応するように近衛兵たちはレヴィアタンに魔法を放つ。渦のような魔法や光をぶつけるような魔法。様々な魔法がレヴィアタンに当たっては身に纏う魔物を削り取っていく。
そんな中、アウラ王子は単身レヴィアタンの目の前で注意を引きながら直接攻撃を加えていた。
アリスはクロードとニアに守られる形でレヴィアタンの真下に陣取っている。アリスを中心に巨大な魔法陣が展開されていく。リラから授けられた魔法。巨大な珊瑚による強力な拘束魔法。
「まだですかアリス様!」
「もう少しです! もう少し眷属を減らせられればレヴィアタンの体を捕らえられます!」
ティードの問いかけにアリスが答えるとニアが言う。
「アリス様。少し離れます。私とティードの融合魔法で一気に眷属を剥がします!」
アリスのそばにいる魔物はクロードとニアによってかなり数を減らしている。だからその提案は正しいように思える。私が怪我を治しているとはいえ近衛兵たちも疲労の限界が近い。未来が見えない限りこの選択は正しい。
「ティード行きますよ!」
ニアはそう言うとティードの隣に立って地面に手を当てる。すると巨大な空気の泡が吹き出してレヴィアタンに向かっていく。ゲームの設定集によれば、あれは水素と酸素でできた巨大な泡。
そして巨大な泡がレヴィアタンの腹部に触れた瞬間。ティードが持つ剣から稲光が真っ直ぐに伸びる。稲光が見えたのは一瞬。水素と酸素でできた空気に稲光が到達すると立っているのもやっとなほどの爆発が起きた。
「行きます!」
アリスがそう言うと魔法陣がひときわ輝いて魔法が発動する。地面から大量の珊瑚がレヴィアタンの腹部へ伸びる。眷属が剥がれて生身が見える腹部に珊瑚がぶつかり、レヴィアタンと眷属の間に滑り込むように広がっていく。
そして多くの眷属が剥がれたところでレヴィアタンの動きが完全に止まる。悲鳴のようなレヴィアタンの声は振動だけで私も苦しく感じる。
「これだけ止まっていてくれたら!」
アウラ王子は地面に足がつくまで沈み込むと三叉槍を構える。槍は金色に輝きだした。
「父さん、母さん……。僕に限界を超える力を……」
アウラ王子がそう呟くと三叉槍は更に青白い光と真っ赤な光を纏う。
「吹っ飛べ!!!!」
振り抜かれた三叉槍の衝撃はアウラ王子の上方全てを消し去る。モーゼが海を割ったなどと言うけど、私はその状況を目の前で見ているようだった。水深何百メートルとある湖の底から水を割り、雲を割り、その先の満月が眩しいくらいに綺麗に見える。
私は近衛兵の治療をしながらも、その瞬間だけは心の中で『スチルで見たやつだ!』と叫んで感動していた。
ゲームのシナリオと同じく、レヴィアタンはアウラ王子とアリス、そして近衛兵たちの力だけで討伐することができたのだった。
しかし……
「アリス様!」
クロードの叫びで勝利の余韻もなくその場にいた人たちは緊張に包まれてしまった。
ティードの叫びに呼応するように近衛兵たちはレヴィアタンに魔法を放つ。渦のような魔法や光をぶつけるような魔法。様々な魔法がレヴィアタンに当たっては身に纏う魔物を削り取っていく。
そんな中、アウラ王子は単身レヴィアタンの目の前で注意を引きながら直接攻撃を加えていた。
アリスはクロードとニアに守られる形でレヴィアタンの真下に陣取っている。アリスを中心に巨大な魔法陣が展開されていく。リラから授けられた魔法。巨大な珊瑚による強力な拘束魔法。
「まだですかアリス様!」
「もう少しです! もう少し眷属を減らせられればレヴィアタンの体を捕らえられます!」
ティードの問いかけにアリスが答えるとニアが言う。
「アリス様。少し離れます。私とティードの融合魔法で一気に眷属を剥がします!」
アリスのそばにいる魔物はクロードとニアによってかなり数を減らしている。だからその提案は正しいように思える。私が怪我を治しているとはいえ近衛兵たちも疲労の限界が近い。未来が見えない限りこの選択は正しい。
「ティード行きますよ!」
ニアはそう言うとティードの隣に立って地面に手を当てる。すると巨大な空気の泡が吹き出してレヴィアタンに向かっていく。ゲームの設定集によれば、あれは水素と酸素でできた巨大な泡。
そして巨大な泡がレヴィアタンの腹部に触れた瞬間。ティードが持つ剣から稲光が真っ直ぐに伸びる。稲光が見えたのは一瞬。水素と酸素でできた空気に稲光が到達すると立っているのもやっとなほどの爆発が起きた。
「行きます!」
アリスがそう言うと魔法陣がひときわ輝いて魔法が発動する。地面から大量の珊瑚がレヴィアタンの腹部へ伸びる。眷属が剥がれて生身が見える腹部に珊瑚がぶつかり、レヴィアタンと眷属の間に滑り込むように広がっていく。
そして多くの眷属が剥がれたところでレヴィアタンの動きが完全に止まる。悲鳴のようなレヴィアタンの声は振動だけで私も苦しく感じる。
「これだけ止まっていてくれたら!」
アウラ王子は地面に足がつくまで沈み込むと三叉槍を構える。槍は金色に輝きだした。
「父さん、母さん……。僕に限界を超える力を……」
アウラ王子がそう呟くと三叉槍は更に青白い光と真っ赤な光を纏う。
「吹っ飛べ!!!!」
振り抜かれた三叉槍の衝撃はアウラ王子の上方全てを消し去る。モーゼが海を割ったなどと言うけど、私はその状況を目の前で見ているようだった。水深何百メートルとある湖の底から水を割り、雲を割り、その先の満月が眩しいくらいに綺麗に見える。
私は近衛兵の治療をしながらも、その瞬間だけは心の中で『スチルで見たやつだ!』と叫んで感動していた。
ゲームのシナリオと同じく、レヴィアタンはアウラ王子とアリス、そして近衛兵たちの力だけで討伐することができたのだった。
しかし……
「アリス様!」
クロードの叫びで勝利の余韻もなくその場にいた人たちは緊張に包まれてしまった。
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