39 / 66
水の王国編
え、私魔法をもらえる?
しおりを挟む
封印の賢者の話を聞いて一瞬驚いた様子のアウラ王子だったが、その後すぐに落ち着いて歴史の教科書の説明をするかのように淡々と話し始めた。ベンネスを建国し子宝に恵まれて幸せに生きた水の王の話。レヴィアタン封印だけでなく水上交易の発展に貢献したことでも名が残っている話。
そして花の王については引き継ぐようにしてアリスが説明をした。各国を渡り歩き、6人の王を結びつけた伝説。二代目が王位を土の王に譲ってから世界に花を届ける貴族としてひっそりと過ごしていたこと。
2人とも話に伝え聞いていた物語を封印の賢者に話した。
「そう……。やっぱりお父様とお母様のことは歴史に残っていないのね」
封印の賢者は寂しそうに言う。
「今教えてくれた話は少し違うわ。多分語られている花の王はお母様の兄ね。そもそも花の国の国王は女王だし」
アリスとアウラ王子は突然明かされた真実に驚きを見せる。私もこの話を初めて聞いた時には驚いた。
「私のお母様は私と双子の姉、ミラを隠れて産んで育てる間ずっと水の王国にいたもの。婚姻も結ばず、他国の王との間に子供を作ったりしたら……隠すしかないものね」
10歳ほどにしか見えない少女が他人事のように語る姿はひどく歪んで見えた。諦めたような悟ったような、感情が込められていない語り口調。
「お父様とお母様とお姉さまが幸せに一緒にいられるように願っていたけど……叶わなかったのかな……」
初めて感情を見せた封印の賢者。涙こそ流していないけど悲しさが伝わってくる。健気な少女の本音……。私はこの少女、リラこそがこの世界で最も幸せになってほしいと思ったキャラクターだと思っていた。
封印の賢者の話を聞いてアウラ王子もアリスも口を閉ざしているだけ。
「まあ、もう過去の話ね。それであなたたちはレヴィアタン封印のために私に協力をしてほしいの?」
封印の賢者が話を変えたことでアウラ王子が返事をする。
「封印ではなく討伐を考えています」
アウラ王子は真剣な眼差しでリラを見る。リラは品定めをするかのようにアウラ王子を見ると冷めたような諦めたような目になって答えた。
「そう……。封印にしろ討伐にしろ、私にできる協力は2人の王が使っていた魔法を伝授することだけ」
「初代が使っていた魔法?」
「ええ。魂に刻む魔法だから1人につき1つまでだけどね。どんな魔法がお望みかしら?」
リラに言われてアウラ王子は考え込む。しかしあまり時間もかからずに答えを出した。
「レヴィアタンに強力な攻撃ができる魔法を。ダメージを与えられる魔法をお願いします」
「攻撃魔法ね。分かったわ」
リラはそう言うとアウラ王子の胸に手を当てた。すると帯状の光がリラからアウラ王子に流れ込む。
「使い方は、理解した?」
「はい。これは……確かに強力な魔法です」
「じゃあ次。あなたは?」
リラはそう言ってアリスに尋ねる。
「では……。300年前に花の王がレヴィアタンと戦う時に1番使った魔法を」
「……分かったわ」
リラは先ほどと同じようにアリスの胸に手を当てる。光の帯がアリスの中に入り込むと、アリスは小さくうめき声を上げた。
「花の王の血を引いているけど、魔法に慣れてないのね。でも問題なく使えるはずよ」
「ありがとう……ございます」
アリスは少し苦しそう。でもこれでゲーム同様レヴィアタンは討伐したようなものだ。あとは……
「あなたはどんな魔法が欲しいの?」
私が魔法をもらう番になった。
そして花の王については引き継ぐようにしてアリスが説明をした。各国を渡り歩き、6人の王を結びつけた伝説。二代目が王位を土の王に譲ってから世界に花を届ける貴族としてひっそりと過ごしていたこと。
2人とも話に伝え聞いていた物語を封印の賢者に話した。
「そう……。やっぱりお父様とお母様のことは歴史に残っていないのね」
封印の賢者は寂しそうに言う。
「今教えてくれた話は少し違うわ。多分語られている花の王はお母様の兄ね。そもそも花の国の国王は女王だし」
アリスとアウラ王子は突然明かされた真実に驚きを見せる。私もこの話を初めて聞いた時には驚いた。
「私のお母様は私と双子の姉、ミラを隠れて産んで育てる間ずっと水の王国にいたもの。婚姻も結ばず、他国の王との間に子供を作ったりしたら……隠すしかないものね」
10歳ほどにしか見えない少女が他人事のように語る姿はひどく歪んで見えた。諦めたような悟ったような、感情が込められていない語り口調。
「お父様とお母様とお姉さまが幸せに一緒にいられるように願っていたけど……叶わなかったのかな……」
初めて感情を見せた封印の賢者。涙こそ流していないけど悲しさが伝わってくる。健気な少女の本音……。私はこの少女、リラこそがこの世界で最も幸せになってほしいと思ったキャラクターだと思っていた。
封印の賢者の話を聞いてアウラ王子もアリスも口を閉ざしているだけ。
「まあ、もう過去の話ね。それであなたたちはレヴィアタン封印のために私に協力をしてほしいの?」
封印の賢者が話を変えたことでアウラ王子が返事をする。
「封印ではなく討伐を考えています」
アウラ王子は真剣な眼差しでリラを見る。リラは品定めをするかのようにアウラ王子を見ると冷めたような諦めたような目になって答えた。
「そう……。封印にしろ討伐にしろ、私にできる協力は2人の王が使っていた魔法を伝授することだけ」
「初代が使っていた魔法?」
「ええ。魂に刻む魔法だから1人につき1つまでだけどね。どんな魔法がお望みかしら?」
リラに言われてアウラ王子は考え込む。しかしあまり時間もかからずに答えを出した。
「レヴィアタンに強力な攻撃ができる魔法を。ダメージを与えられる魔法をお願いします」
「攻撃魔法ね。分かったわ」
リラはそう言うとアウラ王子の胸に手を当てた。すると帯状の光がリラからアウラ王子に流れ込む。
「使い方は、理解した?」
「はい。これは……確かに強力な魔法です」
「じゃあ次。あなたは?」
リラはそう言ってアリスに尋ねる。
「では……。300年前に花の王がレヴィアタンと戦う時に1番使った魔法を」
「……分かったわ」
リラは先ほどと同じようにアリスの胸に手を当てる。光の帯がアリスの中に入り込むと、アリスは小さくうめき声を上げた。
「花の王の血を引いているけど、魔法に慣れてないのね。でも問題なく使えるはずよ」
「ありがとう……ございます」
アリスは少し苦しそう。でもこれでゲーム同様レヴィアタンは討伐したようなものだ。あとは……
「あなたはどんな魔法が欲しいの?」
私が魔法をもらう番になった。
2
お気に入りに追加
2,514
あなたにおすすめの小説
完璧ヒロインに負けたので平凡令嬢は退場します
琴吹景
ファンタジー
【シュプレイム王国貴族学院伝統の卒業生祝賀会『プロムナード』の会場のど真ん中で、可憐な少女と側近の令息数人を従えた我が国の王太子、エドモンド・シャルル・ド・シュプレイム殿下が、婚約者であるペネロペ・ド・ロメイユ公爵令嬢と対峙していた。】
テンプレのような断罪、婚約破棄のイベントが始まろうとしている。
でも、ヒロインも悪役令嬢もいつもとはかなり様子が違うようで………
初投稿です。異世界令嬢物が好きすぎて書き始めてしまいました。
まだまだ勉強中です。
話を早く進める為に、必要の無い視覚描写(情景、容姿、衣装など)は省いています。世界観を堪能されたい方はご注意下さい。
間違いを見つけられた方は、そーっと教えていただけると有り難いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
地球にダンジョンができたと思ったら俺だけ異世界へ行けるようになった
平尾正和/ほーち
ファンタジー
地球にダンジョンができて10年。
そのせいで世界から孤立した日本だったが、ダンジョンから採れる資源や魔素の登場、魔法と科学を組み合わせた錬金術の発達により、かつての文明を取り戻した。
ダンジョンにはモンスターが存在し、通常兵器では倒せず、ダンジョン産の武器が必要となった。
そこでそういった武器や、新たに発見されたスキルオーブによって得られる〈スキル〉を駆使してモンスターと戦う冒険者が生まれた。
ダンジョン発生の混乱で家族のほとんどを失った主人公のアラタは、当時全財産をはたいて〈鑑定〉〈収納〉〈翻訳〉〈帰還〉〈健康〉というスキルを得て冒険者となった。
だが冒険者支援用の魔道具『ギア』の登場により、スキルは大きく価値を落としてしまう。
底辺冒険者として活動を続けるアラタは、雇い主であるAランク冒険者のジンに裏切られ、トワイライトホールと呼ばれる時空の切れ目に飛び込む羽目になった。
1度入れば2度と戻れないその穴の先には、異世界があった。
アラタは異世界の人たちから協力を得て、地球との行き来ができるようになる。
そしてアラタは、地球と異世界におけるさまざまなものの価値の違いを利用し、力と金を手に入れ、新たな人生を歩み始めるのだった。
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物
ゆうぎり
ファンタジー
私リディアーヌの不幸は双子の姉として生まれてしまった事だろう。
妹のマリアーヌは王太子の婚約者。
我が公爵家は妹を中心に回る。
何をするにも妹優先。
勿論淑女教育も勉強も魔術もだ。
そして、面倒事は全て私に回ってくる。
勉強も魔術も課題の提出は全て代わりに私が片付けた。
両親に訴えても、将来公爵家を継ぎ妹を支える立場だと聞き入れて貰えない。
気がつけば私は勉強に関してだけは、王太子妃教育も次期公爵家教育も修了していた。
そう勉強だけは……
魔術の実技に関しては無能扱い。
この魔術に頼っている国では私は何をしても無能扱いだった。
だから突然罪を着せられ国を追放された時には喜んで従った。
さあ、どこに行こうか。
※ゆるゆる設定です。
※2021.9.9 HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
転生したら死にそうな孤児だった
佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。
保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。
やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。
悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。
世界は、意外と優しいのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる