サイコミステリー

色部耀

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52.父の特殊能力

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 その推測を立てた理由はこうだ。まず美波さんと美波さんのお母さんの状況の酷似。重い病気を持っていたのに、一転して健康になった点。健康になったのと同時に記憶喪失になっている点。これはたまたま一致したにしては特殊な状況すぎる。作為的な何かがないとおかしいほどに。
 そしてお父さんの特殊能力が発現した時期。これは十二年前。美波さんのお母さんの病気が治り、記憶を失ったときと一致する。
 つまり、美波さんのお母さんと美波さんとの奇妙な共通点。そこに影響を与えた作為的な何かが美波さんのお父さんの特殊能力である可能性が高い。そう俺は踏んだのだ。

「ああ。それで間違いないよ。ちなみに俺の特殊能力はどんなものだと思ったんだい?」

「それは……。単純に記憶を代償にした病気の治療だと思いました」

 美波さんが探そうとしている記憶は戻らない。そう俺が予想していた理由はここにある。特殊能力による結果は絶対。俺が調べて知っている限りだとそうだ。だから病気の治療のために記憶を失わせなければならないのだとしたら、その記憶が戻ることは絶対にない。

「ハズレだ」

「え……」

 そう思っていた俺の意表をつくように美波さんのお父さんはキッパリとそう言った。

「記憶を代償にした治療……。そのようなものではない。もっとタチの悪い、非道で、自分勝手な、どうしようもなく愚かな特殊能力だよ」

 タチが悪く非道で自分勝手で愚かな特殊能力……? 記憶を失わせているとはいえ家族の病気を治しているのに? 俺には理解ができなかった。どう考えても家族を想う優しい能力としか思えない。何か……何か見落としているのだろうか。

「もし病気を治したのだとしたら」

 俺が混乱していると、美波さんのお父さんはゆっくりと続きを話し始めた。

「なぜ聖良は……。妻は先月突然死んでしまったのだろうとは思わなかったのかい?」
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