53 / 65
52.父の特殊能力
しおりを挟む
その推測を立てた理由はこうだ。まず美波さんと美波さんのお母さんの状況の酷似。重い病気を持っていたのに、一転して健康になった点。健康になったのと同時に記憶喪失になっている点。これはたまたま一致したにしては特殊な状況すぎる。作為的な何かがないとおかしいほどに。
そしてお父さんの特殊能力が発現した時期。これは十二年前。美波さんのお母さんの病気が治り、記憶を失ったときと一致する。
つまり、美波さんのお母さんと美波さんとの奇妙な共通点。そこに影響を与えた作為的な何かが美波さんのお父さんの特殊能力である可能性が高い。そう俺は踏んだのだ。
「ああ。それで間違いないよ。ちなみに俺の特殊能力はどんなものだと思ったんだい?」
「それは……。単純に記憶を代償にした病気の治療だと思いました」
美波さんが探そうとしている記憶は戻らない。そう俺が予想していた理由はここにある。特殊能力による結果は絶対。俺が調べて知っている限りだとそうだ。だから病気の治療のために記憶を失わせなければならないのだとしたら、その記憶が戻ることは絶対にない。
「ハズレだ」
「え……」
そう思っていた俺の意表をつくように美波さんのお父さんはキッパリとそう言った。
「記憶を代償にした治療……。そのようなものではない。もっとタチの悪い、非道で、自分勝手な、どうしようもなく愚かな特殊能力だよ」
タチが悪く非道で自分勝手で愚かな特殊能力……? 記憶を失わせているとはいえ家族の病気を治しているのに? 俺には理解ができなかった。どう考えても家族を想う優しい能力としか思えない。何か……何か見落としているのだろうか。
「もし病気を治したのだとしたら」
俺が混乱していると、美波さんのお父さんはゆっくりと続きを話し始めた。
「なぜ聖良は……。妻は先月突然死んでしまったのだろうとは思わなかったのかい?」
そしてお父さんの特殊能力が発現した時期。これは十二年前。美波さんのお母さんの病気が治り、記憶を失ったときと一致する。
つまり、美波さんのお母さんと美波さんとの奇妙な共通点。そこに影響を与えた作為的な何かが美波さんのお父さんの特殊能力である可能性が高い。そう俺は踏んだのだ。
「ああ。それで間違いないよ。ちなみに俺の特殊能力はどんなものだと思ったんだい?」
「それは……。単純に記憶を代償にした病気の治療だと思いました」
美波さんが探そうとしている記憶は戻らない。そう俺が予想していた理由はここにある。特殊能力による結果は絶対。俺が調べて知っている限りだとそうだ。だから病気の治療のために記憶を失わせなければならないのだとしたら、その記憶が戻ることは絶対にない。
「ハズレだ」
「え……」
そう思っていた俺の意表をつくように美波さんのお父さんはキッパリとそう言った。
「記憶を代償にした治療……。そのようなものではない。もっとタチの悪い、非道で、自分勝手な、どうしようもなく愚かな特殊能力だよ」
タチが悪く非道で自分勝手で愚かな特殊能力……? 記憶を失わせているとはいえ家族の病気を治しているのに? 俺には理解ができなかった。どう考えても家族を想う優しい能力としか思えない。何か……何か見落としているのだろうか。
「もし病気を治したのだとしたら」
俺が混乱していると、美波さんのお父さんはゆっくりと続きを話し始めた。
「なぜ聖良は……。妻は先月突然死んでしまったのだろうとは思わなかったのかい?」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
令和の中学生がファミコンやってみた
矢木羽研
青春
令和5年度の新中学生男子が、ファミコン好きの同級生女子と中古屋で遭遇。レトロゲーム×(ボーイミーツガール + 友情 + 家族愛) 。懐かしくも新鮮なゲーム体験をあなたに。ファミコン世代もそうでない世代も楽しめる、みずみずしく優しい青春物語です!
第一部・完! 今後の展開にご期待ください。カクヨムにも同時掲載。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
落ちこぼれ盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる ~エルフ♀と同居しました。安定収入も得たのでスローライフを満喫します~
テツみン
ファンタジー
アスタリア大陸では地球から一万人以上の若者が召喚され、召喚人(しょうかんびと)と呼ばれている。
彼らは冒険者や生産者となり、魔族や魔物と戦っていたのだ。
日本からの召喚人で、生産系志望だった虹川ヒロトは女神に勧められるがまま盾職人のスキルを授かった。
しかし、盾を売っても原価割れで、生活はどんどん苦しくなる。
そのうえ、同じ召喚人からも「出遅れ組」、「底辺職人」、「貧乏人」とバカにされる日々。
そんなとき、行き倒れになっていたエルフの女の子、アリシアを助け、自分の工房に泊めてあげる。
彼女は魔法研究所をクビにされ、住み場所もおカネもなかったのだ。
そして、彼女との会話からヒロトはあるアイデアを思いつくと――
これは、落ちこぼれ召喚人のふたりが協力し合い、異世界の成功者となっていく――そんな物語である。
逆召喚したらエルフ本当に呼び出せちゃったよwwwww
ryuu
ファンタジー
オカルトマニアでアニオタの変態、駄城雄馬は童貞を捨てたい一心で、無謀にもネットの黒魔術を頼って自宅で召喚術を決行する。すると、おかしなことに魔法陣が輝きだしてエルフが異世界から召喚されたのだ。
「あなた誰ですか?」
「エルフっ娘キタァああああああ!」
エルフの召喚に歓喜して吠える彼をエルフの少女、イリューナ・ミシェリィナは困惑する。
雄馬はイリューナへ童貞を捨てるために協力してくれと全裸になって迫るとイリューナが発動した暴風にあおられて雄馬はボロボロにされてしまう。
「早くここから帰してください!」
だが、元の世界に戻す方法などわからず、イリューナは自らの帰還する方法を探す。だが、彼女をめぐってあらゆる騒動が勃発し、雄馬も巻き込まれ始める。
だが、それも一時的なこと――
しばらくして彼女は家で厄介になり、自ずと人間世界のエンターテイメントに染まってしまっていく。
難癖のあるエルフの美女と変態の青年がおくる破天荒物語がここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる