サイコミステリー

色部耀

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32.自己紹介

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 学校に戻ったのは門限ギリギリ五分前だった。寮の食堂に入ると、中はパーティのような盛り上がりを見せていた。否、まさしくパーティが執り行われていた。
 食堂の入り口には新入生歓迎パーティと書かれた看板が立てられ、食堂内のカウンターには唐揚げやおにぎりなど、すぐに取って食べられるものが並んでいた。

「真壁殿! 探しましたぞ! いったいどこに行っていたのですな?」

 食堂に入って始めに声を掛けてきたのは諸悪の根源でもある宮城輝樹だった。体の周りにはいくつか小さな光の玉が浮かんでいる。これが自己紹介のときに言っていた特殊能力か。実際に目にすると、改めて凄い学校に入ったのだと実感させられる。

「ちょっと外に用事があって出てたんだよ。歓迎パーティって書かれてたけど、凄い盛り上がりだな。これって全校生徒集まってるのか?」

 食堂は体育館の半分に匹敵するほどの広さがある。全校生徒三百人が同時に座って食事をする想定がされているのなら当然ではあるが、こうして至る所から話し声が聞こえると迫力がある。圧迫感を覚える。

「そうですな! これから四六時中同じ校内で過ごす仲間同士、交友を深めるために全員集合しているんですな」

 見渡す限り、ほとんど記憶にない人ばかり。覚えているクラスメイトも散り散りになって違う学年の人たちの輪に入っていたりする。

「宮城君は一人でいたの?」

「宮城君なんてよそよそしく呼んでくれるなですぞ。拙者のことはテルとお呼びください真壁殿」

「テルは一人でいたの?」

「うむ!!」

 なんだろう……。一人でいる理由がなんとなく分かった気がする。

「おや。後ろにいらっしゃるのは……?」

「あ、えっと、その……」

 俺の陰に隠れていた美波さんはテルに見つかると、怯えた様子で顔だけ出した。

「美波聖奈殿ですな! 二人でパーティから抜け出しているなんてまたしても主人公感高くて憧レベルマックスですな! それはそうと……」

 テルはそう言って俺にマイクを渡してきた。何故マイクなのか警戒心を抱いたところでテルはにこやかに言った。
「自己紹介がまだなのはお二人だけ。いっちょかましてくれるのを期待してるですぞ」

 また自己紹介か……。今日は何回自己紹介をする羽目になるんだろうな……。そう思いつつも覚悟を決めてテルに案内されるがまま中央スペースに向かう。俺は覚悟を決めていたが、もう一人はそうでもなかった。明らかなパニック表情で拒絶を示して首を何度も横に振っている。
 美波さんは本当に俺以外に対して人見知りを発動する子だな。残念だが諦めてもらおう。

「俺が先にするけど、その後は美波さんもちゃんと自己紹介するんだぞ」

 俺が美波さんにそう告げると、目を見開いて絶望の表情となった。美波さんには悪いけど、その様子は見ていてとても面白かった。
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