サイコミステリー

色部耀

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24.通学路

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 俺の答えは探し物なんてないもないのに無為に付き合わせていたというもの。実際にそうだったとしても俺は美波さんを嫌いになることはないが、普通なら……いや、こう言うと俺が普通じゃないみたいだな。多くの人は嫌な気分にもなるだろう。そう思うとかなりの自信がある。

「半分正解で半分不正解と言ったところでしょうか」

「え、半分?」

 半分と言われると訳が分からなくなる。

「はい。半分くらいです。初めて私と知り合ってくれた真壁君には嘘をつきたくないので、少しだけ本当のことを言わせてもらいますね。……ものとして存在しないというのは合ってます。正解です。でも私はちゃんと探しているものがあります。確かに失くしたものがあります」

 ものとして存在しない……? それなのに確かに失くしている……? なんだろう。なぞなぞだろうか。

「通学路を見て私の家まで着いたらそこでお話させてもらったので良いですか? 少しでも私のことを嫌わないでいて欲しいので……」

 不安げに視線をそらした美波さんに俺はこれ以上強い言葉を使うことができない。普通ならそのような人を傷付けることはできない。

「分かった。それまで待つよ」

 いつまで待てば良いのか期限を決めてくれたのであればなんの不平も不満もない。美波さんが言いづらいことを言ってくれるのだ。俺にできることはどんな話を聞いても美波さんを傷付けることなく受け止める覚悟を持っておくことだけ。そこまで重たい話は想定できそうにもないけれど。

「では、私の実家までご案内します」

 少し寂しげで、それでいて覚悟を決めたような笑顔だった。見た瞬間にそれと分かる作り笑顔。安心して心からの笑顔を見せて欲しいとは思うが、不安にさせた張本人は紛れもなく俺自身。その不安を取り除くには実際に探し物が何かを聞いて受け止める他無いのだろう。
 小学校から美波さんの実家への道は住宅街のど真ん中を突っ切るようなルートだった。夕暮れ時のアスファルト道路は買い物帰りのお年寄りが井戸端会議をしていたり、学校帰りの高校生が自転車で走ったり。千葉の実家を思い出す街の風景。こればかりはどこでも同じなのかもしれない。

「家に着いたら中で話しましょうか。父親は病院ですし、母親も亡くなっていて今は誰もいませんから」

 美波さんのお母さんが亡くなっているのは中学校の先生に聞いて覚えている。確か先月突然亡くなられたのだとか。亡くなった理由や美波さんがどう感じているのかも気になるところではあるが、流石に聞くに聞けない。

「……母親のこと。気になるのでしたら私が知っている限りでお教えしましょうか」
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