サイコミステリー

色部耀

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17.秘密

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 病院近くの駅からさらに五駅。特殊能力支援校から離れていく形で移動した場所が美波さんのお父さんから貰ったメールに書かれていた中学校の最寄り駅だった。東京とはいえほぼ神奈川県であるその場所は俺が生まれ育った千葉県市川市よりも田舎で、住宅が多い中にも田んぼや畑が少なくないほど目に入る。駅から出ると人通りも少なくて息苦しさも、漂う焦燥感もない。とても落ち着く街並みだった。駅から出てすぐに見える小さな川には桜並木が風で花びらを散らしている。こんな日に花見でもすればどれほど心地いいだろうか。
 そして駅から五分ほど歩いたところが目的の中学校だった。校庭からは野球部やサッカー部の声が木霊し、校舎からは吹奏楽部のロングトーンが響く。その様子が俺のいた中学校と同じで、つい一か月前の事なのに懐かしく感じる。

「美波さんの探しものって最近失くしたものって訳じゃないんだね」

 今朝いたという病院だけならまだしも、お父さんに聞かないと来られないような中学校、何ならこの後に小学校に行くことまで考えるといつ失くしたかもどこで失くしたかも分からないものだと言える。そんなものを俺が傍にいて役立つというのだろうか。

「うーん……。失くしたのは最近なんですけどね」

「最近失くしたのに最近いた場所じゃないところで見つかるかもしれないってこと?」

 ますますもって意味が分からない。美波さんの話からも探しものが何かを推理しないといけないとなると難易度が高すぎる。これは探す手伝いをするふりをしてぼーっとついて歩くだけになるかもしれない。

「そうですね。本当にどこで見つけることができるかも分からないんです。そんな探しものに付き合っていただいて申し訳ありません。その分ちゃんと報酬はお支払いいたしますので」

 報酬については正直な所記憶の片隅にすらないくらいだった。それでもここまで謎が多いと気にならないという方が難しく、答えが分かるまで付き合いたいとすら思えてくる。それも美波さんの作戦だったなんて言われてしまえばお手上げだが……

「とりあえず入ってみましょうか」

「大丈夫? 部外者が入って怒られたりしない?」

 俺がそう言うと美波さんは今気が付いたとばかりに目を見開いた。まるで驚いたハムスターみたいだ。

「どうしましょう。何か良い言い訳を考えておかないといけませんかね……」

「どこを探しに行くかにもよるだろうけど……。ちなみに美波さんはどこを探す予定だったの?」

 俺の問いに美波さんは固まった。何も考えていなかったのだろう。本当にどうするつもりだったのか何を探すつもりなのか分からなさすぎる。何を探すか分からないのにどこを探すかを俺が考えないといけないというのだろうか。それは無理難題にも程がある。しかし――

「はあ……。卒業生が母校に顔を見せに来て不自然じゃない場所って言ったらまずは部活じゃないの? 探しものが何か分からないのは痛いけど、部活関係の場所とか去年まで使ってた教室とかその辺りが有力だと思うけど」

「流石真壁君ですね! 真壁君に依頼をして正解でした!」

「じゃあ部活から見に行こうか。ちなみに美波さんは何部だったの?」

「……」

 おいまさか……

「帰宅部だったとか?」

「……秘密です」
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