上 下
3 / 9

第3話 両家の顔合わせ

しおりを挟む
 
 この奇跡のような縁談に舞い上がる前に、なぜ自分が選ばれたのか分かっていたから逆に冷静になれた。
 
 高得点の彼に、平均並みの私が選ばれたのは我が家が『侯爵家』だから。
 高位爵位ならば、将来伯爵家当主となるノックス様にとっては後ろ盾に十分よね。

 逆にそれくらいのオプションがなければ、私なんか相手にされないもの。
 そうですよ、そうですよ、わかっておりますよっ …………グスン
 
 あとは、お互いの母親が親友同士というのも決め手のひとつだった。
 この二つがあったからこそ、この婚約は成立した。

 
 蜂蜜色のほわっほわっのくせ髪に(雨の日は泣きたい…)、うっっす~~いっラベンダー色の瞳。
 お勉強は頑張っているけれど、ノックス様には遠く及ばず。
 身長はコンパクト。胸の周りは控え目。(は――…)

 侯爵家の娘でなければ、話にも上がらなかっただろう…
 せっかく繋がったご縁なのに、私の心は沈んでいくばかりだった…

 両家の顔合わせではノックス様の挨拶から始まり、両家の紹介へと進む。
 母親同士が学生時代からの親友だけれど、改めて各自紹介がなされた。
 私は初めてノックス様と対面したので、ガチガチ状態。

「ノックス・ウィーターです。よろしくお願いいたします」
「マリトニー・ラクシモサです。よ、よろしくお願いいたしましゅ…します!」

 噛んだ!噛んでしまった!!
 心の中では頭を抱えてて、恥ずかしさでのたうち回っている私。

 そっとノックス様のお顔を見ると…きれいな笑顔を見せてくれた。

 ひゃ―――――っっ♡♡♡

 どんどこどんどこと胸の鼓動が早くなる。
 …心臓が飛び出すのではないの?と思わず心配になってくるわ。

 ノックス様は私を見て、今何を思っていらっしゃるのかしら?
 好みではないけれど貴族同士の繋がりだから…と、割り切っているのかな。

「……」
 自分の考えに落ち込む。

 チラリと自分の両親とウィーター伯爵夫妻に目を向けた。

 私の両親も政略結婚だ。
 けれどとても仲がいい。

 ノックス様のご両親は幼馴染ってお母様が言っていたわ。
 伯爵様はいつも夫人を気遣う様子が伺える。

 私もノックス様とあんな風になれるかしら?
 …なりたいな…

 ノックス様って夫人似なのね。
 白銀の髪、アイスブルーの瞳。

 伯爵様は…

 椿油でびっしりと撫でつけた黒髪
 自己主張の激しいキリリッとした眉
 遥か遠くの獲物も仕留めそうな鋭い三白眼
 そしてニヒルな唇

 …………夫人似で本っっっっ当―――――に! よかった~~~。

「ちょっと二人でお話してきたら?」
 突然母が提案する。

「では、少し庭園を回りましょう」
 母の言葉を受け、ノックス様が微笑みながら手を差し出して下さった。

「は、はい」
 私はそっとノックス様の手に触れ、席を立つ。
 じわりと手が汗ばんでくる~~っっ!
 
 こ、これから二人きりっっ??
 な、何を話せばいいの!?!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。

夢風 月
恋愛
 カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。  顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。  我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。  そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。 「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」  そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。 「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」 「……好きだからだ」 「……はい?」  いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。 ※タグをよくご確認ください※

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

あなたへの想いを終わりにします

四折 柊
恋愛
 シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)

嫌われ者の側妃はのんびり暮らしたい

風見ゆうみ
恋愛
「オレのタイプじゃないんだよ。地味過ぎて顔も見たくない。だから、お前は側妃だ」 顔だけは良い皇帝陛下は、自らが正妃にしたいと希望した私を側妃にして別宮に送り、正妃は私の妹にすると言う。 裏表のあるの妹のお世話はもううんざり! 側妃は私以外にもいるし、面倒なことは任せて、私はのんびり自由に暮らすわ! そう思っていたのに、別宮には皇帝陛下の腹違いの弟や、他の側妃とのトラブルはあるし、それだけでなく皇帝陛下は私を妹の毒見役に指定してきて―― それって側妃がやることじゃないでしょう!? ※のんびり暮らしたかった側妃がなんだかんだあって、のんびりできなかったけれど幸せにはなるお話です。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

処理中です...